「心のノート」は「道徳ノート」-わが国も「心理健康教育」の導入を!
私は、これまで、道徳に、「怒りのコントロール、ストレスマネジメント、ソーシャルスキルトレーニングなど」をいかに組み込むかということを考えてきた。「心のノート」は、そういった活動をいれるチャンスだと思っていた。
しかし、その考えが基本的に間違っていることに、四川大地震後の被災地での「心理健康教育」の授業をみて、気づいた。
「心のノート」の改訂に伴い「なぐるな、盗むな、殺すな!」というページが盛り込まれるらしいが、それは道徳規範からすれば、当然のことである。改訂前の「心のノート」にそれがなかったことの方が不思議だ。しかし、家で虐待的養育を受けている子どもに「なぐるな!」とメッセージを送っても、効果は乏しいだろう。一方で、怒りの感情とのつきあい方を学ぶ機会や暴力がどのような心理的身体的影響を及ぼし、どうすれば回復できるのかを、子どもにわかることばで、ロールプレイやリラクセーションなどの体験をとおして、教えていかなければならない。
「心のノート」は「道徳ノート」であり、「心理健康教育ノート」ではないのだ。
「べき論」の道徳は必要だ。だから、私は道徳教育を否定するつもりはまったくない。
一方、怒りの感情を抱えたとき、人を傷つけずに、その気持ちを表現する方法があるのだということを体験的に子どもたちは学ばなければならない。それは、「心理健康教育」が担うべきであろう。ロールプレイやリラクセーションは臨床心理学や心理学が基盤として学問が発展してきている。
だから、「道徳」と「心理健康教育」の2本柱で、子どもの心の成長を支援し、その基盤の上に、教科教育の充実が求められるのだろう。
英国では、「他人を尊重することや、感情コントロールの方法などを学校活動全体を通して教える体制・環境をつくろうとする政策、Seal (Social and Emotional Aspects of Learning) Programme」が着々と普及している。英国政府は、2011年にはすべての小中学校に導入することを目標としているらしい。
中国は、もともと、「道徳」とは別に「心理健康教育」という授業が、地震前からあったのだ。
その点日本はどうだろう。「心の健康教育」は、保健体育で一部教えられているだろう。しかし、そういった扱いでは、全児童生徒への展開はむつかしい。
文部科学省は、諸外国の動向を調査し、早い時期に、「心理健康教育」プログラムを全児童生徒へ導入してほしい。
そのためには、心理健康教育が担える教師を養成し、常勤で配置してほしい。そして、予防的な心理健康教育が展開すれば、教育相談への敷居も低くなり、学校臨床心理士(スクールカウンセラー)への相談へとつなげることができるだろう。
もちろん、スクールカウンセラーは、全員、「心理健康教育」の授業ができることが求められるのはいうまでもない。でないと、心理健康教育教師へのスーパービジョンができないからである。
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