2008年8月15日 (金)

ツナミ被災地・インドネシア・アチェでのトラウマカウンセリングと防災教育

 8月11日、インドネシア・アチェで、トラウマシンポジウムが、EI(Educational International)の主催で行われました。EIのアチェ・コーディネーターのフェルナンデス先生が企画しました。2005年6月、7月に、アチェを訪問し、被災した教師のためのトラウマカウンセリングセミナーがEIによって企画され、EARTH(震災・学校支援チーム)が世界の代表として、派遣されました。95年の阪神淡路大震災の後に立ち上がった教師と臨床心理士(スクールカウンセラー)をメンバーとするチームです。
 今回のチームは、高橋哲さん、諏訪清二さん、宮下啓子さん、そして私の4名でした。

 あれから3年、アチェの街はずいぶん復興しました。シンポジウムでは、6月にアチェの中学・高校30校、297名の生徒へのPtsr-ed-tsunamiのアンケート調査を実施した結果と、これまで訪問するたびに、アチェの学校で行ってきたトラウマティックストレスマネジメントを動画を使って紹介しました。

 アンケートで心配な結果は、「またあんなこと(ツナミ)が起こるのではないかと心配」に、98%の生徒が、yesと回答していたということです。

 12日、13日は、小学校、中学校、高等学校をそれぞれ、1校ずつ訪問し、災害トラウマからの回復と防災教育の授業を行いました。
 高橋さんが絶妙の話術で生徒へトラウマを克服する方法を実習を交えて行い、諏訪さんが防災教育を行い、私は全体をオーガナイズし、トラウマの心理教育を担当しました。
 ある高校生が感想に書きました。
 「このプログラムを被災したアチェ全土で展開してほしい」
 それぞれの詳細は、まもなくこのブログにupします。

 もう一つインドネシアに行って思いました。日本のスクールカウンセラー制度-週5時間の勤務体制-はダメだということです。日本は本気で、子どもたちの心の健康、心の発達のことを考えているのでしょうか。インドネシア・アチェの中学・高校では、養護教諭と同じように、カウンセラーが常勤で働いているのです。しかも、1校に2-3名カウンセラーがいる学校もあります。

いろいろと考えることのあった一週間でした。

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2008年5月31日 (土)

四川大地震後の心理援助3-成都から

26日に、重慶に着き、今回、派遣要請をだしてくれた西南大学に。西南大学は学生43000人を擁する大学で、心理学院(心理学部)だけでも、学生・院生をあわせて700人以上いるそうだ。重慶から成都まで380km、成都から北川、都こうえんなどに被災には、また100km以上かかる。日本では、関西から山口ぐらいの距離だろうか。

しかし、西南大学心理学院はボランティアチームを、各地に派遣して活動を展開していた。

被災地ではさまざまな課題がつきつけられいる。

中国の心理士を支援するという今回の活動は意味があったと思う。

詳細は、後日レポートしたい。

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2008年5月25日 (日)

四川大地震後の心理援助-重慶の西南大学心理学院へ

四川大地震後の心理援助に携わる中国心理士のみなさんの集まりで、

お話しすることになりました。

日本心理臨床学会は、西南大学心理学院の派遣依頼を受けて、あすから1週間、4名の臨床心理士を中国に派遣することになりました。

 1,チーム名:中国四川大地震心のケアチーム

 2,派遣者氏名

              冨永良喜(兵庫教育大学大学院・教授)

              高橋哲(芦屋心理生活研究所・所長)

              小林朋子(静岡大学・准教授)

               沅洪(広島市立大学・准教授)

国際交流委員長の一丸藤太郎先生が窓口になり、中国からの依頼に応じるということで、派遣が決まりました。

阪神淡路大震災、スマトラ大津波での実践をもとに、これまでの知見を、伝えにいきたいと思います。

世界的には、ディブリーフィングから心理的応急法(PFA)へ、など、いまの支援から10年後を見据えた支援について、中国のみなさんといっしょに考えることができればと思います。

帰国は6月1日です。後半、成都を訪問するかもしれません。

日本の救援チーム、医療チームに、中国市民は、大変好意的な感情をもっておられるとお聞きしています。

私たちも、阪神淡路大震災後の心のケアのあり方を伝えたいと思います。しかし、心のケアは、その国の文化、宗教、価値観がなにより大切です。そのことを踏まえて活動してきたいと思います。

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2008年5月20日 (火)

四川大地震後の心理援助2

共同通信発、成都で、心理学チームが、活動開始。隣国であり、阪神淡路大震災や新潟中越地震などを体験してきたわが国です。これまでの知恵を提供したり、この困難に立ち向かうために、すぐにでも、中国に行きたいですね。

24時間態勢で心のケア  被災地の子どもたちに
【成都20日共同】中国・四川大地震で、四川省成都の心理学の専門家らが、親を亡くした子どもや遺族らが急性ストレス反応や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に陥ることを防ぐため、ボランティアで避難所に臨時診療所を設置し、24時間態勢でカウンセリング活動を行っている。
 子供ら被災者の精神的負担は重いが、中国では心のケア対策が遅れているため、専門家からは日本を含めた国際社会の支援を期待する声が上がっている。

 「もっと休んでいったら」。四川省綿陽市の避難所に立てたテントの診療所で、成都医学院の孫☆講師(応用心理学)が10歳ぐらいの女の子にやさしく語りかけた。孫講師によると、避難所にはショック状態の子どもが多数いるという。

 同学院は大地震発生2日後の14日に臨時診療所を立ち上げた。被災者約2万人が寝泊まりしている避難所を毎日何度も巡回し、具合が悪そうな子どもや老人に声を掛けて診療所でカウンセリングを実施、悩みや悲しみを表情や行動から引き出して精神の安定を図っている。

