小学1年・2年・3年 表情絵(緊張・怒り)をもちいた心の健康授業案ーこんなときどうする?
小学1~3年生の心の健康授業のひとつに、「こんなときどうする?」という指導案を作っています(冨永良喜編「ストレスマネジメント理論による心とからだの健康観察と教育相談ツール集」あいり出版)。
小1・小2、14名を対象に実施した結果を引用しながら授業過程を説明します。
授業のめあて:きんちょうしたとき、イライラしたとき、どうしたらいいか考えよう。
①導入
黒板に、表情絵とカードを貼り授業をすすめていきます。
教師「緊張しています。からだがカチコチです。どんなとき、こんな顔になりますか?」(「発表」、「かけっこ」、・・などの発言がでる)
「そうですね。発表の前、からだがカチこちになる、緊張する、ほかに、からだの変化はありますか?」(「ドキドキする」、「足が震える」など)
「ちょっと大変なことを乗り越えようとからだががんばっているのです。」
※「緊張」のテーマは、試合・発表などを想起させます。家で虐待的養育を受けている子どもも、つらくならずに、授業に参加できます。この「緊張」に対する対処を考え、望ましい対処法(落ち着くためのリラックス法や眠りのためのリラックス法)を児童が体験しておくと、次の「怒り」のテーマを取り扱ったときに、つらいことを想起しても、落ち着くことやリラックスしてそのことを受けとめることができるようになります。
②私の心とからだを知ろう(10分)
「1週間を振り返って、自分の心とからだはどうだったか感じてみましょう。」
(「心とからだのアンケート」)
ダウンロード - kokorotokarada123.xls
・「一週間をふりかえってみましょう(小学1年生は、1週間をふりかえるのは、むつかしいので、「最近、ここ3日間」でもいいでしょう)。目を閉じることができる人は目を閉じて。『いらいらしたかな、夜はぐっすり眠れたかな?うれしいことがあったかな・・・』はい目をあけて」
※児童のようすを観察していて、目を閉じることができない児童は、安全感を脅かされているか、発達の課題を抱えているのかもしれません。教師は、授業中の児童の観察からも児童の心を推測することができます。ですから「目を閉じなさい」ではなく、「目を閉じることができる人は・・」という教示にしているのです。そして、1項目ずつ読み上げていきます。
「しんぞうがドキドキした」、この1週間(最近)、しんぞうがドキドキしたことがなかった人は、0、1回あったなという人は1、ときどきあったという人は2、まいにちあったという人は、3に○をしてください。」
※心の健康教育では、自分の心とからだについてみつめます。道徳では、読み物教材を通して道徳的価値を学びますが、ストレートに自分をみつめることを重視します。
③くふうを知ろう(20分)
「(緊張の表情絵をさしながら)発表の前、ドキドキしたとき、どんなくふうをしていますか?発表の前の日、どんなくふうをしていますか?」
このクラスでは次の発言がありました。
・ただうごく
・あきらめる
・たのしいことを思いだす。
・目をつぶる
・手に人を書いてのむ
・しんこきゅう
※この「くふう」には3つのカテゴリがあります。これらの発言は、1つのカテゴリだけの発言になっていますが、それは後で解説します。これらの発言を受けて、体験的活動を提案します。
児童の「しんこきゅう」の発言を受けて、「しんこきゅう、良い方法を知ってますね。いまから、発表だというとき、心臓がどきどきして呼吸がはやくなるかもしれませんね。そのとき、息を大きくすって、ゆっくりはくと落ち着くんですよ」
「まず、背すじをたてて、お腹に、手をあててみましょう。息をすうとお腹がどうなりますか?息を吐くとお腹がどうなりますか?息を吸うとお腹がふくらみ、息を吐くとお腹がしぼんでいくようにしましょう」
※呼吸法は小学低学年の児童にはとてもむつかしいので、児童からの発言がなければ、肩の動作法がいいかもしれません。
④私のくふうを知ろう(10分)
「自分のくふうをチェックしてみましょう)
・「(緊張の絵をみせて)発表や試合の前に、どんなくふうをしていますか?」
「1なんかいも「れんしゅう」している」、しないよという人は0、ちょっとだけするという人は1、ときどきするという人は2、いつもするという人は3、0から3のどれか一つに○をしてください。
2問、3問ゆっくり読みます。
・「腹が立った(表情絵の怒りをみせ)あと、悲しくなった(表情絵の悲しみをみせる)あと、どんなくふうをしていますか?
