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2016年2月

2016年2月29日 (月)

PTSDの心理療法(3)トラウマイメージ動作療法

長時間エクスポージャー療法は、慣れ理論をベースにしていると思います。トラウマ・イメージ動作療法は、慣れは結果生じるものと考えます。まずは、日常ストレスのコントロールを動作をベースに学んでいきます。つぎに、トラウマイメージと距離がとれるように練習し、それから、その一連の出来事の物語への受けとめ方を動作でモニターし、さらに今後起こりうる出来事への対処を練習し、最後に、トラウマ体験をエネルギーに将来自分が活躍している姿をイメージします。

 

トラウマ・イメージ動作療法

1.ストレスとトラウマの心理アセスメントと見立て

2,トラウマティック・ストレスの心理教育

3,日常ストレスへの対処能力の育成

1)眠りのためのリラックス(漸進性弛緩法)

2)落ち着くためのリラックス(肩上げ、イメージ呼吸法、メッセージ)

3)心のつぶやきの仕組みを学ぶ:落ち着くことは合理的な思考を生む。

4)3つの表現方法-アサーティブ、非主張、攻撃表現-を動作を用いて学ぶ 

5)解決イメージ動作法

4,トラウマ反応への対処能力の育成

6)セルフ動作法(1腰・肩、2胸・背、3踏みしめ・ひねり) 

7)ポジティブ・安心イメージ動作法

8)反復イメージ動作法 :トラウマ・イメージのスクリーンのなかに吸い込まれないようにします。

9)ストーリーイメージ動作法:体験の内容を語る必要はありません。トラウマ記憶をイメージするとき、どのような姿勢動作(身構え)で受けとめたいかを探します。

10)対処イメージ動作法:もし同じようなことを経験するとすれば、ないしはそれと関連する人にこれから出会うとき、どのような身構えで対処するかをイメージします。

11)未来イメージ動作法:過去のつらかった体験をエネルギーにしてこれからどのような活動をしていくかをイメージします。

5,心理アセスメントの再評価

  

Traumatic Imagery ”Dohsa” Therapy

1, Psychological assessment

2, Psycho-education about stress and trauma

3, Stress coping with daily stress : Present-Centered Therapy using “Dohsa”

1)The relaxation to aid sleep using progressive relaxation.

2) The relaxation to calm down using the relaxation of shoulders, breathing, and positive message.

3) The triangle of thought and feeling and behavior: Calming down generates rational thought.

4) Three types of expression are assertive, non-assertive and aggressive using with “Dohsa”.

5)The solution imagery “Dohsa”

4, Self Control for traumatic memory: Trauma Control Focused Therapy

6)Self “Dohsa”(1.Waist and Shoulders 2. Chest and Back 3, Grounding and Twist)

7)Positive and safe Imagery ”Dohsa”:A client experiences observation image and experience image by using positive and safe imagery.

8)Repeated Imagery “Dohsa”: You are not pulled into the screen with traumatic episode images.

9)Story Imagery “Dohsa”: It is not necessary to tell what you have experienced. Feel your body, feel your posture. Find your appropriate posture when you recall your traumatic memory.

10)Coping Imagery “Dohsa”:If you experience like past traumatic events again, what will you deal with that?

11)Future Imagery “Dohsa”: You image this activity using an energy driven from your painful experience.

 5, Re-psychological assessment

 

2016年2月 7日 (日)

PTSDの心理療法(2) Thich Nhat Hanhから学ぶ 未来イメージ動作法

復員兵のPTSDは加害者の正当な苦しみなのだろう。PTSDの元兵士がPEやCPTを望まなかったり、チャレンジしてもドロップアウトする率が高いのは、被害体験だけでなく加害体験を経験しているからではないだろうか。PEは、古典的条件付けとオペラント条件付けを理論的背景としており、それはいわゆる”慣れ理論”である。繰り返し、体験を語ることで、情動反応は減衰していき、症状から解放される。しかし、語るにおぞましい被害体験や、大切な人を突然亡くすといった喪失体験、なおし加害体験による悪夢などのトラウマ症状は、語ることに”なれる”ことだけでは、十分でないだろう。
過去の体験の受けとめ方が変わり、その体験をエネルギーにして、新たな行動を積み重ねることによってしか、その苦しみを和らげることはできないのではないだろうか?
そのことを、端的に示唆するエピソードが、「ティクナットハンの”5人の子どもを殺した元兵士”への法話」ではないだろうか。
http://mettarefugedharmanuggets.blogspot.jp/2011/11/thich-nhat-hanh-and-soldier-who.html
 