 10数名の教師が講義の合間を縫って、成都から約130キロの避難所へ。約20人の学生は「実践的授業」に積極的に出席する。「夜間に症状が出るケースがあるため」(孫講師)診療所のテントに学生10人と雑魚寝で泊まり込んでいる。

(注)☆は王ヘンに路


2008/05/20 07:35   【共同通信】

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2008年5月19日 (月)

四川大地震後の心理援助

毎日四川大地震の被災地のようすが報道されています。阪神淡路大震災を経験した私たちにとって、胸の締め付けられる光景です。地震から1週間、今日の毎日新聞と神戸新聞に、心のケアの話題がのりました。中国では、「心理援助」というようです。「心のケア」というよりも、的確な用語ですね。

毎日新聞の記事で気になったので、ブログに掲載することにしました。

四川大地震:PTSDのケア開始…3都市に医師50人

 【都江堰(中国四川省)浦松丈二、綿陽(同)鈴木玲子】中国四川省を襲った大地震で18日、北京市の精神科医50人が震源地に近い都江堰(とこうえん)など3都市に入り、被災者の心のケアを開始した。被災地で大災害後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療を進める方針だ。

 精神科医を受け入れた成都市精神衛生センターによると、中国では災害によるPTSDはあまり知られておらず、被災者の受診を促すため、医師が数グループに分かれて被災地を巡回することになった。

 最大の被害を受けたぶん川(ぶんせん)県の子供たち10人が暮らす成都市郊外の双流県の避難所には、毎日、精神科医を派遣し、震災のショックが子供たちにもたらすストレス障害を警戒していくという。

 中国の非政府組織(NGO)も独自にPTSD対策を開始した。広東省の同郷会「広東獅子会」やハリウッドの映画スター、ジェット・リーの「壹基金」が派遣した精神科医が18日に成都に入った。

 都江堰市内で診察にあたった鄭毅医師は「自分たちのチームが担当した200~300人では、地震の時の様子が何度もよみがえったり、不眠や頭痛を訴えるなど、PTSDに近い症状の患者が10%程度いた。この人たちについては、明日、成都市内の病院に移す。1カ月間継続して診察する必要がある」と語った。

 綿陽市内にある九洲体育館には、壊滅的な被害を受けた周辺の山間部から1万人もの被災者が身を寄せている。18日、「十分に睡眠をとり、眠れない場合は軽い運動をする」、「感情を隠さずに、悲しみをだれかに話したほうがよい」などと、震災で一瞬にして家族や自宅を失った被災者に対する助言を盛り込んだパンフレットが配布された。

※ぶん川県の「ぶん」はさんずいに文

毎日新聞 2008年5月18日 23時20分(最終更新 5月19日 1時31分)

気になった箇所は、

「自分たちのチームが担当した200~300人では、地震の時の様子が何度もよみがえったり、不眠や頭痛を訴えるなど、PTSDに近い症状の患者が10%程度いた。この人たちについては、明日、成都市内の病院に移す。1カ月間継続して診察する必要がある」

です。

急性ストレス障害のレベルということでしょうか。トラウマのできごとは、ほとんど全ての人に、フラッシュバックや回避マヒといった反応を引き起こします。しかし、人は回復する力をもっており、反応を収めていくことができます。ただ、それらのトラウマ反応に、適切な対処ができないとき、反応が持続し、日常生活が阻害されてしまうのです。DSMでは、その持続が1ヶ月以上続いたとき、PTSDとの診断基準を満たすということなんですね。

だから、PTSDは回復できないことの障害なんですね。はじめに、反応が起こるというのが、ほかの疾患と異なるところなんです。

だから、メッセージとしては、フラッシュバック、興奮、眠れない、そういった反応は、だれにでも起こる当然な反応なんですよ。人は、回復する力をもっているんですよ。そのためには、興奮を静めるリラックス法もいいでしょう。フラッシュバックが起こったら、そこに身を置いて、あふれる感情を語るのもいいでしょう。というメッセージは、必要でしょう。しかし、まだ、ライフラインも復旧していない現状では、感情をはき出すことをすすめるメッセージは、適切ではないでしょう。

ただ、急性ストレス障害のレベルなんでしょうね。この10%は。それで、要治療というコメントなんでしょう。

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2008年5月10日 (土)

Around40-トラウマ反応の描き方と心理療法

精神科医・天海祐希の金曜10時ドラマ、around40の#5、トラウマの視点から、読み解いてみたいと思います。

1,トラウマ反応の描き方は、橋部さん、かなり勉強してますね。

 PTSDに移行したのは、家内の予測通り、写真集に載っていた青年の死でした。通訳の青年は、自分のせいで、地雷で死んでしまった。なぜ、死んだのは、自分ではなく、彼なのか。カメラがもてなくなるほど、トラウマ反応が減衰しなかった理由は、この自責感情ですよね。

しかも、フラッシュバックが、日常の感覚刺激で、喚起されるという描写も、よく勉強していると思いました。”強い風”が、トリガーになってましたね。

2,回復のための心理療法も基本ははずしていなかったですね。

 心の傷に向き合うことと、回避している行動にチャレンジすること、この2つが、臨床心理士・藤木直人によって、提案されていました。(もちろん、実際の心理療法では、日常生活にまで入り込んで、治療をすすめないでしょうけど。)しかし、PTSDが、受容と共感の心理療法のみでは改善しないことを橋部さんはよく勉強したのだと思います。

 回避行動へのチャレンジは、カメラを手にする、ファインダーを覗く、シャッターをきる、そういった回避行動をリストアップして、苦痛度が50-60の行動からチャレンジするんですね。元カレが必死でカメラを手にしている場面がありました。そこに、聡子が、「すごい!手に取れただけ進歩よ」と声をかけていたのは、この実生活内曝露(段階的練習法)のことを橋部さんがちゃんと勉強していたからだと思いますよ。

 実際の心理療法の過程は、もっと苦しく、そして、回復の実感がえられていくから、苦しい課題にもチャレンジできるのですが。

 ともかく、これだけ、トラウマとトラウマからの回復を、最新の情報から構成したドラマをはじめてみました。

 しかし、なんとなく、さっぱりとしていた感じが残って、この物足りなさはなんなんでしょうか。

keiさん、書き込みありがとうございました。聡子は、PTSD専門の治療者への紹介状を書いていましたね。でも、あれだけ、変化の実感があれば、もう治療は80%は終わってますよね。あの状態にいたるまでに、トラウマセラピーのセッションでのクライエントの苦しみが描かれていなかったのが、物足りなさでしょうか。でも、それをドラマで期待するのは期待しすぎですね。

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2008年5月 2日 (金)

Around40-戦場のトラウマ?

