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2019年6月

2019年6月21日 (金)

特別の教科 道徳ではいじめ防止にならない(2)いじめ被害にあった子の心身を悪化させるおそれ

特別の教科 道徳ではいじめ防止にならない と2018年7月31日にこのブログで書きました。

今日、twitter で 「いじめ 道徳」で検索すると、国はどうして道徳を教科にしたのですか、古傷が痛む といった書き込みがありました。

たしかに、道徳の副読本では「いじめ」をテーマにした教材はほとんどなかったのが、例えば、小6のあかつきの教科書をみると、3ついじめ

に関する教材があります。その一つ、「苦い思い出」は、小学生のころある女の子をからかっていたのが、実はいじめていたのだとわかって衝撃

だった、60歳をすぎてもその衝撃は忘れられない。同窓会でその人が元気そうでよかった。」といった投書が紹介されている。

いじめていたとわかったときこの女の子にきちんと謝罪したのだろうか?そして、同窓会で、当時のことを謝罪したのだろうか?

いじめが心身にどのような反応を引き起こし、どうすれば回復できるかを伝えないで、いじめの物語を教材することは、いじめ防止どころか、

いじめ被害にあった人の心の傷を悪化させるおそれがある。

いじめや暴力はトラウマ反応・トラウマ様反応を引き起こす。

心からの謝罪は、回復に寄与する。そのことを道徳学者が知っていれば、このような「苦い思い出」といった投書に対して、ちがったメッセー

ジをおくれていただろうに。道徳学者は、いじめ被害にあった子やいじめ加害の子どもにどう向き合い、どうやって支援してきたのだろうか。

危ない道徳! そういわざる得ない。 

2019年6月12日 (水)

川崎無差別殺傷事件後の心のケア(8)学習指導要領の改訂を-悲しみと怒りをみすえた暴力の対応のために

SNSやメディアには「死ぬなら一人で死ね」「ひきこもり」「不良品」などのワードであふれている。
『「ひきこもりは非常に犯罪率が低い集団としか言いようがない」精神科医・斎藤環氏が過剰な報道に苦言』(AbemaTIMES,2019年6月4日)で、斎藤氏は「「ただ、私の統計では大体1割前後に家庭内暴力がみられるので、これに対する対策はちゃんとした方がいい。・・・」語っているが、この暴力の対応について、メディアではほとんどまったくとり上げられていない。斎藤氏は、自身がスーパーヴァイザーを務めている「こころのドア船橋」のHpに「家庭内暴力」を掲載している。ここに、暴力の対応の基本的姿勢や具体的な対応を書いている。ぜひ、全文を読んでほしい。一部抜粋したい。


 


「家庭内暴力は放置すると殺傷事件にまで発展しかねない危険な側面を持っています。しかし、適切に対応すれば、そのほとんどは解決することが可能です。・・・家庭内暴力の底にある感情は「悲しみ」です。・・・・家庭内暴力への基本方針は、「暴力の拒否」です。・・・・「拒否」といっても、もちろんそれは暴力との「対決」を意味していません。「対決」もまた、暴力を助長するだけだからです。暴力の拒否とは「暴力を押さえ込むための暴力」をも拒否するということです。力で家庭内暴力を制圧する試みは、ほとんど確実に失敗します。暴力は暴力の連鎖しか生み出すことはありません。・・・暴力をふるわずにはいられないほどの「悲しみ」が、どのように起こってきたか。本人の劣等感を刺激せず、「恥をかかせない」ためには、何に気をつけるべきか。それを知るためには、ひきこもりとも共通する彼らの葛藤のありようを共感的に理解するところからはじめなければなりません。・・・本人の訴えてくる過去のうらみつらみについては、十分に耳を傾けて下さい。暴力は完全に拒否して良いのですが、言葉による訴えはそのぶん、しっかりと受容する必要があるからです。ただし、「耳を傾ける」ことと「いいなりになる」こととは違います。本人の恨みを言葉として十分に聞き取ること、同時にその言葉に振り回されないことが大切です。場合によっては、こうして話し合う姿勢をみせるだけで、暴力が沈静化することもあります。・・・」


 


この暴力の対応への基本的姿勢と具体的方法は、児童養護施設での暴力をなくし安全・安心した生活ができるように「安全委員会方式」を提案している田嶌誠一氏と同じである。日々の指導では「叩くな、口で言う」をスローガンにしている。


