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2015年4月18日 (土)

公認心理師法について(4)「公認心理師」実務重視で を読んで

読売新聞の論点(2015417日朝刊)に 石川啓・日本臨床心理士養成大学院協議会会長の寄稿が掲載されました。東日本大震災のような災害後の心のケアに臨床心理士への要請があったことや、悩みを抱える人の相談を受けていることが記されています。また、養成大学院で2年間、実践的な臨床心理学を修めた上で試験を受けることが記されています。

 そして、20146月、「公認心理師法」が国会に提出され、衆議院解散になり廃案になったが再提出の動きがあると記しています。また、臨床心理士の国家資格化は、日本臨床心理士養成大学院協議会など関係4団体が四世紀半にわたって要望してきたこと、「国家資格になると、医師や看護師などと同様に様々な法律に専門職として記載され、社会的評価は高まる。病院など職場での待遇が向上し、心理士を目指す人も増えるだろう」と記載しています。

 ここまで読むと、社会的に評価を得てきた臨床心理士が国家資格になるのか?と思いますよね。そして、そうなってほしいと。

「だが今回の法案には、内容にいくつかの疑問や懸念が残ることになった」と続きます。

 「臨床心理士養成大学院の実習では、教員の個別指導を受けつつ、来談者の臨床心理面接を初回から終結まで担当する。こうして臨床の技術だけでなく、対人援助職としての態度や倫理を身につけていく。」

 

まさに、そのとおりです。私も教員の立場として、来談者を大学院生が担当し、毎回スーパービジョンをし、来談者に危機的状況が起きたときは直接に大学院生と対応し、また必要に応じ医療機関への紹介・連携を図っています。そして、確かに、大学院生が実力をつけていきます。修士1年で入学してきたときの顔と修士2年を終えて修了するときの顔は変わっています。

 「ところが法案では、4年生大学で心理学を学んだだけでも一定の実務を積めば、受験資格が得られる。臨床心理学の学習や教育的な実戦経験のない人が実務に就くことを法律で認めると、心理支援の水準は大きく低下してしまう。」と記載しています。

 この法案を知らない人は、タイトルの「実務重視」と「一定の実務を積めば」ということと「水準が大きく低下」ということが、どうつながっているのか、わかるでしょうか?

 ちなみに法案の受験資格は以下のように記載されています。

 (受験資格)

第七条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。以下同じ。)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者

 二 学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの

 三 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者

 

 すなわち、学部と大学院・6年間の養成が基本(第7条の1)なのです。記事で指摘しているのは第7条の2が懸念ですよ、ということです。

司法の専門家養成の法科大学院の失敗は、一つは司法試験合格者数に比べて大学院生をはるかに多く募ったこと-合格率2割前後の国家資格に高額の学資を出し続ける親の身になれ!ということでしょう-もうひとつは予備試験とやらの抜け道受験を認めたこと。第7条の2が抜け道にならないか危惧しているのだと思います。蛇足ながら某4大法律事務所の新規採用者をみると法科大学院修了者と予備試験組が半数ずつなのです。

「文科・厚労両省が認める施設で(心理の)業務に従事したもの」となっているので、業務に従事すればいいの?誰から指導を受けて業務にあたっているの?そういう疑問ではないでしょうか?実務をしっかりと指導を受けて従事する体制が 第7条の2ではとれないのではないですかという懸念だと思います。

それは私もそうだと思います。でも、第7条の2のみが受験資格であれば、私もこの法案には不賛成です。いかに、実務経験をきちんとした指導体制の下でつくるかが重要なのだと思います。だから、これまで臨床心理士養成に携わってきた人たちが積極的に、第7条の1のカリキュラムを現実化し、そのことで、国民の利益になることを実証していくシステムを作ることだと思います。そして、第7条の2では、指導体制を明確にする、そうすれば、大学院教育と同等の労力をその施設の職員が求められることになります。いま大学院は専門職大学院が一つの流れになってきています。要は、7条の1の養成システムを十分なものにすることです。

そうであれば、実務に従事するだけで、専門的な指導体制のない人にだれが心の内を任せようとするでしょうか。

つぎに、「相談者に主治医がいる場合、公認心理師は「その指示を受けなければならない」とされているのも問題だ。主治医との連携は大切だが、医療機関外の心理相談室での対応まで常に主治医の「指示」を求めることは現実的でない。相談者が主治医に気兼ねし、相談を控える恐れもある。」と2つめの懸念が記載されています。

