災害後の子どもの心のケア(2)常総・鬼怒川氾濫水害ーびっくりしたね・たいへんだったね・こわかったね-担任からのメッセージ
私の研究室で学んだ小学校の先生が、常総の小学校での担任の先生からのメッセージが書かれた記事をみつけて、災害後の子どもの心のケア(1)にコメント欄に書き込んでくれました。
とってもあったかで、「これぞ、心のケアのメッセージ」です。
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冨永先生
この記事をご存知でしょうか。
黒板の字は全て読めませんが、
「びっくりしたね。たいへんだったね。こわかったね。」
3行後には
「いっぱいお話きくからね」
この先生はすごいと思いました。こんな言葉を書くことができる担任でありたいものだと思います。
また、記事の中では小6の子のインタビューがありました。その中で
「自分の家は大丈夫だったから家がダメになった友達に申し訳ない。」
と言っているんです。
自分のせいじゃないのに、そんなふうに思うんですね。
http://www.asahi.com/articles/ASH9J2QMFH9JUTIL006.html
西本
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学びやに笑顔もどる 一部の学校再開 茨城・常総 2015.9.16 朝日新聞 永田大
決壊地点から北東に約2・5キロの石下(いしげ)小学校。この日は児童485人のうち417人が登校した。通学路に立つ教員に、児童が「おはようございます」と元気にあいさつし、ハイタッチする姿もあった。
小6の児童の感想「自分の家は大丈夫だったから家がダメになった友達に申し訳ない。でもその分、明るく接したい」を引用しています。
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この記事には、担任による適切な心のケアのメッセージが黒板から読み取れます。
びっくりしたね・たいへんだったね・こわかったね
西本さんもコメントしてますが、この担任の先生、すごいですね。子どもの心に寄り添ってますよね。子どもの心(感情や考え)を推測して、ことばをぽんと投げかけています。
こんなことばを投げかけられると、素直に、自分の考えを語れますよね。それが、小6児童のサバイバーギルト(自責感)のつぶやきですよね。この自責感を心のなかに閉じ込め続けることがストレス関連障害のリスク要因の一つです。だから、こんなに素直に表現することができたら、きっと、担任の先生から、「よく自分の思いを話してくれたね。申し訳ないと思う気持ちは、とても友達を思いやるやさしい心だね。」と声をかけられていると思います。自責感が他者に開かれポジティブなメッセージが返ってくることで、それはポジティブなエネルギーに変わっていきます。
1993年7月奥尻津波を中2で経験し、「自分の家は被災しなくて申し訳ない気持ちでした」と東北の被災した地域の中学校3年生に昨年語った定池祐季先生のメッセージに、ある生徒が涙ぐみながら「被災者の定義ってなんだろうと思うんです。私の家は津波の被害はありませんでした。でも、あの光景をみて、津波で被災した地域を毎日みてきたんです・・・」と。東北の被災地では、被災しなかったから、いまなお、自分の思いを表現できずに、心に閉じ込めている子どもたちがたくさんいます。
たいへんだったね・・・・これもすごい!海外の日本人学校幼稚園で、侵入者から襲われて頭にけがをおった事件がありました。けがが治っても、児童は母親から離れることができず、一切、事件に関連することに触れようとしもしませんでした(強い回避)。私が表情絵を使った気持ちのワークをやったところ、ある女児が「○くん、たいへんだったんだよ」といいました。そのとたんに、それを聞いた被害にあった児童が、笑い出したのです。それまで無表情だった児童が、堰を切ったように感情が噴出したのです。
それを思い出しました。
「心のケア」の連呼は偽善だ と記事を書く学者もいますが、心のケアの本質を、記者さんは書き続けてほしいものです。
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