 


暴力に対する基本的姿勢と具体的方法の学校教育への導入が急務である。政治家はこの事件を受けて「強い憤り」の表明と登下校の安全対策だけでなく、悲しみと怒りをみすえた暴力対応ができるように学習指導要領の改訂を考えてほしい。
いじめによる子どもの自殺を受けて、いじめ防止対策推進法が制定され、いじめのアンケートは年に3回は実施しなければならなくなった。しかし、多くの学校で行われているアンケートの質問には「いじめ被害」の項目はあっても「いじめ加害」の項目はない。いじめ加害をしている子どもの悲しみと怒りの声を聴こうとしているのだろうか。
 いじめを苦にした自殺防止のために、政府は「道徳」にそれをゆだねた。そして、道徳が教科となった。1997年神戸児童連続殺傷事件を受けて、「心のノート」が作成されたが、それは「道徳ノート」であった。もちろん、道徳を否定しているわけではない。このアプローチも必要だろう。しかし、道徳とは別に「心の健康教育」の授業が必要だ。暴力やいじめが心身にどれほどの打撃を与えるか、その打撃はどうやったら回復できるのか、怒りや悲しみがいっぱいになり暴力やいじめをしようと考えたときどうしたらいいか、自分を教材にして、この1週間、自分の悲しみや怒りはどうだったのか、それにどう対処したのか、考える時間が、学校教育ではほとんどない。「心の健康」は小学校では5・6年の保健体育に、中学校でも保健体育の教科書に掲載されている。しかし、小学校5・6年でわずか3時間、中学校でも3年間で3時間しか授業時間が確保されていない。
小学校1年生から、自分の悲しみや怒りとどう向き合えばいいかについて考え適切な対処法を学ぶ授業がどこの学校でも行える学習指導要領の改訂を考えてほしい。もちろん、その教育政策でどれほどこのような事件を抑止できるのかはわからない。しかし、身近な教師が、保護者が、地域の人が、心の健康に関する正しい知識と暴力への対応法を学べば、いじめ・虐待・傷害・殺人・暴力のほんのわずかでも抑止になるのではないか。
道徳の時間に、「ストレス」を扱うことができない。暴力やいじめはトラウマティック・ストレスを引き起こす。この心身の反応の意味と対処には、医学や心理学の知恵が必要だ。年間、5コマでもいい。「心の健康」の授業をやれるように、政府は政策提言してほしい。この政策提言の実現にお金はほとんどかからないだろう。政治家やメディアは、この悲しい事件を受けて、本質的な政策提言の情報発信をしてほしい。


 

2019年6月 6日 (木)

川崎無差別殺傷事件後の心のケア(7)安全と危険を区別する力を育んで

カリタス小学校が再開され、事件のあったバス停を移動させる、学校バスの代わりに公的なバスを利用する、それらは、事件のことを子どもに思い出させないようにするため、とメディアで伝えられています。

学校再開から間もないこの時期、この試みは心のケアの安全感の回復によい方法だと思います。サイコロジカルファーストエイド(PFA)には、「トラウマを思い出させるリマインダーから身を守る」という節が、安全感の章に記載されています。
ところが、「学校バス」が人を傷つけたわかではありません。「学校バス」はトリガー、リマインダー、きっかけ刺激です。それは、安全なのです。トラウマを経験すると、安全と危険が区別できなくなることがあります。PFAは1ヶ月以内のガイドラインであることを忘れてはなりません。

少しずつ
<「学校バス」は安全だよね。でも思い出してつらくなることがあるかもしれないね。そんなときは、背を立てて息をゆっくり吐いてみてはどうかな、安全なことにふれていくと、ドキドキはかならず小さくなるよ>と
トリガーの意味と再体験反応への対処法を伝えていく方が回復にとってプラスになります。

もし、つよく回避を続けていけば、生活空間がとても狭くなり、怖いものがいっぱいになってしまいます。犯人が着ていた黒い服はみたくない。・・・などと回避を強めていけば、ストレス障害のリスクが高くなります。
教師や保護者はこのトラウマの仕組みをしって、子どもたちに少しずつチャレンジすることを提案してみるとどうでしょうか。

詳しくは(7)再体験と回避の意味と対処 をお読みください。

2019年6月 4日 (火)

