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2007年12月23日 (日)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア4-助かった人の罪悪感

「なぜ私は逃げた」助かった人に罪悪感、乱射の傷深く(読売新聞;2007/12/22)

 長崎県佐世保市のスポーツクラブで水泳インストラクター倉本舞衣さん(26)ら2人が殺害された散弾銃乱射事件で、当時施設内にいた会員らから、助かったことへの罪悪感にさいなまれる「サバイバーズ・ギルト」(生存者の罪悪感)を訴える声が出ている。専門家は「罪悪感を心の中に押し込めて自分を傷つけたりせず、信頼できる人に悩みを打ち明けてほしい」と呼びかけている。

 事件当時、プールに入ろうとした際に銃声を聞き、避難した市内の自営業男性は「倉本さんは子供をかばおうとしたのに、自分はなぜ、自分の安全だけを考えて逃げたんだろう」と悔やんでいる。

 事件から1週間が過ぎた今も、倉本さんの笑顔や、避難した時の状況が繰り返し思い起こされ、仕事が手に付かないという。

 また、事件の1時間前まで倉本さんから水泳を習っていた市内の中学2年と小学6年の兄弟は、不意に「夢だったらいいのに」とつぶやき、不安定な精神状態が続いている。

 母親によると「先生が撃たれたのは、ぼくらがレッスンで注意を守ろうとしなかったせいだ」と自分を責めて泣きじゃくっているという。

 事件事故の被害者のカウンセリングに取り組んでいる冨永良喜・兵庫教育大教授(臨床心理学)は、兄弟のケースのように自責の念にかられる心理もサバイバーズ・ギルトに当たると指摘し、「理不尽で耐えがたい苦痛を受けた時、自分に原因を見いだして納得しようとするのは当然の心理現象だ」と語る

 トラウマを体験すると、過覚醒(身体が危険に全力をあげて立ち向かうため興奮水準をあげること、危機が過ぎ去っても興奮緊張は続く)、再体験(ありありとその場面が浮かび、まさに今体験しているように感じる、フラッシュバックと悪夢)、回避マヒ(思い出させる刺激を避ける)の3つの反応が引き起こる。再体験と回避マヒは、凍りついた記憶のあらわれ。それと同時に、否定的な認知(negative cognition)が、心の中に浮かんでくる。マイナスのつぶやきである。そのマイナスのつぶやきの一つが、「生き残った者の罪悪感」である。

 このマイナスのつぶやきを、心のなかに抱え込むと、そのつぶやきが刺激となって、前向きに生きようとする気力を削いでいく。

 まずは、そのつぶやきを声にして、開いてみること。しっかり聴いてもらい、「そうじゃないよ。あなたが悪のではないよ!」と繰り返しいってもらう。しかし、そのメッセージは、なかなか身体のなかに、しみこんでこない。だけど、マイナスのつぶやきをしっかり聴いてもらい、「そうじゃないよ、あなたが悪いのではないよ!」と言ってもらううちに、少しずつ、自分のつぶやきが、そうじゃないということがわかってくる。

 このマイナスのつぶやきこそが、PTSDなどのストレス障害を持続させる一つの要因といわれている。長時間曝露療法(Prolonged Exposure Therapy)は、出来事に向き合い、その出来事を語る中で、マイナスのつぶやきが、払拭されるという。一方、トラウマの認知療法やEMDRは、まさに、このマイナスのつぶやきを、取り扱う。

 私は、マイナスのつぶやきを他者に開いた時点から、そのつぶやきが、「正しくない、そうではない」ということの作業がはじまっていると思う。

 この事件では、犯人がストーカー行為の最悪の結果として、このようなことを引き起こしたということがあきらかになってきつつある。そのことも、伝えてあげたらいい。

 子どもには、ストーカー行為ということを、やさしいことばで伝えることは、非常に、むつかしいかもしれない。子どもは「『人を好きになって、それで人を殺してしまう』なんて、どういうことなの?」というだろう。

 犯人は、人を好きになること、愛することが、人を思い通りにすること、支配すること、と思って育ってきたのだろう。このような不幸が起こらないためには、銃の正当な規制と同時に、人を愛するということはどういうことなのかといった心の教育を、すすめていかなければならない。

 心のなかに浮かんでくるつぶやきを、他者に開き、自由に、意見を交わしながら、生き残った者の罪悪感を、払拭してもらいたい。

 心のケアは、ただたんに、やさしく声をかけてあげることではない。

 事件後の心のケアは、暴力との闘いである。

 私たちは、決して、暴力に、屈するわけにはいかない。

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2007年12月20日 (木)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア3-忘れることは解決にならない

事件現場を目撃した女性が、「忌まわしい記憶を封じ込めるのでなく、真実を伝えることこそが自分の救いになると思った。どうか正しく伝えてください」と記者に語ったという。

