道徳教育と心の健康教育を考える-「負の感情」に向き合う力を(宮崎日日新聞)
来年度の文部科学省の概算要求をみると、「道徳教育の総合的推進」が掲げられている。趣旨は、
(1)我が国の児童生徒については、生命尊重の精神、自尊感情の乏しさ、基本的な生
活習慣の未確立、規範意識の低下、人間関係を形成する力の低下など、心の活力が
弱っているとの指摘がなされており、生命を尊ぶとともに、いじめを許さないとい
った規範意識等の確立の根底となる道徳教育の一層の充実が求められている。
ということだ。
これは、当然必要なことだが、一方で、「怒りや悲しみを抱えたとき人がどうすればいいのか?」といった「心の健康」にかかわる教育も必要だ。
ストレスマネジメント教育を学んだ教員が、学校で、よい実践を展開している。さきほど、私のゼミの修了生で小学校の教諭のT先生が報告してくれた。T先生の地域は、家庭力が乏しく、これまで問題行動が多発していた。しかし、ストレスマネジメント教育をはじめて以来、「校内暴力が減った」「校内のガラスの破損が減った」「遅刻する児童が減った」「授業中に離席がなくなった」と報告してくれた。「人間関係プログラム」と名づけて、道徳よりも「特別活動」で展開しているようだ。
来年度、組織的に、効果検証のプロジェクトを、発足させたい。いっしょに展開したい教諭・スクールカウンセラーは、プログラム(授業ごとに、教師やスクールカウンセラーの子どもへの発問、予想される子どもの応答・反応、ワークシート、アンケートなど)をメールでお送りするので、申し出てほしい。
わが国も、イギリスのように、心の健康教育のエビデンスをだして、政府に、提案する時期にきている。
宮崎日日新聞が、道徳教育だけではだめだよと、社説で提言している。
「日本の教育を、どげんかせんといかん!」そう思う。
「負の感情」と向き合う力を(宮崎日日新聞・社説 2008年11月27日)
過去最多の5万2800件。この数字は昨年度、全国の国公私立の小中高校生が学校の内外で起こした暴力行為の件数である。文部科学省の調査で分かった。
小学校が前年度比37%増の5200件、中学校も同20%増の3万6800件だった。
生徒間暴力が同22%増の2万8300件に上っている。
自分の感情をコントロールできず、言葉より先に手が出る、そんな傾向が強まっているという。
対人関係能力は他者と社会で共生するための土台である。その感情が身についていない子どもの増加は社会の危機に直結する。
■心に「ピン」とこない■
負の感情、つまり怒りや悲しみ、不安や憎しみなどは誰もが抱えている。
暴力行為の増加はそうした感情を言葉で処理できず、そのまま他者にぶつける傾向が強まったことを示す。
感情を抑制する力は他者とかかわる体験を通してはぐくまれる。
幼児期に怒りなどの感情を他者にぶつけ、それを親などに受け止めてもらうことで次第に感情を抑えられるようになるという。
道徳教育を強化しても、その土台となる共通の基盤が育っていなければ規範を説いても心に「ピン」とくるはずがない。
少子化や地域の崩壊で、失われた子どもの対人体験の機会や場をどうつくるか。学力問題以上に取り組むべき課題である。
いじめの問題も根っこを同じくする。
今回の調査では、いじめ件数は前年度から2万3700件減り、10万1100件となった。しかし、依然として相当な数である。
■件数に一喜一憂せず■
いじめは、対人関係で傷つき、抱えたストレスを手っ取り早く解消する手立ての一つだという。つまり、対人関係能力が低下するほどにいじめははびこる。
子どもが集団で過ごす学校で、ストレスと無縁でいることは難しいだろう。ストレスを抱えたとしても、それを他の子どもに向けないで済ますことができる力をつけさせることが大切だ。
また、学校が認知したいじめ件数の増減に一喜一憂するのはやめたい。前年に比べて減ったとしても認知できなかっただけかもしれない。今回の文科省の調査でも、アンケート、家庭訪問、個人面談など実態把握に積極的に取り組んだ学校ほど認知件数が多くなるという結果が出ている。
「加害者を厳しく罰せよ」という声もあるが、いじめは被害者と加害者が頻繁に入れ替わることもあって特定の子どもを対象にした指導には限界がある。
インターネットを利用したいじめのように加害者の割り出しが困難なケースも多い。
処罰や規範教育を強化するだけでは感情やストレスを封じ込めるだけで、かえって暴力もいじめも増える結果に終わりかねない。
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