川崎無差別殺傷事件後の心のケア(6)再体験と回避の意味と対処を学ぶ

共同通信は、「現場のバス停利用せず 「事件の記憶あるため」」6/3(月) 22:56 と配信しました。これは、事件現場を子どもたちが見たりふれたりすると、事件の記憶を呼び覚ますと考えての配慮だと思われます。

トラウマ反応の再体験と回避の意味と対処を知っておく必要があります。(1)でも書きましたが、トラウマ反応は誰にでも起こる自然な反応ですが、それをうまく収められずに、日常生活がうまく送れなくなるストレス関連障害(PTSDなど)に移行することがあります。そのリスクは、「つよい回避」と「自責感」です。(PTSDになっても医療支援で回復することがわかっています。)トラウマ反応には、マヒ・再体験・回避・過覚醒・ネガティブ思考・退行があります。トラウマ体験はトラウマ記憶となり脳に貯蔵されます。メタファーですが、脳には記憶の箱がたくさんあるとたとえることができます。そして、トラウマ記憶の箱は凍りついていて(「マヒ」)そのときのことを断片的に思い出せない一方、トラウマ体験に関連する安全な刺激(トリガー、リマインダー、きっかけ刺激)にふれると、氷が一瞬のうちにとけて、トラウマ記憶の箱に吸い込まれてありありと怖かったあの時のことが思い出される(フラッシュバック)、夜見るのが悪夢、それらは「再体験」といわれています。衝撃が強いほどマヒがつよく、再体験もつよくあらわれます。そして、トリガーにふれないように、関連する安全な場所や出来事を避けるのが「回避」です。
Traumareactionscoping
トラウマケアのむつかしさは、「再体験」と「回避」への対処です。事件後間もないころは、回避は対処になります。ですから、テレビのニュースを調整してみないようにするというのも回避により、再体験反応が起きないようにする対処になります。しかし、ずっとつよく避け続けるのは、ストレス障害のリスクを高めます。時が経っていくと、安全な刺激(トリガー)には、少しずつチャレンジしていった方がいいのです。ですから、「時期に応じた心のケア」が大切なのです。そこで、再体験反応の受けとめ方と対処を学んでおくと、つよく回避しなくてもよくなります。
再体験反応は、ちょっとほっとできるようになると起きやすいです。地域がしっかり防犯体制が強化されて、だいじょうぶかなと思えるようになると、トリガーにふれて思い出してドキドキします。そのときは、トラウマの記憶に向き合える心の準備ができてきたのだと思うといいでしょう。そして、そのときは、背すじを立てて、息を大きく吸ってゆっくり吐いていくといいでしょう。もし、立っているときに再体験反応が起こったら、膝を少し曲げて大地をしっかり踏みしめるのもいいでしょう。映画館のスクリーンをみるように、少し離れて、なにが起きたのか、ながめてみるのもいいでしょう。でも、そのことを一人でするのは苦しすぎるので、信頼できる人に話を聴いてもらう、「もう思い出してドキドキする」と、トラウマの記憶を語ることをうながすのではなく、まず、再体験反応について語り、そのときどうすれば、再体験反応が小さくなるか、いっしょに考えてもらうのです。おそらく、もともともっているよい趣味・好きな活動(例えば、スポーツや歌を歌う、合唱など)をすれば、小さくなるとか、そういう話をして、ドキドキしても今は安全なんだからだいじょうぶ、ドキドキは必ず小さくなりますと、そういう体験をくり返していくのです。
そして、事件での打撃は、それぞれに異なるので、少しずつのチャレンジも、それぞれに応じて異なっていきます。それにチャレンジしようとするとどれくらい苦しいかな、0が全く苦しくない、10が最高に苦しいとしたらどれくらいか、スコアリングしてみよう、というのも、よい方法です。8,9,10くらいだったら、まだ、それにチャレンジするのは控えた方がいいかもしれません。5か6くらいのトリガーをさがして、チャレンジするのです。ひとりだったら、9くらいだけど、おうちの人と一緒だったら、5くらいかもしれない、と思ったら、おうちの人といっしょにチャレンジするといいでしょう。そして、少しでもドキドキが小さくなるまで、そこに、“身を置く”のです。
事件の現場は大切なお友だちやお友だちのお父様が亡くなった場所でもあります。そこで、手を合わせてお祈りすることは、大切な人を心のなかに生かす心の作業となります。それは、大変なことなので、それぞれのペースでいいのです。それぞれの心の時計の針を大切に、人と人のよい絆をえて、チャレンジしてくといいでしょう。

