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2022年4月16日 (土)

生徒指導提要改訂試案を読んで(1)現在の生徒指導提要(平成22年3月)とのちがい

文部科学省・生徒指導提要改訂版が今夏に発刊されるようで、2022年3月29日時点の生徒指導提要改訂試案(238P)が文部科学省のHpに掲載されています。

第1章では、

1.2生徒指導の類型 が設けられ、

1.2.1発達支持的生徒指導ーガイダンス・プログラムまたはガイダンス・カリキュラム

1.2.2課題予防的生徒指導ー

 (1)課題未然防止教育ーSOS出し方教育を含む自殺予防教育、薬物乱用防止教育、情報モラル教育、非行防止教室等

 (2)早期発見・早期対応ー成績の急落、遅刻・早退・欠席が増える、身だしなみの変化のみられる児童生徒への早期の教育相談・家庭訪問

1.2.3課題解決的生徒指導ーいじめ、不登校、少年非行、児童虐待など特別な指導・援助を必要とする特定の児童生徒を対象

 の3つが掲載されています。

改訂版案では、この「予防的生徒指導」を強く打ち出しているのが特徴でしょうか。それで、生徒指導提要H22年版をみてみると、この生徒指導の3つの類型の元になっている概念が記載されていました。図表1-4-1集団指導と個別指導の指導原理 に集団指導と個別指導の円の重なり部分に

「成長を促す指導」「予防的な指導」「課題解決的な指導」の3つが記載されていました。改訂版試案1.2.2(2)早期発見・早期対応 は、「予防的な個別指導」(H22年版)で記載されており、(1)課題未然防止教育を打ち出している点が、特徴でしょう。

ただし、「課題未然防止教育」での、SOS出し方教育にしても、どの授業の時間でやるのか、授業の枠が明記されてないんですよね。

「2.3生徒指導を意識した道徳教育」「2.4生徒指導を意識した総合的な学習(探究)の時間」という項はあるのですが、<生徒指導を意識した健康教育>という見出しはなく、「第13章多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導」の「13.3健康問題に関する課題と対応」の下に「13.3.5健康教育に係る生徒指導のための校内体制づくり」の下に「13.3.5(4)保健教育活動や健康教育の啓発・普及」に「思春期の健康増進には、アンガーマネジメント、ソーシャルスキル教育なども含まれます。・・・・」と記載されており、現行の学習指導要領で保健体育の保健分野の授業が小3からになっているため、小1から<暴力を使わない怒りの表現>を学ぶことになってないためと思われます。やはり、学習指導要領の次の改訂で、小1から高3まで、全学年で「心の健康」授業ができる国にしなければ、「課題未然防止教育」も絵にかいた餅になる可能性が高いと危惧しています。

もう少し読み込んで、「生徒指導提要改訂試案」について続編を書こうと思います。

 

2022年4月17日追加記載

1)生徒指導の定義について
まず、生徒指導の定義がH22年版と比べてみます。

R4改訂試案では、「

生徒指導とは、学校教育の目的1である、「社会の中で自分らしく生きることができる存在へと児童生徒が、自発的・主体的に成長や発達する過程を支える意図でなされる教職員の働きかけ」の総称です。なお、生徒指導の課題解決のために、必要な場合は指導や援助を行います。」(14p)注1;1 学校教育の目的は、「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」(教育基本法・第1条)であり、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養う」(同法・第2条二)ことが目標のひとつとして掲げられている。学校は、生徒指導の働きを理解し、各教科の指導をはじめ全教育活動において、児童生徒の特性、能力、適性、進路等に応じて適切な教育が行えるよう、調和のとれた教育課程を編成する必要がある。

 

と定義されています。
一方、H22年版では「生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。すなわち、生徒指導は、すべての児童生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになることを目指しています。生徒指導は学校の教育目標を達成する上で重要な機能を果たすものであり、学習指導と並んで学校教育において重要な意義を持つものと言えます。」(1p)
と定義されています。

 

H22年版では、生徒指導と学習指導の両輪が想定されている定義ですが、R4改訂試案では、社会の中で自分らしく自発的・主体的に成長発達する過程を支える教職員の働きかけと定義されているため、学習指導においても生徒指導が基底にあるという想定になっています。

日本生徒指導学会の生徒指導の定義は、「生徒指導とは,子ども一人ひとりのよさや違いを大切にしながら,子どもたちの発達に伴う学習面,心理・社会面,進路面,健康面などの悩みの解決と夢や希望の実現を目指す総合的な個別発達援助だといえます。」となっています(日本生徒指導学会Hpより)日本生徒指導学会の英語はThe Japanese Association for The Study of Guidance and Counselingのようです。

 

であれば、「生徒指導・支援提要」との冠にするのが適切だと思います。

 