私も法案をはじめて読んだときは、「え!スクールカウンセラーでみている生徒を医療に紹介したとき、医師の診断・治療方針と、臨床心理士の見立てと異なるときはどうするのだろう?医師の「指示」に従わないといけないの?従わないときは罰則が科せられるの?」と思ったものです。でもよく考えると、大学附属の臨床心理相談室にクリニックに通院している人からカウンセリングの依頼があったときは、かならず、主治医の許可をえているか、確認するようにしています。そして、了解をえられているとクライエントがいい、カウンセリングを開始することになったら、時期をみて、クライエントに了解や確認をえて、主治医にカウンセリング方針などを記載したお手紙をだすようにしています。主治医の方針にクライエントが不満をもっていれば、セカンドオピニオンをえればいいのです。要は、心理職者と医師がクライエント・患者のことについて「緊密な連携」が図れる方がいいに決まっているのです。

スクールカウンセラーは医療従事者ではないので、医療行為を教育の場でできるはずはありません。医師の「指示」は医療行為の「指示」ではないことはあきらかです。医師の一部の方は、精神科医療の治療を受ければその方の生活の質が向上するのがわかっているのに、医療機関に紹介もしないで、クライエントを臨床心理士が「抱え込んでいる」と疑念ももっているのではないでしょうか。

この42条の2がクライエントに不利益をもたらす事案があれば、数年後にその事例を集めて、修正を求めればいいのです。しかも、公明党・古屋範子議員のご尽力で、45条の2が設けられました。

 

(経過措置等)

 

第四十五条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 

2 この法律に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、文部科学省令・厚生労働省令で定める。

 

いまの日本の実際の医療の現場では、精神科に受診した患者に医師から依頼されて医療施設で仕事をしている臨床心理士が心理検査をしたり、心理療法を担当しても、保険診療の点数がとれません。チーム医療の専門職のなかで国家資格がないのは臨床心理士だけです。

だから、医療関連施設に従事してきた臨床心理士は国家資格になることを切望してきたのです。42条の2と今の医療現場での臨床心理士の待遇・処遇の現状を天秤にかければ、不透明な点(スクールカウンセラーに医師はどのような「指示」をするの?)はあるにせよ、国家資格を作ることの方がはるかに、国民の利益に資することだと思います。また、スクールカウンセラーは時給が高くて高給取りと思われているかもしれません。でも、私の研究室で学び臨床心理士を取得した50歳前後の人が、教師を辞めて、被災地のスクールカウンセラーとして活躍しています。でも彼らは、教員の年収と比べ、200万円~250万円も少なくなってしまったのです。スクールカウンセラーもせめて教員と同等の年収がとれるように一部常勤化をすすめる必要があります。そのためにも国家資格・公認心理師の成立は必須なのです。

私は、国家資格・公認心理師が成立したら、その養成システムもですが、つぎに、公認心理師取得後研修の整備、及び、より専門的な心理療法ができる国家資格・公認心理療法師の法整備をすすめていく必要があると思います。

だから、これまでの臨床心理士養成の英知は公認心理師養成及び取得後研修システムにいかしてほしいと思うのです。

追記:疑問や懸念が残る中、国家資格・公認心理師法に賛成なのか、疑問や懸念があるから、反対なのか?その主張がもっとも重要なのだと思います。そのことは、この「論点」には記載されていません。私は、前者であってほしいと思います。(2015年4月18日追記)

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コメント

「医師の一部の方は、精神科医療の治療を受ければその方の生活の質が向上するのがわかっているのに、医療機関に紹介もしないで、クライエントを臨床心理士が「抱え込んでいる」と疑念ももっているのではないでしょうか。」

これについては、指示条項により、抱え込む傾向はよりいっそう強まるのではないでしょうか? 指示がもらえない場合、開業している心理師などは顧客を失うことになるからです。この点が理解されれば医師側も指示条項を指導に変更することに同意するかもしれないと思うのですが。それと、指示でないことによって生じる悪影響って現状で具体的にどのようなものなのでしょうか?それほどあるとも思えないのですが。

にゃんたろうさん、書き込みありがとうございました。

2005年2資格1法案が頓挫したのは医療団体の反対があったからです。

その後精神科七者懇談会は、
http://www.japc.or.jp/medical/data/kondankai-kenkai20130221.pdf
1.医療分野における医師との関係については、心理相談等の多くは医行為に含まれ
るので医師の指示を受けることとする。
と主張して、
3団体(臨床心理職国家資格推進連絡協議会(推進連)、医療心理師国家資格制度推進協議会(推進協)、日本心理学諸学会連合(日心連))の心理職団体は 4.他専門職との連携:業務を行なうにあたっては、他専門職との連携をとり,特に医療提供施設においては医師の指示を受けるものとする。
http://www.jsccp.jp/suggestion/license/pdf/sandantaiyoubou20111012.pdf
とし、医療分野での「医師の指示」は医療も心理も共通認識だったのです。
ところが、公認心理師法案は、
 (連携等)
第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。
2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

