次期学習指導要領改訂;道徳科で心のサポート授業を(1)道徳教材「銀のしょく台」を更生に必要な体験を「考え議論し体験する道徳」への転換を
道徳科は「心の学び」の要の授業です。これまで道徳学者が中心となって教材から主発問を構成し授業を展開してきました。それに加えて、この犯罪と更生に関わるテーマでは、加害者更生面談や更生支援にかかわってきた臨床心理士・公認心理師・社会福祉士・保護司、そして更生した当事者団体が声をあげ、犯罪の防止と更生に何が必要かを発達に応じた教材と授業案を発信してみませんか?授業時間などの柔軟な教育課程だけでなく、「心の学び」の要の授業案もさまざまな経験と知恵を集めて、日本いる全ての子どもたちが生きるってすばらしいと思える道徳授業の内容を柔軟にそして子どもたちや保護者や地域の人や教員が主体的に運用できる仕組み、考えていきませんか?
Q1.添付の道徳教材、最も人気教材の一つのようです。窃盗で刑に服し出所して司教から寝床と食事を提供してもらったにもかかわらず、銀の食器を盗んで再逮捕。「許す?許さない?」が主発問になっています。しかし、更生に最も大切な、「罪を犯した者の強み(好きなこと得意なこと)」を確認し、「どんな意図で窃盗し、そのことをどう思っているのか、今度同じような意図や気もちになったときどうするのか」という作業が抜け落ちていると思います。この教材を読み物に時間をかけずに、シンプルに、児童生徒に、発問し、授業を展開していく授業案を作成していただけませんか?
ChatGPT:
ありがとうございます。ご指摘の通り、『銀のしょく台』の道徳教材は「許す・許さない」という対立構造に重点を置いて展開されていますが、更生支援において重要な「加害者の内省」「強みの再発見」「再犯防止のための感情や意図の認知」といった要素が扱われていません。
そこで、読み物に時間をかけず、児童に問いを投げかけながら展開するシンプルな授業案を以下にご提案いたします。
シンプル版『銀のしょく台』授業案(小学校高学年向け)
【主題名】
自分と向き合う力 ~失敗した人に本当に必要なことは?~
【ねらい】
過ちを犯した人が立ち直るために何が必要かを、心の強みや内面への問いを通して考える。
【授業の流れ】
1.導入(5分)
教師が簡単にあらすじを語る(1分)
「ジャンという人がパンを一つ盗もうとしただけで長い間刑務所に入れられたんだ。出所後、ある司教に親切にしてもらったのに、ジャンは銀の食器を盗んで逃げた。でも、司教は警察に『あれはプレゼントした』と伝え、さらに銀のしょく台まで渡したんだ。」
主発問1
「みんななら、ジャンが立ち直るために一番大切なことって何だと思う?」
(例:信じてくれる人、働く場所、自分の気持ちを話せる時間、特技、家族の存在…)
2.展開①「ジャン自身の気持ちに迫る」(10分)
主発問2
「ジャンは、どうして食器を盗んでしまったんだろう?」
→ 子どもたちから出てくる意見をホワイトボードに可視化
(例:生きるため、お金がなかった、もう人を信じられなかった…)
主発問3
「ジャンは、そのことを今どう思っていると思う?」
3.展開②「再犯しないために、何が必要?」(10分)
主発問4
「ジャンがまた『盗みたい』気持ちになったとき、自分でどうすればよかったと思う?」
主発問5
「ジャンがもともと得意だったことや好きだったことって、なんだったと思う?」
→ 子どもたちの意見を引き出しながら、「更生のきっかけになる“強み”の発見」を意識
4.まとめ(5分)
主発問6(最終発問)
「もしジャンが君の友達だったら、君はどんなふうに声をかけたい?」
ワークシート記入(「ジャンの気持ち」「必要な支え」「自分なら何ができるか」)
【教師の視点】
「罪を犯した人を責める」視点から、「その人がもう一度やり直すには何が必要か」へ意識をシフト。
SEL(社会情動的学習)の観点を取り入れ、「感情の理解」「共感」「選択肢の認識」「再発防止の意識」を含めた構成。
Chat-GPTに読みこんでもらった教材は香川大学附属の下記のものです。
https://www.ed.kagawa-u.ac.jp/.../101sidouan/5doutoku.pdf
更生のお仕事なさっておられる方をはじめ、ぜひ、みなさまのご意見をお聴きしたいですね。
Q2.同じ教材でも学年や議論の中心発問によって、子どもの学びは異なると思います。日本の「銀のしょく台」は、ジャンバルジャンがなぜ窃盗をしてしまったのか、なぜ更生できたのか、自分が貧困にあえいだ時どうするか、クラスに同じような境遇の子どもがいることを想定して、授業が展開されていますか?