私にしてはめずらしくTVドラマを楽しんでいます。金曜日の10時、around40です。

第4話は、戦場のカメラマンの聡子の元カレが登場。自分が撮影した戦場の写真をみて、からだに力がはいり、フラッシュバックが起きていることが推測される映像が流れました。

次回(第5話)の予告を、Hpでみると

「そんな折、貞夫(筒井道隆)の店を訪れた和哉は、会話の途中、突然倒れてしまうのだった。その話を聞いた恵太朗は、聡子に内緒で独自に和哉のカウンセリングを始める。やがて和哉の衝撃的な過去が明かされるのだった。」

 聡子のところに戻ってきたのは、戦場のトラウマにによって、カメラがもてない、写真が撮れなくなっているんでしょうね。トラウマ反応は、だれにでも起こる当然な反応ですが、その反応が消失せずに、持続して、日常生活を阻害するときに、PTSDと診断されますね。報道写真が命の和哉が写真がとれないというのは、日常生活を阻害していますし、再体験症状(フラッシュバックや悪夢)と回避(カメラがもてない)があるので、PTSDでしょうね。PTSDに移行する2つの要因-回避と否定的認知-とすれば、「衝撃的な過去」というのは、自責感情をともなう出来事ではないかと推測してしまいます。自分のせいで、だれかが死に至ったという文脈でしょうね。

 臨床心理士の恵太朗のカウンセリングのみでは、PTSDが治癒せず、聡子の精神療法で、治って、ふたたび、戦場に旅立つ、というストーリーを予測してしまいますね。

ps.第1話で、精神科医は診療時間が長くとれないので、という場面がありましたので、聡子が直接、精神療法をするというのは、現実的ではないですね。PTSDの心理療法・精神療法は、60分の面接時間の枠では、なかなかむつかしいですから。長時間曝露も、EMDRも1セッション90分はかけますよね。まだ、知られていないイメージ動作法もそうですね。脚本家の橋部敦子さんが、どこまで、PTSD治療を調べているかですね。PTSDの症状の描き方は、よく調べていると思いますよ。悪夢の場面もありましたよね。問題は、治療ですね。第4話では、なりたい自分のイメージを提案していましたから、ブリーフセラピーのトレーニングは受けているようですね。でも、どうなんでしょう、トラウマセラピーのトレーニングは受けていますかね。

さて、長時間曝露療法が登場するのか、EMDRなのか、興味津々ですね。

精神科医と臨床心理士がなかよく仕事をしているドラマは、好感がもてますね。

ドラマのなかで、「臨床心理士は国家資格ではないんだよね。一部の医療団体が反対していて、国家資格法案が上程できずに、とまっているんだよね」なんて、いってくれたら、インパクトがあるのになー、なんて思いながら、みています。

ps.2008.5.4 加筆しました。

ps.2 家内の推測ですが、アフガンの写真集にでてきた少年の写真、あの少年が、和哉に近づいてくるところで、殺害されたのでは?それで、自責感を抱えて、PTSDに移行したのではないかというのですが。どうでしょうね。

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2008年4月 6日 (日)

岡山突き落とし殺人事件の少年の過去2

岡山突き落とし殺人事件の少年の心がどうすれば救われたのか、二度と繰り返さないためにも、考えてみたい。

震災、いじめ、進学・・・翻弄された18歳の逃避行の果て」(MSN産経ニュース)からの限られた情報からの推論であることをお断りしておきたい。

推論:つらい感情に蓋をし続けた結果、回避行動を繰り返した末の行動化である。

1,阪神大震災で尼崎で被災、大阪に転居。

 当時の光景が思い浮かぶ。それは、被災地という非日常の空間と、隣接する日常の空間の違和感である。大阪(大阪でも豊中などは被災したのであるが)や姫路と、被災地のあまりにかけ離れた光景である。被災した人が、被災していない空間に身をおけば、心が癒されると考えがちであるが、それは違う。もちろん、余震などがない安全な空間は一時的には、安心感を与えるであろう。しかし、そこでは、被災体験でのさまざまな感情を、心の中に留めざる得ない。周りのものは、誰一人として、その気持ちをわかりえないからである。

 被災から4年後、被災していない地域でスクールカウンセラーをしていたときのことである。被災地からの転校生が、友だちといっしょに相談室にやってきた。転校生は、地震のときの死ぬかもしれないと思った恐怖をさらっと語った。生徒の友だちは、「へー、まだ、そんなことおぼえとるん」という言葉に、<忘れられない記憶なんだよ。しっかり聴いてあげてね>と言った記憶がある。

 被災地に身を置き、復興を共に経験していれば、折々に、つらかった気持ちを友や大人たちに語ることができたであろう。

 もし、今後災害が起こって、転校していく児童生徒がいれば、その後の心のケアを息長く続けなければならないということを、この事件は教えてくれている。

少年は、事件を起こす直前、尼崎に立ち寄っていたらしい。

朝、大阪の自宅を出た動機は「どこかで人を殺そう」。

 そして大阪・梅田をぶらぶらしたあと、幼少時を過ごし、震災まで住んでいた兵庫県尼崎市に入った。この間の詳細は分かっていないが、ゲームをしたり持っていた小説を読んだり、少年はまるでこの町の住人のように振る舞っている