となり、医療施設以外でも、医師の指示を受ける 法案になっているのはおかしい、ということになったのです。ところが、看護師などは診療補助職であり、医師の代わりに「医師の指示」により医行為ができるという法体系になっている「医師の指示」なのですが、公認心理師は「診療補助職」ではない、すなわち医事法制の法律ではないので、公認心理師法の「医師の指示」は「あたらしい指示」という解釈なのです。

では、スクールカウンセラーでカウンセリングをしている生徒が医療を受診し、主治医がスクールカウンセラーに「指示」をするということを想定してみましょう。スクールカウンセラーの見立てと医師の診断はそれぞれ専門性が異なる見解であり、それぞれが生徒の福利に貢献すべき重要な情報・判断です。主治医の所見は重要であり尊重すべきですが、スクールカウンセラーの見立ても重要で、そこで意見交換がなされるとよりよい支援ができるのではないでしょうか。「指示」だからスクールカウンセラーが意見を言えないといことはないでしょう。お互いに意見を交換し、最終的には、生徒および保護者が医師のセカンドオピニオンをもとめるなり、スクールカウンセラーを活用・拒否することができるということです。

歴史的に、わが国の臨床心理職の国家資格は悲願であり、医療団体との交渉のなかで、現在に至っているのです。

医療団体も「医師の指示」は引けないし、でも「診療補助職としての心理師」を主張しなかった。心理職の団体は、医療限定の指示だと思っていたが、場(医療機関)の限定ではなく人(当該支援にかかる主治の医師がある)の限定でしか法制化はむつかしいということで、現法案になった。

国家資格・公認心理師を成立させたのちに、国家資格・公認心理療法師といったもっと高度の心理専門職の資格を視野にいれるべきだと私は考えています。それは、看護師-保健師モデルが参考になるかもしれません。

にゃんたろうさん

>指示がもらえない場合、開業している心理師などは顧客を失うことになるからです。

に私の考えを述べてなかったことに気づきました。

私設心理相談室は、医療機関ではありません。ですから、私設心理相談室に医療としての「指示」をだすということはあり得ないです。私設心理相談室は、心理の専門性のある相談をして、決して医療行為をするのではないのです。しかし、私設心理相談室にも医療にかかっていて治療を受けている人が、その医療機関ではカウンセラーがいないのでカウンセリングを希望したいということはあるでしょう。その場合は、医師と緊密な連携をとることになるのではないでしょうか。

ていねいな説明を書いていただきありがとうございます。
私のコメントは、主治医のいない段階で心理師を利用しているクライエントについてのものです。心理師の判断として医師との連携が望ましいかもしれないと考えていても、医師を紹介した後で、指示を出してもらえない可能性を考えると、医師の紹介を躊躇するかもしれません。これはクライエントにとっては不利益になりえます。

医療施設では、雇用契約の中で医師の指示に従うことを規定すればよいので、最初から法律で指示を規定する必要はないように思われます。また、医師の方針に反したことを心理がやって問題になることは、過去の実績から考えてかなり頻度が低いと思うのですが、指示が必要とする医師側のデータ、エビデンスはあるのでしょうか?

>心理師の判断として医師との連携が望ましいかもしれないと考えていても、医師を紹介した後で、指示を出してもらえない可能性を考えると、医師の紹介を躊躇するかもしれません。これはクライエントにとっては不利益になりえます。

私はこの先生は信頼できるという複数の医師と日頃から交流しています。そして、紹介します。これまで紹介したクライエントについて、医師からのお手紙や電話でのやりとりで、「・・・と考えています。・・・を考え・・薬物療法を・・・します」とお返事をいただき、連携を図っています。「指示を出してもらえない」というのは、私にとっては、違和感がある表現ですね。医師は診断や治療方針を伝えてくれます。
 ただ、すでに医療受診している方で、私どものカウンセリングや心理療法を受けたいと来られた方で、並行してカウンセリングや心理療法を行っていいか主治医に確認してもらい来談した方について、カウンセリングを行ったのちに、こちらから方針と見立てについてお手紙を主治医に送っても返事がない場合もあります。でもそれはまれなケースですね。

42-2は、クライエントさんや患者さんにとって、医師と心理師との積極的交流がはかれるきっかけになるように思います。もしそうでなければ、45-2で、クライエントさんに不利益になった事例をあつめて、修正を5年後にお願いするというのが妥当だと考えます。

つぎの質問は、またいずれ。

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