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2016年3月 2日 (水)

災害・紛争後の子どもの心のケア(7)Yule etal.(2013)を読んで

ヨーロッパの災害や戦争後の子どもの心のケアで重要な論文を発見しました。

それは、

Yule,W. ,Dyregrov,A.,Raundalen,M. and Smith,P.(2013) Children and war: the work of the Children and War Foundation Eur J Psychotraumatol 4: 10.3402

です。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3547281/

この論文には、私たちが東日本大震災後、子どもの心理支援を展開してきたベースになる理論と方法が記載されていました。たとえば、

・トラウマ反応に対する対処能力を高める支援が必要で、それは教師にその方法を教えることで達成できる。

・災害発生からできるかぎり早い介入は、回復を遅らせる可能性がある。

・信頼性と妥当性があり項目が少ないスクリーニングテストが必要である(私たちは、スクリーニングテストという発想ではなく、子どもが自分のストレスとトラウマを学びそれらへの対処力を高めるためのツールとしてのチェックリストという発想ですが)

 

1992年からはじまったボスニア戦争の翌年、クロアチアのある市で、Atle Dyregrov, William Yule, Robert Pynoos, Anica Kosが集まり、戦争による子どもへの心身の影響と対処に関する会議が行われました。その会議で、ハイリスクの子どもをスクリーニングする尺度がないことが議論されたそうです。そして、8項目のトラウマスクリーニングテストを開発し、5セッションのTeaching Recovery TechniquesTRT)を作成し、さまざまな戦争や災害後に実践し効果を検証してきたことが記載されていました。

東日本大震災後、日本にもTRTを導入されようとしたようです。当時、私たちのプログラムとYule博士らのプログラムを討議する機会があればよかったと惜しまれます。

 

TRTは、東京大学のグループが、その概略と彼らの実践を公開していますので、お読みいただくといいです。

大上真礼2014災害対策の心理教育カリキュラム開発の可能性

http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/55945/1/project_H25_5.pdf

その論文に、TRTのエッセンスが書かれていますので紹介します。

 

TRT日本版:訳:石丸径一郎・松丸未来:子どもたちのための集団回復プログラム

1,導入 はじめに(すごいことが怒った後の自然な反応)

2,侵入 フラッシュ(蘇る嫌な記憶、悪夢、フラッシュバック)

3,過覚醒 はりねずみ(リラックス、集中、睡眠の困難)

4・5,回避回り道(災害を思い出させるものと直面することの恐怖や困難)

10-15名、1グループ、1回100分を5セッションのようです。

 

Revised Child Impact of Event Scaleの項目は、「1.思い出そうとしなくてもあなたの体験したことを考えてしまいますか。3.そのことについて気持ちの高ぶりが波のように襲ってくることがありますか。5.そのことを人に話さないようにしていますか」など8項目によって構成されているようです。

Children and War Foundation」のホームページhttp://www.childrenandwar.org/

にさまざまな国の言語に翻訳されて掲載されています。

 

津波被災地では、「波のように襲ってくる」という用語は、再体験反応のトリガーになりますよね。また、2011年の秋に来日されているようですので、すでに半年が経過している時期ですから、トラウマを積極的に取り上げてもいい時期だったのでしょうが、もっと日常ストレスへの対処をベースに、少しトラウマの心理教育をいれる、そんな取り組みが求められていたように思います。それと、日本は、クラス単位・学年単位で活動するため、その5セッションのプログラムを学校教育に導入しようとすると、10コマの授業時間が必要になります。私たちは、こころのサポート授業(ストレスマネジメント授業)を、1コマいれるだけで、相当大変だったわけです。そのようなことをいずれヨーロッパの専門家とも討議できればいいなと、この貴重な論文を読みながら思いました。

 

もうすぐ、東日本大震災から5年になろうとしている今、私たちの取り組みを、世界に発信する必要性を痛感しています。

 

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