2022年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近の記事

最近のトラックバック

無料ブログはココログ

« 2021年9月 | トップページ | 2022年1月 »

2021年11月

2021年11月30日 (火)

愛知中学生刺殺事件の悲しみと苦しみから(2)教育課程の構造的課題

我流~社会部発 学校は少年の「心の声」を拾ったか(産経新聞; 2021/11/30 19:00;社会部 中井芳野)

 

この記事は「少年の内面に触れ、危険な兆候をつかむ機会はなかったのだろうか」と問う。まさに、少年の心のつぶやきに耳を傾ける人はいなかったのだろうか。他紙で報道されている「生徒会役員候補の応援演説を頼まれ嫌で断れなかった」との彼の思いと気もちを教員やスクールカウンセラーや両親やだれかが聴ことはできなかったのかと悔やまれる。


しかし、ここに教育課程や教職員の勤務体制という構造的な課題・問題があることを、国民が知り、構造的な問題を改革・修正しなければ、事件は繰り返される。私は、このコロナ災禍で、子ども(大人もであろう)のストレス状況は非常に悪化しており、この事件は氷山の一角だと思っている。

教育課程や教職員の勤務体制といった構造的な問題をメディアは追及してほしい。

①教育相談の時間は正規の授業時間として確保されてない。兵庫県心の教育総合センター(2011)兵庫県下小中高特別支援学校1185校(神戸市除く)を対象に実施した心の教育の調査報告書では、<効果的な心の教育>の中学校の第一位は「教育相談」だった。<今後行いたい効果的な心の教育>として、中学校は1位が「 カウンセラーが担任と共同して行う実習等の実施」であった。3位に「ストレスへの適切な対処法を体験的に学ぶ活動」であった。しかし、2011年に起きた大津いじめ自殺事件を契機に、道徳を教科にした。そのため、道徳は小中9年間で314時間の授業時間が確保された。しかし、道徳の時間に「教育相談」はできない。道徳の時間にストレス学ぶ授業はできない。教育相談は、業間や放課後といった時間にやっている。教育相談は授業に位置づけられていないので、研修は希望者のみで、悉皆研修ではない。また、ストレス学ぶ授業は小5に1時間、中1に1時間あるのみだ。9年間に2時間しか授業時間はない。ストレス学ぶ授業は、保健体育の保健の「心の健康」の項に位置づけられている。心の健康授業は、小5は3時間(うちストレス学ぶ授業1時間、中1は4時間(うちストレス学ぶ授業1時間)である。しかも、中学校は保健体育であるから担任ではなく体育教師が行うことになっている。もし、心の健康授業を小1から高3まで、10時間から25時間毎学年確保できれば、心の健康授業で「教育相談」をやることができるようにする。廊下に2つの椅子と机を置き、教室ではリラックス法のビデオをみておさらいをする。ストレスの調べ学習をする。大学教員養成課程の「教育相談論」を「心の健康論(心の健康授業と教育相談」に改変し、全教員が心の健康授業ができるようにする。新大学教員養成課程が動き出すまで、スクールカウンセラーや養護教諭が心の健康授業を主担する担任をサポートする。

 

②スクールカウンセラーの勤務時間は週に1日かつ1日6時間。小学校は4時間の県もある。高校は1回3時間が基本のようだ。
児童生徒や保護者のカウンセリングで全時間つまっているスクールカウンセラーも多い。せめて、週に2日、1日8時間の勤務にしてほしい。

 

このような構造的な問題をすみやかに解決しないと、教員とスクールカウンセラーがスクラムを組んで、生徒をサポートすることは困難である。

日常ストレスへの対処、心のつぶやき、アサーティブな表現、災害トラウマからの回復、いじめしない・させない、さまざまな心の健康授業案はすでに作成されている。兵庫県心の教育総合センターのHp、いわて子どものこころのサポートのHp、拙著(ストレスマネジメント理論によるこころのサポート授業ツール集;あいり出版)にアクセスすると、いじめ防止、暴力防止、災害後の心のサポート、試験を乗りこえるイメージトレーニング、がパワーポイントやビデオ動画で配信されている。しかし、それらの授業の枠がないのが日本の課題・問題であることをメディアはとりあげてほしい。

 

2021年11月28日 (日)

愛知中学生刺殺事件の悲しみと苦しみから(1)

読売新聞:中3刺殺、加害生徒「給食の箸を渡してくれない時あった」…面談などで複数の不満訴え
11/28(日) 5:00配信

注)サブタイトルと本文が違うのは記者さん・デスクの課題ですね。
サブタイトル「給食の箸を渡してくれない時あった」
本文「(被害生徒が)給食当番の時、すぐに箸を渡してくれない時があった」
この2文は結果が全く異なります。

