特別の教科 道徳 道徳ではいじめ防止にならない(8)青の洞門
菊池寛「恩讐の彼方に」は高校の国語に登場するそうですが、小学6年の道徳の教科書におさめられています。
父の仇をとろうと20年間も了海を追い続けてきた実之助が、ついに了海と出会う。しかし、そこで目にした了海はやせ衰え見るに忍びない姿となっていた。洞門を完成させようとする了海の思いを知り、洞門の完成までは仇を討つのを待つことにした実之助は、自分の思いを早く成就させようと了海を手伝う。実之助が掘り始めてから1年6か月目、了海が掘り始めてから21年目、ついに洞門は貫通する。自分の命を懸ける仕事を成し遂げた了海は、実之助に自分を切れと覚悟を決めた。しかし、実之助は自分の身を削りながらも多くの命を救いたいという思いを貫こうとした了海の美しい心に感動し、手を取り合って涙を流した。
1 主題名 憎しみをも消し去る美しい心 3-(3)
2 資 料 「青の洞門」(みんなのどうとく6年 学研)
3 ねらい
◎ 美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念を持つ。
了海の姿に心を打たれ、仇への憎しみを超えた実之助の気持ちに共感し、人間には人間を感動させる美しい心があることに気づく。
周囲の人の自分の可能性に挑戦する姿や強い意志に対して、素直に畏敬の念を持とうとする。
この主題名、ねらいは、インターネットに掲載している 指導案からの転記である。
家族を殺されて、加害者を許す心が美しいと決めつけている点で、アウトでしょ。
道徳で、いじめ防止、暴力防止を本気で文部科学省が考えているというのは、嘘でしょ。
道徳の教科書を、時間をみつけては、パラパラみているが、怒りがわいてきて仕方がない。この国の子どもたちの未来は、どうなるのだろうか、暗澹たる思いになる。
現実の殺人による被害者遺族の心情をどこまで、授業者は考えて授業をするのだろうか?もし、殺人で家族を亡くした児童がクラスにいる、親から虐待を受けてきた児童がクラスにいるとき、また人を殺したいと考えている児童がクラスにいるとき、この道徳の時間での経験はどのように児童に影響を及ぼすのであろうか。
憎しみを消し去ることは美しい心なのか?親から虐待を受けてきた人に、「親を許しなさい」「親を許すことは美しい心です」ということと同じである。他人が「親を許しなさい」ということはこれほどひどい二次加害はない。道徳学者は、暴力で傷ついてきた人にまたしても打撃をあたえるのか?知らないからとすまされるものではない。
内容項目は、「感動、畏敬の念」や「相互理解・寛容」ではなく、「生命の尊さ」に位置づけ、この物語を読むより、犯罪被害者の声を聴く、犯罪被害者支援団体が作成している紙芝居を見る方が、よほど児童にとって大切な時間になると思う。
また、どうして、こうも読み物教材オンパレードなのか、内容項目「個性の伸長」で、ねらい「自分の特徴に気づき、長所をのばす」ために、自分のストレス対処のパターンを知る自分教材からはいってもいいではないか。道徳の時間35コマのうち、10コマを心の健康授業ができるようにしてほしい。「心の教育」の下に「道徳教育」と「心の健康教育」をおいてほしい。次の学習指導要領の改訂までには、内容項目「善悪の判断、自律・自由・責任」「節度節制」「個性の伸長」「希望と勇気・努力と強い意志」「親切・思いやり」「友情・信頼」「公正・公平・社会正義」「家族愛・家庭生活の充実」「生命の尊重」「よりよく生きる喜び」の10内容項目では、読み物教材ではなく自分教材(ストレスチェックなど)を活用し、暴力・いじめ・災害が人生にどのような影響を与えるのか、どうすればネガティブな影響から解放されるのか、人のあたたかな絆や肯定的なメッセージが、人の心や生き方にどのような影響を及ぼすのか、道徳的行為にかかわる体験的学習をとりいれて授業することの許可を文科省は決断してほしい。少なくとも、各学校が授業案を選べるようにしてほしい。
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