ChatGPT:
ご指摘の通り、同じ教材でも学年や主発問によって子どもの学びは大きく変わります。しかし、現時点の日本の道徳教科書(特に『銀のしょく台』を扱う小学5年生用)では、以下のような限界や偏りが見られます。
✅ 現行教材の特徴(「銀のしょく台」小5)
主な焦点:
「ミリエル司教はなぜ許したのか」「ジャンを許せるか許せないか」という“許す側”の視点に軸足が置かれています。
発問の中心:
「あなたはジャンを許せますか?」「司教はどんな思いで銀のしょく台を渡したのか?」
→ 対立意見の交流による“寛容”の理解が中心。
ジャンの内面理解・生育歴の掘り下げ:
ほとんど扱われていません。「なぜ盗んだのか」「どのように生きようとしたのか」という視点は教材文中にも薄く、子どもが能動的に推測する余地はあるものの、授業構造としては用意されていないのが現状です。
❌ 現行授業の限界
貧困・差別・スティグマへの視点が欠如:
ジャンがなぜ社会から排除され、再犯のリスクにさらされたのかという構造的課題は扱われません。
子ども自身の自己認識や困難との重ね合わせが難しい:
「自分も司教のように広い心を持とう」といった上から目線の「教訓」になりやすく、貧困や苦悩の当事者性を想定した授業にはなりづらい設計です。
クラスに貧困・困難を抱える子がいる前提が想定されていない:
「ジャンのような境遇の子が身近にいるかもしれない」「自分が同じ立場になったらどう感じるか」といった共感的・想像的理解を促す発問が設定されていません。
✅ 望まれるアプローチ(例)
以下のような問いを加えることで、子どもの視野と学びの深さは大きく変わります:
「ジャンはなぜ盗んでしまったのだろう?」
「おなかがすいても盗まないで生きるには、どんな方法があると思う?」
「ジャンのような思いをしている人が、今の社会にいるとしたら、私たちは何ができる?」
「“やさしくしてもらったのに裏切った”って、どんな気もちなんだろう?」
「ジャンの“いいところ”“得意なこと”って何だったんだろう?」
🧭 教育的示唆
道徳教育とSEL(社会的情動的学習)やシティズンシップ教育を融合させる必要があります。
子どもが「正しい・間違っている」を裁くのではなく、「なぜそうなったのか」「立ち直るには何が必要か」を対話的に考える場づくりが求められます。
当事者意識と想像力を養う発問設計こそが、今後の道徳科に求められる課題です。
Q3.「銀のしょく台」の教材を加害者更生視点で授業案を再構成いただきありがとうございました。更生に必要な体験のロールプレイは入れられないでしょうか?先生がジャンバルジャン役・生徒が司教役でジャンバルジャン「子どもに食べさせる金もない、パン一つとって何が悪い」司教のせりふを・・・。
ChatGPT:
ご提案、とても本質的で有意義です。
加害者更生の視点を取り入れるには、「過ちを犯した人の内面を理解する」体験が不可欠です。そのためには、まさにおっしゃる通り、ロールプレイで心のやり取りを“体感”することが非常に効果的です。
以下に、「銀のしょく台」を活用しつつ、教師がジャン・ヴァルジャン、生徒が司教になるロールプレイを取り入れた授業案をご提案いたします。
🧭 再構成授業案:『更生のために必要な出会いとは?』
■ 学年想定:小学5年生以上(中学年でも調整可)
◆ 授業の流れ(45分想定)
【導入】5分
教師があらすじを1分程度で語る。
主発問1:「ジャンは、なぜ銀の食器を盗んでしまったんだろう?」
【ロールプレイ準備】5分
教師がジャン・ヴァルジャン役を演じると説明。
児童の中から「司教役」を2人程度指名(1人が話しやすいようにフォロー役を置いてもよい)。
全体には「司教だったらどんな言葉をかけたい?」をメモさせておく。
【ロールプレイ実演】10分
ジャンのせりふ(教師)例:
「自分の子どもに食べさせる金もない。盗まないと生きていけなかったんだ。
パン一つとって、何がそんなに悪いって言うんだ?
社会は俺を19年も閉じ込めて、出てきても誰も泊めてくれない。
司教さん、あんたも俺を裁くのか?」
児童(司教役)の応答を待つ
→ 出てこない場合は、ヒントや言葉カードを渡してもよい
(例:「君のつらさは分かる」「悪かったと思えるなら、やり直す道もある」など)
【ロールプレイふり返り・対話】10分
「ジャンの気持ちはどうだったと思う?」
「司教の言葉を受けて、ジャンは何を考えたと思う?」
主発問2:「失敗した人が、立ち直るために必要なことってなんだろう?」
【自分とのつながり】10分
自己投影ワーク:
ワークシートに「自分が失敗したとき、どんな言葉が嬉しかったか」
「友達が失敗したとき、自分はどんな言葉をかけられるか」
【まとめ】5分
主発問3:「あなたが司教だったら、ジャンにどんなことをしてあげたい?」
児童が発表/記述(掲示するのも可)
◆ 授業の価値
自己認知と他者理解の両面を体験できるSEL的アプローチ。
感情・意図・背景の共有を通じて、単なる「許すかどうか」以上の道徳的思考が可能になる。
**「支援されることで人は変われる」**という、支援・共感・回復的正義(restorative justice)の本質にふれる導入に。
必要であれば、せりふカード、ワークシート、または教師用の進行台本もご提供できます。どのようなサポートがご希望ですか?
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