注2)サブタイトル修正したようですね。読売新聞もさすがにまずいと思ったのでしょう。「すぐに」をいれましたね。

 

教員はよくかかわってましたね。ただ、生徒の内面と大人(教員や保護者?)の認識に大きなズレがあったんですね。どうしたら防げたのか考えてみました。小4から、「ストレス対処法を学ぶ、落ち着くためのリラックス法」①、「出来事を受けて心のつぶやきが感情や行動を惹き起こす」②、「3つの言い方(非主張・攻撃・アサーション)」③の心の健康授業を毎年テーマを変えて行う。「災害トラウマからの回復方法を学ぶ心の健康授業」④も。東日本大震災被災地でスクールカウンセラーと教員で取り組んできた「心の健康授業と教育相談」のノウハウを全国に展開する時。例えば、「大丈夫か」と声をかけると大丈夫でなくても大丈夫と言うので、「眠れた?朝ごはん食べた?」と聞くようにしてますと。これらの授業は心理学や医学が学問背景なので道徳とは区別して行う必要あります。心の健康授業小中9年間で7時間しかありません。道徳は314時間あります。1995年阪神淡路大震災2年後の神戸児童連続殺傷事件後に「心の教育の充実」が河合隼雄座長により取りまとめられ、中学2年生の社会体験「トライやるウイーク」がはじまる一方、国の教育政策としてできたのは「心のノート(心の健康ノートではなく、道徳ノート)」でした。東日本大震災の年に大津いじめ事件が起き、いじめ・自殺防止のために道徳が教科になったのです。道徳も必要ですが、心の健康授業をバランスよく授業時間を確保すべきでした。コロナ災禍の大災害の渦中に起きた少年事件です。今度こそ、心の健康授業が全学年でできるよう学習指導要領の修正をするときです。

 

①はストレス対処にはストレッサーへの対処(問題焦点型対処)とストレス反応への対処(情動焦点型対処)があり、バランスよく身につけよう。イライラしたから、いじめる・暴力をふるうは過ち、暴力を使わない怒りの表現を学ぼう。

 

②はうつの心理療法である認知療法をベースにしています。

「メールを送ったのにすぐに返事が返ってこなかった」という出来事を受けて、心のつぶやき、感情、行動を考えます。感情は、怒り、悲しみ、落ち着きを。それに対応する心のつぶやきを考えます。

「無視したな」➨「怒り」➨悪口言う


「嫌われたかな」➨「悲しみ」➨学校に行かない


「忙しいのかな」➨「落ち着き」➨次の日「最近忙しいの?」と言う。


出来事「箸をすぐに渡してくれなかった」にも、心のつぶやきによって、感情や行動が変わることを学んでいれば、「いじめられた」と思っても、まずは落ち着いて「待てよ、ほかの考え方はないかな?」と考えることができたかもしれません。
文科省はいじめの定義を大津いじめ自殺事件の後に変えました。

 

 

(定義)
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。(いじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号))

 

 

この定義によれば、「箸をすぐに渡してくれなかった」という行為により、苦痛を感じていたら、いじめと認定されてしまいます。
そうでしょうか。「すぐに渡してくれないのはどうして?」とその場で相手に伝えたら、「え、いま○○をしていたからごめんね」とか状況がより明確になりますよね。今のいじめの定義は、被害感も拾ってしまいます。状況を冷静に分析する力を身に着ける教育も必要ではないでしょうか。

 

③はWolpe,Jが非主張が心身症の一つの要因と考え、主張訓練(Assertive Training)により、心身症への治療を提案しました。その後、アサーティブ(さわやかな自己主張)はアメリカ女性解放運動で展開されていき、平木典子先生が日本に紹介しました。

 

④災害トラウマからの回復を学ぶことは、暴力トラウマからの回復を学ぶことにつながるとともに、暴力トラウマが人生にいかにネガティブな影響を及ぼすかを学ぶことにつながります。トラウマ・インフォームド・ケアを学校教育のなかに取り入れるべきです。

文献

冨永良喜編(2015) ストレスマネジメント理論によるこころのサポート授業ツール集 あいり出版

冨永良喜編(2014) ストレスマネジメント理論による心とからだの健康観察と教育相談ツール集 あいり出版

冨永良喜(2012)大災害と子どもの心 岩波ブックレット

 

« 2021年9月 | トップページ | 2022年1月 »