読売新聞・教育ルネッサンスに、兵庫教育大学院を修了し臨床心理士を取得し、通級指導教室で活躍している古川かよさんが紹介された。
古川さんの修論について、一部相談を受けたものとして、たいへんうれしく思う。
9月5日に、日本心理臨床学会自主シンポジウムで、臨床心理士資格をもつ現職教師の集いがもたれた。教師とスクールカウンセラーの共同がテーマだった。
私は、日本のスクールカウンセリング事業は、大きな転換点を迎えていると思う。週5~6時間というきわめて短い時間の勤務体制とともに、当初週8時間ではじまった事業がいつのまにか短縮されているという現実をどう考えるのか。本年度、予定されていた50億円の事業予定が、15億円削減され、それとほぼ同等額がスクールソーシャルワーク事業にあてられた。スクールカウンセラーは、家庭訪問をしない、虐待対応ができていない、と文部科学省も財務省も考えているという結果との推測をせざるえない予算措置である。
しかし、スクールカウンセラーは、家庭訪問もすれば、虐待対応もやっている。(すべてとはいえないかもしれないが、都道府県によって差異があるかもしれないが。それは至急全国規模調査を実施する必要があろう。)
いじめによる自殺が社会問題となった2006年には、年度末に、スクールカウンセラー予算が増額した。そして、本年度大幅削減。もう、こういった目先の教育施策はやめてもらいたい。10年、20年を見据えた教育施策を打ってほしい。
この機会に、いくつかのタイプのスクールカウンセラーを配置する必要がある。
ひとつは、教師で臨床心理士を取得している者で、古川さんのように、専従の教育相談についている人の実態を明らかにしてはどうだろう。
私が知っている範囲でも、適応指導教室の中心的役割を果たしている人、県・市の教育センターで活躍している人、たくさんいる。
日本も、スクールカウンセラーの一部常勤化を検討してみてはどうだろう。すべて常勤にするのがいいとは思わない。医療に勤務しながら週1日地域のスクールカウンセラーを務めるのも、医療との連携ができて貴重だからだ。しかし、週5-6時間では、あまりに短い活動時間ではないだろうか。少なくとも、一日8時間勤務に戻していただきたい。不登校の生徒がスクールカウンセラーに会いに登校したが、スクルカウンセラーがいなかったので、学校から電話があり、勤務外だったけど、すぐに学校に駆けつけたというスクールカウンセラーがいることも聞いている。
国会議員の先生方は、この現実をご存知なのだろうか?
心を大切にする、といいながら、全校配置をすすめるといいながら、スクールカウンセラー事業が実質後退していることを、もっと声をあげなければならないと思っている。
もちろん、うまく機能できていないスクールカウンセラーもいるだろう。もう来年は、このカウンセラーには来てほしくない、ということもあるだろう。それは、きちんとした評価システムを作り、子どもたちの利益になるように仕組みを整えていかなければならない。
安定したスクールカウンセリング事業を展開するためにも、臨床心理士の国家資格化は急務だと考える。
党派を超えて、子どもの心の教育の充実施策を展開してほしい。次期、衆議院選挙では、臨床心理職の国家資格の実現に力になってくれる人に一票を投じたい。
以下、読売新聞の記事です。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080905-OYT8T00222.htm
(9)子供の心「じっくり聞く」
通級指導教室用の「職員室」で、電話相談を受ける古川教諭(小部小で) 大学院で震災後の子供たちを追跡調査した教師がいる。
神戸市北区にある市立小部(おぶ)小学校の通級指導教室。近隣の小学校を含む通常の学級に通う発達障害や情緒障害の子供たち約40人が、週に数回、必要な支援を受けに訪れる。指導にあたる4人の教員のうちの1人が古川香世教諭(44)だ。3年前から担当している。
子供たちと1対1で接することもあれば、指導教室の隣にある専用の“職員室”で、電話での教育相談にのることもある。じっくり、ゆっくり話を聞き、それぞれにあった対応を考える。早合点して、型にはまった判断をしないようにするためだ。「以前は、教室に行きたがらない子を、問答無用で『甘えるな~!』って、引きずってでも、教室に連れて行くタイプだったんです」と苦笑いする。
◎
小学校の免許も持っていたが、長く中学校の社会科教師として過ごした。2003年度から2年間、兵庫教育大(兵庫県加東市)大学院で臨床心理学を学び、修了後に臨床心理士の資格も取得した。
進学のきっかけは、様々な問題を抱える子供たちの心を理解したいと思ったからだ。ずっと気になっていたことがあった。阪神大震災で被災した元教え子たちのその後だ。大学院では、その追跡調査に取り組んだ。
震災が起きた1995年当時、神戸市灘区の市立鷹匠中学校で1年生の担任だった。受け持ったクラスの教え子1人が亡くなり、残された36人の生徒も被災。避難所や引っ越し先で暮らす生徒に学級通信を届けるなど、精いっぱいのことをしたつもりだった。
面接のため、9年ぶりに元教え子26人と再会した。すっかり成長した姿に、時には涙を流しながら、震災でつらかったことや、してほしかったことを聞き取った。「友達が死んだのに泣けなかった」「悲惨な光景にわくわくしてしまった」と自分を責めたり、「転居先でのケアがつらく、元の学校の先生と話したかった」と話したり。思いもよらなかった内面を知った。
「みんな悲しいだろう、つらいだろう」「被災地から離れた子はひとまず安心だ」と思い込んでいた自分を振り返り、無力感に襲われた。
◎
衝撃的な出来事に直面すると、感情のマヒが起きるのは正常な反応であると伝え、一斉指導よりも個別指導で必要な言葉をかけていれば、もっと早く心を軽くしてあげられた――。大学院で学んだ臨床心理の知識と研究のおかげで、子供の心を知ろうとする気持ちはさらに強くなった。
災害や事件が起きるたびに、巻き込まれた子供たちのことを思う。「それぞれに必要なモノが分かるのは一番身近にいる担任。どうかたくさん話を聞いてあげてほしい」
現在、担当する通級指導教室の子供によく手紙を渡す。「昨日は、ふざけてばかりいたからしかっちゃったけど、理由があったんだってね。知らなくてごめんね」。お互いの気持ちを通わすために、手間は惜しまない。(大広悠子、写真も)
臨床心理士 心理・臨床に関係のある16の学会が作った財団法人日本臨床心理士資格認定協会が、1988年から認定試験を実施している。受験資格は、原則として協会が指定する大学院の修士課程を修了した人に限られる。5年ごとに研修を受けるなどした上で、資格の更新が必要。2007年現在、1万6732人が認定を受けている。
(2008年9月5日 読売新聞)
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