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2016年5月 5日 (木)

熊本地震と心のケア(20)避難所の子どもたち-新聞記事より

避難所の子ども、心に変調 熊本地震、花の絵描けずというタイトルで、西日本新聞が記事を配信しています。(201605050228分)

 避難所の子どもたちのようすを2カ所の避難所からレポートされ、専門家の意見を聞き紙面を構成しておられ、大変参考になります。紙面には字数制限があり、心のケアについて、なかなかメディアが伝えることがむつかしい点があります。本文を抜粋しながら、私なりの解釈なり補足をしたいと思います。

 

>被災者のケアに当たる医師らによると、絵で花をうまく描けなかったり、けんかが増えたりしているという。なお続く余震や長期避難のストレスが原因とみられ、支援する精神科医は「避難所で子どもは自由に遊べず、親も周囲を気にする。住宅の手当てなど早期支援が必要だ」と指摘する。

>子どもたちは、地震の体験などをうまく言葉で表現できずにストレスを募らせることが多く、同法人は絵を描くことなどで気持ちを整理させる手助けをしている。

地震のときの恐怖と避難所でのプライバシーのない不自由な生活で、大人も子どものイライラや眠れないといったストレス反応で苦しんでいるのだと思います。もっとも有効な対処は安心して生活できる住宅の手当(ストレッサーへの対処)であることは間違いありません。一方で、それがなかなかすぐにできないとき、ストレス反応への対処が必要です。このNPOは「地震の体験をうまく言葉や絵で表現させること」が大切だと考えているようです。そうでしょうか。まず、安全・安心な体験が必要ではないでしょうか?

 

 一方教員が避難所に出向き、子どもたちに午前中にスケジュールをくみかかわっているニュースが配信されています。

 

避難所に出向き児童の心をケア 南阿蘇西小 (毎日新聞:201651日配信)

教員たちは児童らが避難する村内の5カ所の避難所を平日の午前中に訪問。「さくら会」と名付けた臨時の教室を開き、健康状態を観察しながら読み聞かせや勉強を教えている。課題のプリントやお絵かきのセットを持ち込むなど、集まった子供たちの年齢などに応じて対応している。

 

 このニュースは動画で配信され、子どもたちのようすや教師のかかわりがよくわかります。ある子どもの「起立!」という声からはじまります。午前中のスケジュールが小ホワイトボードに、「 南西さくら会①あいさつ ②けんこうかんさつ ③ラジオ体操 ④きのうのふりかえり ⑤学習 ⑥片付け・ふり返り」 と記されています。こういった構造化され、かつ、いつもそばにいてくれていた教員がこうやってかかわることこそ、子どもたちの安心感につながるのではないでしょうか。

 

>熊本県益城町では非政府組織(NGO)「ワールド・ビジョン・ジャパン」(東京)が避難所の町総合体育館で、子どもの遊び場としてプレールームを運営。同組織によると、5月に入り小学生同士などのけんかが2件起きた。ボランティアに暴力を振るう例もあったという。支援する臨床心理士で、福岡女学院大人間関係学部の奇恵英(キヘヨン)教授は「今は周囲の大人が善悪の区別を丁寧に諭しつつ、子どもが話しだすのを待つ時だ」と語る。

 

 奇先生は、発災直後には、被災された方に必要な生活物資を福岡からいち早く届けられたそうです。奇先生のグループは、東日本大震災後に、定期的に、宮古の仮設住宅を訪問し、動作法を展開されてきました。今回も大学院生とともに、いち早く、避難所の子どもたちの支援を展開されているようですね。心より敬意を表したいと思います。

 

子どもだけでなく大人もぶつけようのない怒りを抱え込みます。怒りを心のなかに閉じ込めることは健康によくありません。怒りの対処には2つあります。ひとつは怒りの適切な表現です。もうひとつは怒りをなだめる、ヨシヨシすることです。

 

子どもたちは、ボランティアの学生さんを、たたいたり蹴ったりして、怒りを表出してくるかもしれません。そのときに、<こんな悲しいことを経験した子たちだから、自分が少々痛くてもがまんすればいいこと、すきにさせてあげたい>と思ってしまう学生さんもいます。でもそれは、誤りです。決して、怒りを暴力に変えることを認めてはいけません。ただ、<暴力はいけません!>と感情的に叱りつけるのもよくありません。『むちゃむちゃ腹立つよね』と子どもの怒りの感情を認めること、と同時に、もしたたいたり蹴ったりしてくるようであれば、『それは痛いよー』と学生さんは自分の気持ちを言葉にすることです。そして、その怒りのエネルギーを、スポーツや相手を傷つけない自分を傷つけない表現に変えていくことです。まず、ボールやバットも、硬いものはよくありません。ボールが人にあたってもけがをしないスポンジボールや新聞紙で丸めた剣を用意するといいでしょう。遊び疲れたら、リラックス動作法(これが怒りをヨシヨシするなだめる体験です)を提案してみるといいでしょう。