2019年6月 3日 (月)

川崎無差別殺傷事件後の心のケア(5)メッセージを伝えたい

「児童の心のケア「恐怖、悲しみに共感を」」6月2日(日)22:17と、産経新聞が報じています。
専門家は、<「小さい子供は何が起きたのか理解できず、混乱している。恐怖や悲しみといった感情に共感してあげるべきだ」と話す。>とコメントしています。
もちろん、共感はベースですが、起こっている心とからだの変化にどう対処したらいいかをわかりやすくメッセージをおくってあげるといいでしょう。

 

トラウマケアではそれを「心理教育」(Psychoeducation)と呼んでいますが、その言葉はわかりにくいので、「メッセージを伝える」としました。
「ストレスマネジメント理論による心とからだの健康観察と教育相談ツール集」の101p 「大変な出来事があったあと、やってみよう!」のリーフレットのタイトルを「心とからだへのたいせつなメッセージ」とし、一部文章を修正削除追加した文書を添付します。
追加したメッセージは、

 

かなしい気もちで心がいっぱいになったら、お祈りするといいよ、涙をながすのもいいよ、おうちの人や先生やカウンセラーにお話をきいてもらうのもいいよ。
こわい気もちで心がいっぱいになったら、「こわい気持ちは命を守る大切な気もちだよ」と自分に話しかけてみてもいいよ。「こわいよ」っておうちの人や先生に言ってみるといいよ。こわい気持ちがどうすれば小さくなるか、いっしょに考えてくれるよ。

ただし、このリーフレットをクラスの子どもたちに配布して、担任や教師がメッセージを送る時期は、タイミングを考えた方がいいでしょう。
ここ1-2週間は、平時の健康チェック(睡眠、体調、食欲、イライラ)に、担任が口頭でショートなメッセージを送る方がいいかもしれません。ただ、心身の変化にどう対処したらいいかは、保護者や教師は知っておくといいでしょう。

ダウンロード - psychoed20190603.pdf

 

2019年6月 2日 (日)

川崎無差別殺傷事件後の心のケア(4)個別ケアも集団ケアも

メディアスクラム(集団的過熱取材)により子どもたちの安全が脅かされるようなことがあれば、彼らの回復を妨げることになり、許されない。私は、小2児童が何者かに殺害された後の小学校で心のケアに携わった経験がある。そのときもメディアスクラムが起きた。犯人未逮捕という恐怖にさらされるなか、登下校中の子どもにメディアがインタビューをする、「あれ〇ちゃんが(列から)いない」、夜自宅のチャイムを鳴らすなど、安全が脅かされていた。それで、教育委員会からメディアへの申し入れをしたことを思い出す。しばらくたって、子どもたちの教室で心のサポート授業をしたが、その合間の時間に、ある子どもは私に「今のお気持ちは?」と取材遊びをもちかけてきた。報道関係者は、報道倫理を徹底してほしい。
 一方で、メディアは多くの人に情報を伝えることができる。この川崎殺傷事件では、多くの人が心を痛めており、子どもたちの心のケアをしっかりやってほしいという願いは、twitterのつぶやきをみてもわかる。そんななか、多くのメディアが心のケアに関する情報発信をしているが、東京新聞が折々によい情報を発信しているように思う。

 

川崎殺傷事件 心の傷、個別にケアを 児童や家族「安心できる環境必要」2019年6月1日 朝刊では、わが国のトラウマケア・トラウマ治療の第一人者の小西聖子先生のインタビューが掲載されている。以下、抜粋したい。

 

<専門家は「不眠などの症状が出るのは当然。まずは児童が安心できる環境が必要」と指摘する。・・・トラウマ(心的外傷)ケアが専門の武蔵野大の小西聖子教授によると、凄惨(せいさん)な現場に居合わせたこと自体にショックを受け、不眠や腹痛などの症状が出ることが多い。普段と変わらないように見えても、感情がまひすることもあり「全員が何らかの影響を受けていると考えるべきだ」。まずは、できる限り普通の生活をし、安心させていく必要がある。現場にいなかった子どもや家族も時間がたつにつれ恐怖を実感するようになり「友達が被害に遭ったのに自分は生き残った」と自責の念を持つ可能性もある。
 小西さんは「必要とされるケアは個々に異なる」とくぎを刺す。特に事件に遭遇した児童らには、個別に症状を見極める、丁寧なケアが求められる。>