4友だちに話しをする・・・すべての項目をゆっくり読み上げます。
次にテーマを「怒り」にします。
「どんなことがあったら、こんな顔(怒り)になる?」(「いやなことを言われた」「おこられた」「むしされた」といった発言がでてきます)
「そうですね。いなかことをいわれたり、無視されたら、そりゃ腹が立つよね」
「(怒りの表情絵をはりかえて)腹が立った時、イライラしたとき、どんなくふうをしていますか?」
このクラスでは次の発言がありました。
・たたく、ける
・ごめんなさいとあやまる
・あばれる
・ゲームをする
・(イライラさせた子に)どうしておこっているのかきいてみる
・心のなかで”だいきらい”という
※道徳的にやってはいけない行為が発言されても、すぐにその発言を否定するメッセージは送りません。その行為を児童がどのように考えているのか聞いていきます。
「〇はそれはやっていい」「×はそれはやってはいけない」「△はわからない」としたら、と一つずつ手を挙げてもらいました。このクラスでは、
・あばれる 〇6名、×3名、△5名
・たたく、ける 〇0名、×10名、△4名
でした。「たたく、ける」はやってはいけないと考えている児童がほとんどですが、「あばれる」はやってもいいと考えている児童がかなりいるわけです。ここで、「たたく、けるはダメだよと、ほとんどの人はわかっているんだ。すごいね」と「わかっているけど、しちゃうんだ」と返し、コントロールできない衝動に気づかせます。そして、それをどうすればコントロールできるようになるかを学びたいという意欲を高めていきます。それには、「からだの声を聴く」ことが大切ですと展開していきます。
※「あばれる」というのは、「人をたたく、物を壊す、物を投げる、枕をたたく、大声をだす」といったように、人を傷つける行為と人を傷つけない行為も含まれているかもしれません。時間があれば、「あばれる」と発言した児童に、「あばれるってどういうこと、スローモーションでやってみて?」と提案してもいいかもしれません。
「腹が立った時、たたく、けるはやってはいけないって知っているけどやってしまうんだね。そんなときに、よい方法があるんだよ。そんなとき『どうしてそんないやなことをいうの。そんなこといわれたら、とっても嫌な気もちになるんだよ』といってみるのはどうかな?でも、むちゃ、腹が立っていたら、そんなに落ち着いて言えないよね。でも、落ち着いて言えるためには、からだに聴いてみるといいんだよ」
「みんな、こんな顔(怒り)してみようね」「いくよ、せーの、『腹立つ!』」
「どうかな、顔だけ怒っている?怒るときは全身力をいれているかもしれないよ」
「手をグーにして、腕をまげて力をいれて、『腹立つ!』って」
「本当に、腹が立ってきた気分になれるよね」
「めちゃからだに力がはいっていたら、『どうして、そんないやなこと・・』(声を絞るように)とうまくいえないよね」
「それで、落ち着いて言えるようになるために、全身の力を少しゆるめてみるんだよ」
「力をゆるめるまえに、もっと力をいれてみよう。肩をあげて、『もう腹立つ!』少し肩の力をぬいてみて、肩を下におろしてみよう。背すじは立てたままだよ」
「そして、言ってみよう『どうしてそんないやなことをいうの。そんなこといわれたら、とっても嫌な気もちになるんだよ』」
⑤授業の感想を書こう
「今日の授業の感想を書いてください」
« 新型コロナウイルス1800人意識調査(7)体調悪くても登校・出勤する | トップページ | 学校関係者のコロナ陽性が確認された学校でのコロナ特別授業ー日赤3つの感染症をベースに »
« 新型コロナウイルス1800人意識調査(7)体調悪くても登校・出勤する | トップページ | 学校関係者のコロナ陽性が確認された学校でのコロナ特別授業ー日赤3つの感染症をベースに »
コメント