なんとも切なくなる。

2.いじめられ遠い高校へ通う

「めちゃくちゃされてきたから、仕返ししたる」。一度だけこう話すのを聞いたが、「そんなことしたらあかん」と諭すと、納得したように見えたという。

 それは、諭して処理できるような感情ではない。このような子どもたちにかかわってきた者なら、その感情がどれほどエネルギーをもっているかを知っている。繰り返し繰り返し恨み辛みを語る内に語り方が変わっていき、今度同じようなことをいわれたりされたら、今度はこう対処してみる、といった望ましい対応のイメージを語れるまで、つきあわなければならない。

「仕返ししたる」という感情を、このとき、処理できていれば、今回の行動化は起こらなかったであろう。しかし、そのことで、両親を責めることはできないだろう。それは、わが国の心のケアの理解にかかわっているからである。(「心のケアの専門家」なんていらない」という本が注目されたり、心のケアは重要といいながら、30%もの予算削減をしてしまう国だから。)

小・中といじめにあい、同級生のいない遠くの高校へ通った。これも、つらい感情に蓋をして、今のみを生きたのであろう。

 ここでも、つらい感情に蓋をして、回避行動を選択することを、まわりの大人も少年に強いてきたのである。転校すれば、すべてが解決すると考えるのは誤りである。転校して安全で安心な生活が送れれば、もちろん、それで、人生を変えていける人もたくさんいるだろう。しかし、心のなかのわだかまり、深い心の傷がなくなったわけではない。順風に進んでいるときはいいが、再び嵐に遭遇すると、過去の傷がよみがえる。

 大切なことは、回避することではなく、再び同じようなことが起こったなら、今度はこう対処するというイメージと行動の明確化である。だから、回避している場所・人にチャレンジをしていく。それには、いきなりでは、打ちのめされてしまうので、段階的練習(実生活内曝露)が必要なのである。

 回避行動のパターンを身につけてしまうと、つらい感情を抱えているという自覚や意識すらもてなくなる。ベトナム退役兵士が戦争トラウマを回避し生活し続けて、本人は相談行動を起こさないのだが、その子どもに多くの問題が発生しているという論文を読んだことがある。

 つらい感情を閉じこめ回避行動をとることは、一時的にはよい対処であっても、長期的には、生活を阻害し、問題行動を発生させる確率を高くすることを、広く知ってもらう必要がある。これが、「心のケア」の知識である。

(「「心のケアの専門家」なんていらない」と主張している人の本を読んでみると、

心のケアの知識 (特に、回避反応の意味は言及されていない。身近な人が心のケアができるというところは同感するが。これまでにない危機に遭遇すると身近な人もどのように接して良いかわからなくなるというのが実際である。その本の著者らは、そのようなケースに遭遇したことがないのだろうかと思ってしまう)

をもっていないことがわかる)

#8人殺傷事件のニュースをみての父子の会話から親子関係の問題が推測できる。

事件前日の24日夜、自宅で食事中、茨城県の連続殺傷事件のテレビニュースを見ながら、「こんなことするなよ」と声を掛けると、「うん」とうなずいたという。」

父はこの少年を信頼していなかったことがわかるやりとりだ。これは、「心のケア」のあり方を知らない無知から起こっている。この少年の気持ちを代弁しているブログをみつけたので、参考にしてほしい。

八人死傷をみてこんなことするなよと。

 いじめ意識尺度の結果もそうだが、いじめを経験した人だけが、心身反応を知っているというのは、よくない。心のケアとは、傷ついた人はどのような心身反応を示しやすく、どうすれば回復できるのかを、心理学・精神医学の最新の知識によって、提供することである。

 事件後の心のケアは、みえない暴力との闘いである、「心のケア」はやさしげな言葉だが、実際は、闘いであることを、知ってほしい。どこかで、暴力の連鎖を断ち切らないといけない。戦後、同和教育の浸透が、人権意識を変えていったように、いまこそ、正しい心のケアの知識と体験の普及によって、暴力の連鎖を断ち切るときである。文科省の平成20年度の予算をみると、「心のノート」の全面改訂が予定されているという。

 人が悲しみや怒りを抱えたとき、どうしたらいいかを是非、新しい「心のノート」には掲載してほしい。

 二度と悲しい事件を繰り返さないために、できることをやっていこう。

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2008年3月17日 (月)

悲しみの社会で グリーフケアのいま(神戸新聞の連載)

神戸新聞は、「悲しみの社会で グリーフケアのいま」という特集をはじめています。

とても、いい企画なので、みなさん読んでください。

初回は、JR事故のご遺族と治療にかかわってこられた神戸日赤の村上典子医師のお話。

2回目は、こころのケアセンターの加藤寛医師の曝露療法のお話。

私は、事故のトラウマそのものへのチャレンジ(曝露)へは、日常生活でのさまざまな不快な出来事に対する心身反応のコントロールとアサーティブな主張ができるように支援したのちに、行った方が安全であると思います。

11才-20才のPynoosらのプログラムのスライドをみても、はじめの6セッションは、トラウマや喪失の心理教育と不快な思考へのチャレンジなどで構成されていますね。

CLA Trauma-Grief Focused Treatment Program for Adolescents (TGFT) Christopher M. Layne William R. Saltzman Robert S. Pynoos

そしてなにより、故人との対話ができるようになることが、生活を阻害するさまざまな症状(不眠・食欲不振・不集中など)から解放されていく鍵になるのではないかと思います。