 

キーワードだけぬきだしてみると、「不眠や腹痛、感情がまひ、全員が影響、普通の生活、安心、時間がたつにつれ恐怖を実感、自責の念」と続く、そして「必要とされるケアは個々に異なる」、それは私が(3)でそれぞれの心の時計の針の動きが異なると記したことと一致する。ただ、<釘をさす>とこの記事のタイトルに<個別にケアを>と記されていることから、集団ケアはしてはいけないといったニュアンスを感じる。

 集団ケアに<釘をさす>のは、ディブリーフィングの誤りを指しているのだろうか。1990年代から2001年までは、「同じトラウマ体験をした人たちをグループ(集団)でなるべくはやく被災・被害体験を語り合うことがPTSDを予防する」と考えられていたから、このようなことをしてはだめですよ、と釘をさしたのかもしれない。(ちなみに、あるメディアは、「心のケアは3日間が重要」とテロップをあげていたが、これはディブリーフィングの72時間モデルであり、メディアの勉強不足といわざるえない。というか、そのテロップを作るようにうながした専門家の勉強不足といった方がいいかもしれない)


 2008年四川大地震の直後に重慶の西南大学の心理学の大学院生が目撃したのは、まさに、専門家によるディブリーフィングであった。 <地震のときのことを思い出してごらん・・・>子どもたちは、泣きじゃくる子が1/3、ケラケラ笑う子が1/3、ぼーっとしている子が1/3だったようだ。大学院生のボランティアは、子どもたちがあまりにつらそうなので、専門家にやめてくださいと申し入れたようだが、専門家はこの体験が子どもたちに今必要だと譲らなかったそうだ。2007年には、2001年の911同時多発テロ後の心のケアのディブリーフィングの失敗の実践も踏まえて、災害紛争重大事件のあと1ヶ月にやるべきことやってはいけないことを記載した「サイコロジカルファーストエイド」が今は世界のスタンダードであり、被害にあわれた方の必要な体験は<安全感・安心感>とされている。

 一方で、私は集団ケアも必要だと考えている。「その対象」と「その内容」と「その時期」を考慮する必要がある。学校はクラス単位で動いており、仲間づくりによって、安心感の回復も促進される。事件後の数週間は、集団ケアでは、平時の健康観察をベースに、そこから個別ケアにつなげていくシステムを作るのがよいと考えている。「睡眠、食欲、体調、イライラ」といった健康の基本をセルフチェックし、いずれ眠りのためのリラクセーションを折々に子どもたちにも体験してもらいたい。

 残念なことに、わが国の学習指導要領では、「心の健康」が軽んじられている。「心の健康」は保健体育に位置づけられており、小5・6の教科書にはじめて登場し、しかも2年間でわずか3時間くらのコマしかない。中学校でも3年間に3コマしかない。政治家は、学習指導要領に、心の健康授業を小1からいれることができるように文科省に働きかけてほしい。小1から教科になった道徳の時間ではストレスは扱わない。平時に、怒りや悲しみや緊張にどう対処したらいいかを折々に学ぶ機会・時間があれば、このような衝撃的な事件後の心のケアはもっとスムースに行くだろう。
 

 小2児童が殺害された学校では、3週間後に、表情絵を活用した心のサポート授業を行った。悲しみ、怒り、緊張、24時間緊張しつづけると心のからだも大変になること、安心できる場では安心していいこと、でも、警戒しないといけない場所では、背を立てて落ち着いてと肩のセルフ動作法と呼吸法をいれた。そして、笑顔の表情絵をみせて、「こんな悲しい・怖いことがあったけど、笑ってもいいんだよ」とメッセージを送った。授業の感想には、「笑ってもいいんだ!」と書いている子が何人もいた。