ハン師は、「あなたは40,000人の子供たちが、ただ薬と食物の欠如のために、世界中で毎日死んでいることを知っていますか? あなたは生きています。 あなたの命をこの瞬間に死に瀕している子供たちを助けるために使ってはどうですか?」とその元兵士に語りかけたのです。
私は、トラウマイメージ動作法に、5つのコンポーネントを考えている。

 

)ポジティブ・安心イメージ動作法:観察イメージと体験イメージをポジティブ・安心イメージにより体験する。スクリーンに入る、スクリーンからでる、ことを動作ないし動作イメージにより体験します。

 

2)反復イメージ動作法 :トラウマ・イメージのスクリーンのなかに吸い込まれないようにします。これは、トラウマ記憶と距離をとる体験です。トラウマ記憶イメージに圧倒されずに、コントロールできるという実感を動作及び動作イメージで実現します。

 

3)ストーリーイメージ動作法:体験の内容を語る必要はありません。トラウマ記憶をイメージするとき、どのような姿勢動作(身構え)で受けとめたいかを探します。

しかし、ここまで体験できるようになると、クライエントの多くが、”語りたくなります”。そのときは、”語れることは回復にとってとてもとても良いことです”と伝え、情動に圧倒されずに、かつ情動を伴いながら語ることをすすめます。

 

4)対処イメージ動作法:もし同じようなことを経験するとすれば、ないしはそれと関連する人にこれから出会うとき、どのような身構えで対処するかをイメージします。

 

5)未来イメージ動作法:過去のつらかった体験をエネルギーにしてこれからどのような活動をしていくかをイメージします。

 
5つめのイメージ動作法は、まさに、ティクナトハン師からヒントをえたものである。

2016年2月 3日 (水)

PTSDの心理療法(1) ”gold standard"PTSD療法からのドロップアウトの問題 Najavits(2015)

Najavits(2015) The problem of dropout from “gold standard” PTSD therapies.F1000Prime Reports 2015, 7:43
この論文では、これまで効果が実証されている療法が、現実の臨床では、患者が取り組もうとしないか、取り組んだとしてもドロップアウトが高率であることを指摘している。
以下、概要である。
PE(Prolonged Exposure Therapy:長時間エクスポージャー療法)やCPT(Cognitive Processing Therapy:認知処理療法)がPTSDの黄金標準治療とされている。それは、RCT(Random control trial:ランダム化比較試験)の手続きで効果が実証されているからである。
しかし、現実の臨床(Real-world)では、それらの治療法を選択する患者は少なく、また参加してもドロップアウトが高率だと述べている。
RCTは、物質乱用などの合併症がある人は除外され、またよく訓練された治療者のみが行うなど非常に限られた条件で施行されている。
現実の臨床(Real-world)は、患者を選べないし、治療者を長時間訓練することにも限界がある。
たとえば、Mott et al.(2014)では、退役軍人(VA)796人のうち、わずか11.4%(n = 91)が CPT あるいは PE をはじめ、そして7.9%(n = 59)のみが それらを完了したと報告している。
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語るにおぞましいトラウマ体験の場合、トラウマ記憶にアクセスするとき、感情の統制が非常に困難となり、怒りや悲しみに圧倒されるからではないだろうか。
そのため、トラウマ記憶にアクセスする前に、過去のトラウマ体験と距離をとることを身につけることが重要ではないだろうか。
TF-CBTは、トラウマナラティブの前に、ストレスマネジメント、心理教育、認知のトライアングルなどで構成されている。
また、マインドフルネスが、PEやCPTを補填することが期待されると National PTSD centerのhpに記載されている。
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わが師、成瀬悟策先生は、イメージ療法から動作療法へと展開していった。その理論の骨子は体験治療論で、体験内容と体験様式を区別し、体験様式を重視した。田嶌誠一先生が開発した壺イメージ療法は、過去の体験(壺の中での体験)と距離をとること、壺に蓋をする、箱に蓋をして鍵をする、といったイメージによる体験内容との距離をとる技法が含まれている。
PEのイメージエクスポージャーには、観察イメージと体験イメージの区別はない。
私は、災害後の心のケアとして動作法を活用してきたこと、PTSDのケースにイメージと動作による心理療法を行ってきた経験から、最近、「トラウマ・イメージ動作療法」をマニュアル化した。
それは、前半は日常ストレスを動作をベースとしたコンポーネントで構成し、後半を、トラウマ体験イメージと距離をとるための「反復イメージ動作法」、イメージ体験の身構えを望ましい身構えに変える「ストーリーイメージ動作法」、将来同じようなトラウマストレスにあったときのための「対処イメージ動作法」、過去のトラウマ体験をエネルギーにして自分が機能的に活動している「未来イメージ動作法」から構成されている。
いずれ、このブログでも公開したい。

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