公認心理師法について(11)今後の方向性
国家資格・公認心理師養成と学会連合資格との今後の方向性(「方針」ではありません)について、もう一度書いてみたいと思います。
公認心理師養成のカリキュラムと試験機関はこの半年以内に決まるでしょう。それは、法律に定められているからです。試験機関は、これまで臨床心理資格を認定してきた日本臨床心理士資格認定協会と3団体ベースの心理研修センターの2つのいずれか、ないしは、いずれもではないでしょうか。
学会連合の資格、臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士の養成は今後どうなるのでしょうか?
学校心理士は、「学校」、臨床発達心理士は、「発達」
と分野特化していますから、公認心理師の上位の学会連合専門資格として、存続可能だと思います。現状は、学校心理士養成、臨床発達心理士養成をみていると、学内実習がないところもあるようです。公認心理師養成では実習を強化することを余儀なくされると思います。
もちろん、公認心理師養成カリキュラムに、心理実践・臨床実習-具体には、クライエントさんへのカウンセリング、心理療法の実習-を、きっちり明記する必要があります。これが明記されなければ、公認心理師法第2条の業の1,2を達成できないわけで、これは必須にしなければ法律に合致しません。
一方、臨床心理士は、全分野なので、公認心理師と重なるため、いまの臨床心理士養成のままでしたら、公認心理師との差別化が難しくなると思います。公認心理師は学部4年+大学院2年、臨床心理士は大学院2年なわけですから。そうすれば、現有の臨床心理士養成コースで、国家資格・公認心理師を受験し、合格すれば、あえて、学会連合資格・臨床心理士を受験するだろうか? という疑問がわいてきます。
もちろん、10年後には、臨床心理士を取得するものはいなくなり、全員が国家資格・公認心理師を取得するということでもいいかとは思います。臨床心理士養成のノウハウが公認心理師に受け継がれるのなら。そう考える人も多くいるかもしれません。
しかし、学部4年+大学院2年の養成で満足してはいけません。医学部は、国家資格・医師免許を取得後、2年間の研修医制度があるではないですか。マンツーマンで、指導を受ける体制ができているそうです。
私は、さらに専門性の高い資格は必須で、それは、「心理療法」領域だと思います。
そうすると、
筆記による公認心理師試験(修士2年1月か2月)を受け、合格したものが、大学院修了後2年間の実地研修を受け、ケース研究をとりまとめ、臨床心理士の面接試験を受験する。そういった「新しい臨床心理士養成」の構想を日本臨床心理士資格認定協会が打ち出すべきだと考えています。
そして「心理療法」については、認知行動療法、力動的心理療法、ヒューマニスティック心理療法の基本が理解でき、クライエントに適用できる、といったレベルだと思います。ですから、臨床心理士養成大学院には、少なくとも2分野のアプローチの専門家が教員としていることが必須になります。うつやPTSDには認知行動療法と世間では広まっているかもしれませんが、トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)のトラウマの語りは力動論的アプローチです。学派間の感情的対立に終止符を打ちましょう。
そして、いずれ、看護師-保健師のように、公認心理師の上位資格に国家資格・公認心理療法師ないし公認臨床心理師を置くように努力するというのはどうでしょう?
認定協会が「あたらしい臨床心理士養成構想」を打ち出すこと、そして、他団体が意見をいうことが、今の日本臨床心理士会幹部の「方針」にブレーキをかけ、各団体が意見をきちんと公平にいえる組織を新たに作り、そこをベースに、新しい船出ができるのではないでしょうか?
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