決して、「さようなら(Saying goodbye )」を言えることではないと思うのですが。

最近、喪失からの回復(?)の紙芝居を作りました。研究室の稗田さんが、絵が上手なので、描いてもらいました。お話は、「(そらちゃん)なんで写真なの!」からはじまります。

そのうち、ブログにupします。

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2007年12月23日 (日)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア4-助かった人の罪悪感

「なぜ私は逃げた」助かった人に罪悪感、乱射の傷深く(読売新聞;2007/12/22)

 長崎県佐世保市のスポーツクラブで水泳インストラクター倉本舞衣さん(26)ら2人が殺害された散弾銃乱射事件で、当時施設内にいた会員らから、助かったことへの罪悪感にさいなまれる「サバイバーズ・ギルト」(生存者の罪悪感)を訴える声が出ている。専門家は「罪悪感を心の中に押し込めて自分を傷つけたりせず、信頼できる人に悩みを打ち明けてほしい」と呼びかけている。

 事件当時、プールに入ろうとした際に銃声を聞き、避難した市内の自営業男性は「倉本さんは子供をかばおうとしたのに、自分はなぜ、自分の安全だけを考えて逃げたんだろう」と悔やんでいる。

 事件から1週間が過ぎた今も、倉本さんの笑顔や、避難した時の状況が繰り返し思い起こされ、仕事が手に付かないという。

 また、事件の1時間前まで倉本さんから水泳を習っていた市内の中学2年と小学6年の兄弟は、不意に「夢だったらいいのに」とつぶやき、不安定な精神状態が続いている。

 母親によると「先生が撃たれたのは、ぼくらがレッスンで注意を守ろうとしなかったせいだ」と自分を責めて泣きじゃくっているという。

 事件事故の被害者のカウンセリングに取り組んでいる冨永良喜・兵庫教育大教授(臨床心理学)は、兄弟のケースのように自責の念にかられる心理もサバイバーズ・ギルトに当たると指摘し、「理不尽で耐えがたい苦痛を受けた時、自分に原因を見いだして納得しようとするのは当然の心理現象だ」と語る

 トラウマを体験すると、過覚醒(身体が危険に全力をあげて立ち向かうため興奮水準をあげること、危機が過ぎ去っても興奮緊張は続く)、再体験(ありありとその場面が浮かび、まさに今体験しているように感じる、フラッシュバックと悪夢)、回避マヒ(思い出させる刺激を避ける)の3つの反応が引き起こる。再体験と回避マヒは、凍りついた記憶のあらわれ。それと同時に、否定的な認知(negative cognition)が、心の中に浮かんでくる。マイナスのつぶやきである。そのマイナスのつぶやきの一つが、「生き残った者の罪悪感」である。

 このマイナスのつぶやきを、心のなかに抱え込むと、そのつぶやきが刺激となって、前向きに生きようとする気力を削いでいく。

 まずは、そのつぶやきを声にして、開いてみること。しっかり聴いてもらい、「そうじゃないよ。あなたが悪のではないよ!」と繰り返しいってもらう。しかし、そのメッセージは、なかなか身体のなかに、しみこんでこない。だけど、マイナスのつぶやきをしっかり聴いてもらい、「そうじゃないよ、あなたが悪いのではないよ!」と言ってもらううちに、少しずつ、自分のつぶやきが、そうじゃないということがわかってくる。

 このマイナスのつぶやきこそが、PTSDなどのストレス障害を持続させる一つの要因といわれている。長時間曝露療法(Prolonged Exposure Therapy)は、出来事に向き合い、その出来事を語る中で、マイナスのつぶやきが、払拭されるという。一方、トラウマの認知療法やEMDRは、まさに、このマイナスのつぶやきを、取り扱う。

 私は、マイナスのつぶやきを他者に開いた時点から、そのつぶやきが、「正しくない、そうではない」ということの作業がはじまっていると思う。

 この事件では、犯人がストーカー行為の最悪の結果として、このようなことを引き起こしたということがあきらかになってきつつある。そのことも、伝えてあげたらいい。

 子どもには、ストーカー行為ということを、やさしいことばで伝えることは、非常に、むつかしいかもしれない。子どもは「『人を好きになって、それで人を殺してしまう』なんて、どういうことなの?」というだろう。

 犯人は、人を好きになること、愛することが、人を思い通りにすること、支配すること、と思って育ってきたのだろう。このような不幸が起こらないためには、銃の正当な規制と同時に、人を愛するということはどういうことなのかといった心の教育を、すすめていかなければならない。

 心のなかに浮かんでくるつぶやきを、他者に開き、自由に、意見を交わしながら、生き残った者の罪悪感を、払拭してもらいたい。

 心のケアは、ただたんに、やさしく声をかけてあげることではない。

 事件後の心のケアは、暴力との闘いである。

 私たちは、決して、暴力に、屈するわけにはいかない。

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2007年12月20日 (木)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア3-忘れることは解決にならない

事件現場を目撃した女性が、「忌まわしい記憶を封じ込めるのでなく、真実を伝えることこそが自分の救いになると思った。どうか正しく伝えてください」と記者に語ったという。

つらい真実 伝えたい 佐世保乱射 現場目撃の女性 「忘れるのが解決ではない」(西日本新聞;20071219)

夜になると、男の姿がよみがえって眠れない。16日、犠牲になったインストラクター倉本舞衣さん(26)の葬儀から帰るとひどい頭痛がして寝込んでしまった。その間、再取材を求める記者からの電話があった。
 夫は、取材に応じず忘れるよう言ってくれた。ただ、男がプールに入ってくる過程は自分しか見ていないと思う。男が散弾銃を撃ちながら侵入した、という当初の報道も気になった。倉本さんが亡くなった状況が正しく伝わらないことを見過ごせなかった。電話の着信番号から記者にリダイヤルした。「話した方が楽になる」とも思った。