2)R4改訂試案とH22版の章だてのちがい
 H22版にあって、R4改訂試案版でない章は 「3章 児童生徒の心理と児童生徒理解」です。
H22版のこの章では
第3章 児童生徒の心理と児童生徒理解
第1節児童生徒理解の基本・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
1 生徒指導における児童生徒理解の重要性
2 児童生徒理解の対象
3 児童生徒理解に必要な資料の収集と解釈
第2節児童期の心理と発達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
1 児童期の発達の特徴
2 発達障害の理解
第3節青年期の心理と発達・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57
1 青年期の発達の特徴
2 発達障害と思春期
第4節児童生徒理解の資料とその収集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71
1 資料収集の目的
2 把握理解すべき内容
3 資料収集の方法
4 保護者からの資料収集
5 資料収集に当たっての留意点

 

との構成になっており発達心理学が軸となって児童生徒の心理と発達が記載されているのと、そこに発達障害がもう一つの軸として記載されていました。
一方、R4改訂試案では、発達障害は 第13章多様な背景をもつ児童生徒への生徒指導 の一つの節として記載されています。また、H22年版では、児童生徒理解の資料とその収集の節に、質問紙法の妥当性・信頼性に関する記載がありましたが、R4改訂試案では、妥当性・信頼性という用語の記載はなくなっています。私は、教師が児童生徒の悩みや不調を発見するための質問紙法ではなく、児童生徒が自分自身の悩みや不調に気づき適切なセルフケアを考えることができる質問紙法を開発してきましたが、その観点の記載はR4改訂試案でもありません。

 

3)予防的生徒指導の具体の実現可能性について
R4改訂試案では、生徒指導の3つの類型を前面に打ち出しています。第Ⅱ部 個別の課題に対する生徒指導 の 第4章いじめ では
「すべての児童生徒を対象に、①発達支持的生徒指導として、人権教育や市民性教育を行い、「いじめをしない態度や能力」を身につけるように働きかけたり、②課題予防的生徒指導として、道徳や学級活動、HR活動等においていじめ防止対策推進法や学校いじめ防止基本方針の理解を深めるなどのいじめ防止の取組を行ったりします。さらに、いじめの兆候を見逃さないように、②課題予防的生徒指導として、日々の健康観察、アンケート調査や面談週間を実施するなどしていじめの早期発見に努めます。それでも、いじめが起きてしまったときには、③課題解決的生徒指導として、いじめ事象への適切かつ迅速な対処を行います。被害児童生徒の安全確保と心のケア、加害児童生徒への成長支援も視野に入れた指導、両者の関係修復、学級の立て直しなどが目指されます。」(100P)

 

課題予防的生徒指導を行う活動や時間として、「道徳や学級活動、HR活動等」と記載されていますが、「道徳」と「心の健康」の両輪の充実が不可欠だと私は考えています。というのは、道徳の授業時間では、ストレスを扱えません。怒りを抱えたとき暴力を使わない表現の仕方を道徳では教えません。それは、学習指導要領の道徳の定義が、「道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」となっており、保健教育の定義のように「心身の健康の保持増進を図っていく資質・能力を身につける」となってないからです。
いじめ・暴力・児童虐待・非行などは、怒りや悲しみの感情の不適切な行動化ですから、それらを学ぶことができるのは心の健康教育であり、理論としては、ストレスマネジメント、トラウマインフォームドケアを軸におくと、体系化できます。
小中314時間の授業時間がある「道徳授業」と小5・中1の2学年で7時間しかない「心の健康」のアンバランスが、この生徒指導提要改訂においてもネックになっているのです。
また、道徳の教科書には、いじめの教材は増えましたが、「卒業文集の最後の2行」は加害者の方が被害者より深い心の傷を残すといった印象をあたえたり、小1の「かぼちゃのつる」では、かぼちゃがつるを伸ばして、みつばちさんが注意をしたり、犬さんがつるを踏みつけるといった暴力でとめようとしたり、最後はトラックに轢かれてかぼちゃがなくという物語を読み学んでいます。また、小6には「青の洞門」があり、人を殺めても善行積めば許されるといった物語が、犯罪被害者の苦しみと悲しみの理解とほど遠い教材だということも道徳学者は気づいてないのではと思われます。道徳の時間には、司法の知識を学ぶことも取り入れていく必要があるでしょう。
つぎの学習指導要領改訂では、道徳の授業時間数と心の健康の授業時間数のアンバランスを改善すること必須でしょう。

 

学習指導要領の道徳と保健の定義
道徳科の目標は「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため,道徳的諸価値についての理解を基に,自己を見つめ,物事を広い視野から多面的・多角的に考え,人間としての生き方についての考えを深める学習を通して,道徳的な判断力,心情,実践意欲と態度を育てる」(文部科学省,2015)と定義されています。

 

「小学校,中学校,高等学校を通じて,学校における保健教育の目標は,生活環境の変化に伴う新たな健康課題を踏まえつつ,児童生徒が積極的に心身の健康の保持増進を図っていく資質・能力を身に付け,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎を培うことである」と定義されています(文部科学省,2019;2020;2021a)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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