 保護者にも集団ケアと個別ケアを用意するといいと考えている。保護者にはもっと早い時期に集団で、起こりうる心身の反応と望ましい対処の仕方についてのリーフレットを配布して、ストレスケア・トラウマケアのメッセージを送りたい。そして、子どもは学校でみせる顔と家庭でみせる顔は異なることがあるので、保護者から見た子どもの心とからだの変化を教師集団となんらかの方法で共有したい。
この殺傷事件の心のケアは容易ではない。長期の支援が必要だ。浮島文部科学副大臣が学校を訪問したと報道されている。ぜひ、長期支援体制を維持する財政支援をお願いしたい。

 

2019年6月 1日 (土)

生活をふりかえるアンケート(いじめ被害・目撃・加害・ストレス)改訂版

生活をふりかえるアンケート(いじめ被害・加害・ストレス)を以前このブログに掲載しました。
いま、学校では、年に3回は、いじめを発見するためのアンケートが実施されています。そのアンケートは、いじめ被害の項目はあるものの
いじめ加害の項目は、ほとんどありません。多くの教員やスクールカウンセラーにそのことをどう思いますかと尋ねると、「無記名でも、いじめをやっている子どもは、本当のことを書かないでしょう」といわれます。でも、もう20年前ですが、私がスクールカウンセラーをしていた中学校で小学校も含めて、いじめ被害・加害・ストレスアンケートを実施したところ、かなり、いじめ加害の項目にもチェックをいれる子どもさんが多くいました。いじめは、いじめ加害がなくなるといじめはなくなるのにもかかわらず、いじめ加害にも焦点をあてる取り組みが乏しいと思います。そして、今回の改訂版は、いじめの解決に大きな力を発揮する「傍観者」として、いじめの目撃もチェックできるように、工夫しました。
A4、1枚の限られた紙面ですから、むつかしいと思っていましたが、ご覧いただき、ご意見をいただければと思います。
そして、こういったアンケートを実施したとき、それを子どもや保護者にどうフィードバックするかが大切です。20年前、スクールカウンセラーとして週に8時間勤務していた私は、大規模小学校を抱えるこのようなアンケートの集計を担当し、「この学校では、〇%の児童生徒が 無視されたり仲間外れにされたりしていると報告しています。」「いじめ被害といじめ加害の両方を訴えている児童生徒は〇%です」「いじめ被害・いじめ加害・いじめ被害加害両方・いじめなし群のストレス得点は図〇に示しています」とこの現実をみんなはどう考えますか?
とフィードバックしました。保護者会では、それらのデータにもとずき活発な意見交換がなされました。
道徳の教科書にも「いじめ」をテーマにした物語や教材が掲載されるようになり、年間指導案のもと各学校で実施されています。
しかし、それは、あるいじめの物語を読んで、どう考えるかといった手法であり、今この学校で起こっている現実を直視する資料ではありません。これらのデータを提示して、「いじめとストレス」「いじめ被害にあったとき」「いじめをしないために」といった授業案を展開できます
(「ストレスマネジメント理論によるこころのサポート授業ツール集」、あいり出版に、DVDのなかにパワーポイントの授業案をいれています)。
ただ、このような取り組みをしようとすると、①だれが集計をし、おたよりを作るのかといったことが生じます。多忙な教師の負担がふえて大変です。②いじめ防止の授業をどの時間でやりますか? 道徳は教科になったので、教科書にそって授業をしなければなりません。道徳の時間では、ストレスをとり上げることができません。道徳の時間とは別の時間で先ほどの授業はやらないといけません。
いま、いじめ防止対策推進法の改訂をめぐって、教師の懲戒に関する条文をめぐって、座長案と改訂原案で議論が展開されていますが、
いじめ防止を道徳を軸に提案している「いじめ防止対策推進法」では、子どもの自殺を抑止することは困難でしょう。小1から怒りや悲しみを抱えたときどうしたらいいかを考え、体験的な活動をとりいれた心の健康授業を学習指導要領を改訂してとりいれるべきです。まずは、年間6-8コマの授業時数でいいので、心の健康授業をいれてはどうでしょうか。道徳と心の健康をバランスよく学ぶシステムを作るべきです。
いじめをされたとき死を選ばない対処があることを小さいころから学び、ストレスがたまったときいじめでない方法を学ぶ授業、いじめられている子をみたときどうすればいいかを学ぶ授業をとりいれるべきです。

ダウンロード - bullyingstresscheckliste38080ver02.pdf

 

 

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