 ※ ※

 何が目的だったのか、男の心の闇は知るよしもない。しかし、発砲音がしてプールに子どもを助けにいったとき、恐怖心を感じなかった自分の心の強さには気付いた。
 「忌まわしい記憶を封じ込めるのでなく、真実を伝えることこそが自分の救いになると思った。どうか正しく伝えてください」
 女性は記者にそう告げた。

=2007/12/19付 西日本新聞夕
刊=

 トラウマの記憶は、決して忘れることができない記憶なので、この女性のように、つらい記憶を語る方が、さまざまな反応をおさめていくことにつながるのです。

 ただし、語るときに伴う感情が大切です。「冷静に語れる自分は、なんと冷たいのだろう」と思ってしまうこともあります。しかし、あまりにショックが強いときは、心をマヒさせて、心を守る防御反応が発動されますので、感情が伴わないというのも、自然な反応なんです。

 警察の事情聴取や記者さんへの語りは、どうしても、事実の聞き取りに、力点が置かれます。語る人も、なるべく感情を抑えて語ろうとしてしまいます。ですから、聴き取る人も、このような仕組みを知って、「ご自分のペースでお話ください」「怒りや悲しみの気持ちがわきあがっても自然ですよ」「つらいことをお話いただきありがとうございます」といったねぎらいや伴う感情に配慮しながら、聴いてほしいと思います。

 あれほどの出来事を経験したのですから、男の姿がよみがえるフラッシュバックが起こるのは当然な反応と思ってください。むしろ、つらい記憶を、心の外に解き放つ一つの過程なんです。

 この女性の方の真実を伝えることへの勇気に、エールを送りたいと思います。さまざまな反応がおさめられていきますように。

 そして、マスメディアの方々には、「忘れようとすることではなく、つらいけどもその記憶に向き合うことが、長期には、回復に大きな力を与える」という知識を、ぜひ、伝えてほしいと思います。ただし、その語りには、主体性がなければなりません。外力によって、「語らせる」ことは、主体性を奪い、逆に、傷を深めることも、伝えてほしいと思います。

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2007年12月18日 (火)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア2-明るくふるまう・一切話さない-それは反応ですよ

佐世保の銃乱射事件に遭遇した人は、自身の命の危険と 大切な命を奪われるという喪失の2つの出来事を経験していますので、トラウマ反応がPTSDなどのストレス障害に移行する率が非常に高いのです。

マスメディアでも心のケアの正しい情報を流してほしいのです。

佐世保・銃乱射 不安な登校日 子の心見えぬ傷 市の相談窓口に19件 「物音に敏感に」訴え(西日本新聞:2007/12/17) 

この記事に

ただ、事件発生時、クラブのプールにいた男児(7つ)の父が「(子どもは)何事もなかったように明るいが、本人も気付かない傷があるかもしれず不安だ。事件には一切触れないようにしている」と語るように、心の傷が時間を経て表面化することも懸念され、市教委は当面、カウンセリングを継続する。

=2007/12/17付 西日本新聞夕刊=

とあります。

この「なにもなかったように明るい」というのは、トラウマ反応の一つです。そして「一切触れないようにしている」というのは、直後はよいかかわりでも、それは、回避を促進するため、「つらい気持ちを心にため込む」ことになり、トラウマ反応が持続してしまうことにつながります。

これほどの恐怖・悲しみを体験したのですから、いろいろな心身の変化が起きて当然なんです。まず、その知識を提供してください。そして、望ましい対処についてのメッセージを送って下さい。

「心の傷が時間を経て表面化」というのも、なくはありませんが、直後の過覚醒(あかるくふるまう)や回避(話そうとしない)といった反応に気づけていないからなんです。すでに、いろんな反応が起きている方が自然なんです。そして、それに対して望ましいかかわり方があるんです。

事件のことを一切話そうとせずに、ハイテンションならば、

「こわいことを思い出して、つらくなったら、お父さんに(お母さんに)お話してね。お父さん(お母さん)が心配するから、話さないでいようって、思わないでね。お話すると気持ちが楽になることがあるのよ」

ハイテンションをやわらげるような体遊びやリラクセーションもいいでしょう。

「COPINGTOTRAUMA.doc」をダウンロード

「TIMEOFTRAUMAREACTION.ppt」をダウンロード

Timeoftraumareaction

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2007年12月15日 (土)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア

なんとも痛ましい事件が起こりました。

尊い命が、一人の身勝手な凶行によって、奪われたことに、つよい憤りを感じます。

お二人のご冥福を心よりお祈りいたします。

また、子どもを含む多数の方が、負傷されています。

この事件は、PTSDなどのストレス障害を引き起こす可能性が高いと考えられます。おそらく、保健所や臨床心理士による支援チームが結成されて、活動がはじめられると思います。長崎には、CRT(Crisis Response Team;危機対応チーム)が公的に組織されています。

犯人は自殺したと報じられていますので、今後は、心のケアに重点がおかれていくと思います。

喪失とトラウマへの対応が求められます。

なくなられたお一人は、インストラクターとして、多くの子どもたちの水泳指導をされていたようですね。直接その場にいなかった子どもも、喪失に対する強い反応を示すでしょう。

また、直接その場にいた人達は、トラウマを体験しています。今後、過覚醒・回避マヒ・再体験、という反応がひき起こるでしょう。なかでも、回避の反応は、一時的には、よい対処でも、それが長期に続くと、生活を阻害します。少しずつ避けていることにチャレンジできるように、周りの人もかかわりましょう。

兵庫、長崎と、どうして、大規模事件・事故が集中するのでしょうか。

正しい心のケアのあり方が市民に浸透しますように。

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2007年11月18日 (日)

はぐくむ防災力ー心のケアと防災教育

 私のゼミの修了生の磯野さんは、震災が教師にどのような影響を及ぼしているかを調査研究しました。内地留学を終えて、神戸の中学校に復帰されてから、生徒たちと、防災教育、心のケア、ストレスマネジメント教育に取り組んでいます。

 今年、8月-9月にインドネシアを訪問し、「災害とトラウマからの再建(Disaster and Reconstruction from Trauma)」というHp&Blogを作ろうと思ったんです。日本語・英語・インドネシア語で、特に、アジアの被災地の子どもたちが、交流できるといいなーと思っています。

 磯野さんのように、被災地(神戸)から被災地(新潟中越)へのお手紙の取り組みっていいですね。Hp&Blogができたら、ぜひ、参加してください!