 

奇先生が「丁寧に諭しつつ、子どもが話しだすのを待つ」とコメントされた内容は、おそらくそういう意味が込められていたのではと想像しています。今度、奇先生にあったとき、聞いてみます。

 

>今後、各地で順次学校が再開され、避難所から自宅や仮設住宅に移る子どもたちも増えるが、熊本市の避難所などでは地震の恐怖から「家に帰りたくない」と泣きだす子も出ている。対応する医師らは「まず昼間に家に帰る練習を」などとアドバイスしている。

 

 「まず昼間に家に帰る練習を」というのは、段階的練習法(実生活内エクスポージャー)という方法です。すでに安全な場所や人を避け続けることで、トラウマ反応が症状として持続するときに、少しずつのチャレンジを提案します。しかし、それは、「安全になっている」ということが条件です。家は危険度診断で、グリーンだったのでしょうか?もしグリーンだったら、そのことを子どもさんの発達に応じた言葉でお話してあげることがまず必要です。そして、安全と頭でわかっているけど、からだが思うように動かないときに、この提案がはじめて、意味をもつことになります。

 それと、今度余震があったとき、どうしたらいいか、防災の知恵を話し合っておくことです。もし、危険度診断でレッドであれば、もちろん、このアドバイスは適切でないことになります。(お医者さんのアドバイスですから、家はグリーンでだたったのでしょうが)

 

もうひとつ気になる記事があります

心のケア」へ違和感――熊本地震をめぐって - 高原耕平 朝日新聞が426日に配信しています。ただ、この記事途中から「有料購読」になっています。天下の朝日新聞は、こんな大切な記事は無料で配信してほしいと思います。私も後半を読めてないので、正確なコメントができません。ただ、twitterに朝日新聞徳島総局から「「問題は、『ケア』は専門家にまかせておけばよいという風潮が進むことで、災害が生む不条理をわたしたちひとりひとりが感じ取り、考えるため感受性が麻痺してゆくことにある」と発信されていることから、「心のケア」の意味が正確に伝わってないと思ってしまいます。

 私は心のケアを「他者が被災者の心をケアするというよりも、被災者が、傷ついた自分の心を主体的にケアできるように、他者がサポートすることであり、自らの回復力・自己治癒能力を最大限に引き出すセルフケアへの支援」(冨永・小澤,2005)と定義しました。

確かに、「ケア」は「世話」ですから、「してあげる」ことを連想するかもしれません。前のブログで書いたように、「心のケア」ではなく「災害後のストレス対処」や「心のサポート」の方が適切です。中国語では「心理援助」です。ただ、これだけ、「心のケア」という用語が日本では拡がったので、この言葉に、適切な実態を込めていくほうがよいと考えるようになりました。

心のケアの専門家の役割は2つあります。

 一つは、身近な人がどうかかわればトラウマ反応を減衰させトラウマ後成長につながっていくかを身近な人にアドバイスすることです。これはメディアには大きな力があります。

災害や事件などのトラウマ体験をしても、ストレス障害になってしまう人は一部です。多くの人は日常生活を取り戻します。これまでの経験からどのように身近な人がかかわれば、日常生活を取り戻していけるかです。毎日新聞が掲載した避難所に出向き児童の心をケア 南阿蘇西小」の実践はまさにそれにあたると思います。

 

そして、奇先生の学生さんは臨床心理士養成の大学院生である意味、専門家予備軍かもしれません。でも、他の専攻の学生さんも大活躍しているとの情報がはいってきています。

昨日、毎日放送「ちちんぷいぷい」で兵庫県立大学の学生さんが西原村の避難所で、子どもたちと遊んでいる場面がながれていました。

そして、身近な人たちの適切なかかわりの機会をえることがなかった、家族や愛する人を喪失した、もともとの養育環境の不安定さなどの要因により、ストレス障害になってしまう人たちがいます。その状態になれば、医療の専門家のかかわりが必要です。それが専門家の2つめの役割です。

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