記事を書いた幸長さんは、防災教育に理解のある記者さんです。いい記事にであうとほっとする今日この頃です。

はぐくむ防災力:須磨・飛松中3年、中越沖地震の被災地に手紙送る /兵庫

 

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2007年11月10日 (土)

マスメディアはそれぞれのフィルターをもっている

フィルターは、知識です。よきフィルターは、被災者や被害者の慟哭や悲しみの結晶かもしれません。
 しかし、思いこみや、衝撃のみを与えようとするフィルターもあります。
 昨日、加古川市役所にて、記者会見をしました。
 やはり、正確に、子どもたちのようすを含めて心のケアの現状を伝えたかったからです。事件から、もうすぐ、1ヶ月になります。犯人が未逮捕の状況下で、あれだけのメディアスクラムがあったため、子どもも保護者も、ほとんどがマスコミ・アレルギーになっているのではと思います。でも記者さんは、記事を書くのが仕事です。しかし、情報がない。そうすると、どうしても、個別の取材、戸別訪問がはじまります。やっと、静かな日々を送り出したのに、それでは、たまりません。それで、市教委は、情報を一元化して、だせる情報をだしてきたのだと思います。私は、心のケアチームのアドバイザーとして、リーフレットやアンケート・保護者の心のケア研修会・心の授業・担任による個別面談などを提案・担当してきました。そして、私は、保護者と児童とのカウンセリングにも従事してきました。この時期に、きっちりと、やったことと、子どものようすをプライバシーを損なわないように配慮して伝えたかったのです。
 でも、同じ記者会見を聞いていても、記事の構成が、神戸新聞(児童の落ち着き戻る 心のケア奏功)と読売新聞(加古川・女児刺殺・・・同年代心身の不安訴え)では、こんなに異なるのです。
 私たちが伝えたかった趣旨は、神戸新聞の内容です。

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2007年11月 9日 (金)

親が子の「カウンセラー」・・うーん、正確に伝えるためには・・・悩みますね

親が子の「カウンセラー」に 加古川・女児刺殺の小学校(朝日新聞)

20071108

 兵庫県加古川市の自宅前で刺殺された小学2年、鵜瀬柚希(うのせ・ゆずき)さん(7)が通っていた市立別府(べふ)小で、親自身が我が子の「カウンセラー」となって、子どもたちの心の支えになるよう促す試みが始まった。保護者を対象にした研修会を開催した同市教委は「なじみのないカウンセラーより、身近な大人が早い段階からどう児童に接するかが重要」と説明する。

 事件発生2日後の10月18日から、市教委は別府小と隣の別府西小にスクールカウンセラーを派遣。校内に設けられた専用の相談室に常駐させ、児童が相談できる態勢を敷いた。担任の教諭は、児童に「不安な気持ちや聞いてほしいことがあれば、相談室に行きましょう」と呼びかけているが、利用する児童は少ない。

 一方で、学校や市には、母親らから「子どもにどう接したらいいのかわからない」といった問い合わせが相次いだ。市教委は「大人が動揺すれば、子どもはますます不安になる。まず保護者を指導し、ケアしなければ」と発想を転換。保護者を対象にした「心のケア研修会」を別府小で10月24日に開催し、246人が詰めかけたという。

 研修会では、専門家が事件発生後の子どもの変調について、「受け入れがたい出来事を心の中に収めていくための道のり」と説明。(1)怖い気持ちがよみがえった時は話をしっかり聞いてやる(2)甘える時は添い寝して抱きしめる(3)死について尋ねたり、涙が止まらなかったりしたら一緒にお祈りする――などの対処法を紹介した。参加した2児の母親(34)は「言葉に出せなくてもそばにいてあげることが大切だとわかった」と話した。

 臨床心理士の冨永良喜・兵庫教育大教授は「子どもには身近な人による対処が効果的。特に低学年の場合、親の心が揺れていると子も不安定になる。保護者への早期の対応が必要だ」と強調する。

いくつか、正確でない部分があります。

>「なじみのないカウンセラーより、身近な大人が早い段階からどう児童に接するかが重要」

というのは、「なじみのないカウンセラー」は、児童とのカウンセリングは、向かないという印象を与えますよね。危機事態では、親も、教師も、カウンセラーも。。。みんなが力をあわせて、子どもを守る!ということが、大切なんです。メディアで発信するときは、多くは、2分法的な論調になってしまいます。「カウンセラーでなくて親が」といったくくり方です。これは、読者には、わかりやすい表現なんですが、事実として、正確ではないのです。

>担任の教諭は、児童に「不安な気持ちや聞いてほしいことがあれば、相談室に行きましょう」と呼びかけているが、利用する児童は少ない。

このことは、当初から予測できていたことです。だから、いろいろと工夫をして、児童ともかかわってきたんですよ。震災のときもそうでしたし、「相談室に自らすすんでいく子ども(おとな)」なんて、そうそう、いませんよ。だから、アウトリーチを積極的にやっているんですよ。うーん、詳細なことが、いま、書けないので、。。。

ただ、「親がわが子のカウンセラー」という見出しは、いいですよ。さすがに、記者さん!うまいですね。それと、最後の引用や、研修会で私がお話したまとめは、簡潔にまとめられていますね。

ここで、取り組みについて、詳しく書けませんから、一度、記者さんに、心のケアの全容をお話したいですね。

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2007年11月 3日 (土)

いのち

まわりからみれば、ぼーっと、なにもしてないようにみえる
しかし、こころは、どうして! なぜ! わたしが..と、といかける

どれくらいながく生きてきたか ということではなく
どれくらいふかくかかわってきたか ということ

すざまじい力がそこにある
そこにたちあい
なみだがながれる

心のケアということばは 心地よい響きをともなう
しかし、現実の心のケアは、暴力とのたたかい
わたしたちは、暴力に屈するわけにはいかない
この涙は、子どもたちがおとなになる時代への力に、きっとなる

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2007年10月27日 (土)

眠りのためのリラクセーション-漸進性弛緩法

 安全な場所では、安心を!

 人や動物は、活動と眠りを繰り返します。

 眠りは、活動のためのエネルギー補充でしょうか。

 Jacobson.E は、Progressive Relaxation を公刊しました(1929)。

いま、Progressive Relaxation(漸進性弛緩法)は、一流選手のメンタルトレーニングの方法として活用されています。

鹿児島大学の山中寛さんが、オリンピック選手のメンタルトレーニングとして、成瀬悟策先生から伝授された方法を簡便化したのが、つぎの方法です。

簡易漸進性弛緩法

  両手首をまげます。・・はい、リラックス。

  両足首をまげます。・・はい、リラックス。

  肩をあげて、背中に力をいれます。・・はい、リラックス。

  お尻・腰に力を入れて、・・はい、リラックス。

  顔に力を入れて、額、頬、顎に力をいれます。・・はい、リラックス。

  身体に一度、力を入れて、力をぬくと、ふわーっとして、リラックスできます。

  それでも、眠たくならなかったら、少しずつ、力を入れて、ぬきましょう。

  両手首をまげて、
  両足首をまげます。ほかはリラックスです。
    両手首に力を入れたまま、両足首の力を抜きます。
    両手首の力も抜きます。

    両手首をまげます。両足首もまげます。つぎに、肩を開いて背中にも力を入れます。
    両手、両足は力をいれたまま、肩・背中の力を抜きます。
    両手首に力を入れたまま、両足首の力を抜きます。
    両手首の力も抜きます。

    両手首をまげます。両足首もまげます。肩・背中にも力を入れます。腰・お尻に力を  いれます。
    両手、両足、肩背中は力をいれたまま、腰・お尻の力を抜きます。
    背中・肩の力を抜きます。
  両足首の力を抜きます。
  両手首の力も抜きます。

    両手首をまげます。両足首もまげます。肩・背中にも力を入れます。腰・お尻に力を  いれます。最後に、顔に力を入れます。奥歯をかみしめて目をぎゅっとつぶります。  これで、身体全部に力が入っています。
    両手、両足、肩背中、腰お尻は力をいれたまま、顔の力を抜きます。
    両手首、両足首、背中・肩に力を入れたまま、腰・お尻の力を抜きます。
    背中・肩の力を抜きます。
  両足首の力を抜きます。
  両手首の力も抜きます。

    全部の力が抜けました。ここからもっと力が抜けていきます。まだ、足に力が入って  いたなー、とか、身体のすみずみまで気持ちを向けることで、さらに、力が抜けていきます。それを、じっくり、味わいましょう。

  あ、肩に力がまだはいっている。そこをぬこうとしなくていいんです。そこが、楽になればいいなーと思ってください。・・・そういうふうに、身体のあちこちの緊張とお話します。

力が抜けるたびに、ねむたーくなっていきます。

あーもうねむりそうだ、と思ったら、『ぐっすりねむって、あすの朝○時にすっきりめがさめます』と自分にメッセージを送りましょう。すると、目覚ましが鳴る直前に、自分のペースで目が覚めます。

しかし、お布団の中でなくて、

  つぎに、なにかしなければならない時は、そのまま目をあけると、ぼんやりします。

 試合の直前だったら、「あがらなかったけど、もえなかった」ということになってしまいます。それで、「終了覚醒動作(すっきり動作)」を必ずしましょう!
                                                                              
{ 終了覚醒動作}  リラックスした状態から、気持ちをはっきりさせるために、      
   「両手をグーパーグーパーします。次に、肘をまげて伸ばして、脚も伸ばせたら伸ばしましょう。両肘を前に突き出すか、高く上げて、はっきりと目を開けましょう」

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2007年10月20日 (土)

加古川小2刺殺事件-防犯体制と心のケアの両輪で

9児童が心身の不調、本格対策へ…加古川・小2刺殺(読売新聞、関西版、2007/10/20)

同小が全児童約430人に配布した「心のチェックシート」に、9人の児童が心身の不調を記入していることがわかった。過去の事件・事故では時間が経過してからショック症状を訴える例も多く、同小では週明けの22、23両日、児童の心のケアを図る教員の研修などを行い、本格的な対策に乗り出す。

 市教委などによると、チェックシートは、子どもの睡眠状況や食欲など6項目について質問。事件発生翌日の17日夜の保護者説明会で配られ、症状が出た場合は同小に提出することになっている。

 18日はなかったが、19日になって低学年から高学年までの9人が相次いで提出。「ニュースを見ていて涙が止まらない」「嘔吐(おうと)が続いている」「ヘリコプターの音を恐れる」など具体的な症状が書かれていたという。

 反応をだせることは、よいことです。そこで、ヨシヨシしてもらう、介抱してもらう、そういった他者のかかわりが、安全な場所では安心できる感覚を取り戻していきます。

 トラウマの反応は、衝撃的な出来事のあとには、誰にでも起こる自然な反応です。反応をだすことで、受け容れがたいこの出来事を心のなかにおさめていくのです。