つらい真実 伝えたい 佐世保乱射 現場目撃の女性 「忘れるのが解決ではない」(西日本新聞;20071219)

夜になると、男の姿がよみがえって眠れない。16日、犠牲になったインストラクター倉本舞衣さん(26)の葬儀から帰るとひどい頭痛がして寝込んでしまった。その間、再取材を求める記者からの電話があった。
 夫は、取材に応じず忘れるよう言ってくれた。ただ、男がプールに入ってくる過程は自分しか見ていないと思う。男が散弾銃を撃ちながら侵入した、という当初の報道も気になった。倉本さんが亡くなった状況が正しく伝わらないことを見過ごせなかった。電話の着信番号から記者にリダイヤルした。「話した方が楽になる」とも思った。

 ※ ※

 何が目的だったのか、男の心の闇は知るよしもない。しかし、発砲音がしてプールに子どもを助けにいったとき、恐怖心を感じなかった自分の心の強さには気付いた。
 「忌まわしい記憶を封じ込めるのでなく、真実を伝えることこそが自分の救いになると思った。どうか正しく伝えてください」
 女性は記者にそう告げた。

=2007/12/19付 西日本新聞夕
刊=

 トラウマの記憶は、決して忘れることができない記憶なので、この女性のように、つらい記憶を語る方が、さまざまな反応をおさめていくことにつながるのです。

 ただし、語るときに伴う感情が大切です。「冷静に語れる自分は、なんと冷たいのだろう」と思ってしまうこともあります。しかし、あまりにショックが強いときは、心をマヒさせて、心を守る防御反応が発動されますので、感情が伴わないというのも、自然な反応なんです。

 警察の事情聴取や記者さんへの語りは、どうしても、事実の聞き取りに、力点が置かれます。語る人も、なるべく感情を抑えて語ろうとしてしまいます。ですから、聴き取る人も、このような仕組みを知って、「ご自分のペースでお話ください」「怒りや悲しみの気持ちがわきあがっても自然ですよ」「つらいことをお話いただきありがとうございます」といったねぎらいや伴う感情に配慮しながら、聴いてほしいと思います。

 あれほどの出来事を経験したのですから、男の姿がよみがえるフラッシュバックが起こるのは当然な反応と思ってください。むしろ、つらい記憶を、心の外に解き放つ一つの過程なんです。

 この女性の方の真実を伝えることへの勇気に、エールを送りたいと思います。さまざまな反応がおさめられていきますように。

 そして、マスメディアの方々には、「忘れようとすることではなく、つらいけどもその記憶に向き合うことが、長期には、回復に大きな力を与える」という知識を、ぜひ、伝えてほしいと思います。ただし、その語りには、主体性がなければなりません。外力によって、「語らせる」ことは、主体性を奪い、逆に、傷を深めることも、伝えてほしいと思います。

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2007年12月18日 (火)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア2-明るくふるまう・一切話さない-それは反応ですよ

佐世保の銃乱射事件に遭遇した人は、自身の命の危険と 大切な命を奪われるという喪失の2つの出来事を経験していますので、トラウマ反応がPTSDなどのストレス障害に移行する率が非常に高いのです。

マスメディアでも心のケアの正しい情報を流してほしいのです。

佐世保・銃乱射 不安な登校日 子の心見えぬ傷 市の相談窓口に19件 「物音に敏感に」訴え(西日本新聞:2007/12/17) 

この記事に

ただ、事件発生時、クラブのプールにいた男児(7つ)の父が「(子どもは)何事もなかったように明るいが、本人も気付かない傷があるかもしれず不安だ。事件には一切触れないようにしている」と語るように、心の傷が時間を経て表面化することも懸念され、市教委は当面、カウンセリングを継続する。

=2007/12/17付 西日本新聞夕刊=

とあります。

この「なにもなかったように明るい」というのは、トラウマ反応の一つです。そして「一切触れないようにしている」というのは、直後はよいかかわりでも、それは、回避を促進するため、「つらい気持ちを心にため込む」ことになり、トラウマ反応が持続してしまうことにつながります。

これほどの恐怖・悲しみを体験したのですから、いろいろな心身の変化が起きて当然なんです。まず、その知識を提供してください。そして、望ましい対処についてのメッセージを送って下さい。

「心の傷が時間を経て表面化」というのも、なくはありませんが、直後の過覚醒(あかるくふるまう)や回避(話そうとしない)といった反応に気づけていないからなんです。すでに、いろんな反応が起きている方が自然なんです。そして、それに対して望ましいかかわり方があるんです。

事件のことを一切話そうとせずに、ハイテンションならば、

「こわいことを思い出して、つらくなったら、お父さんに(お母さんに)お話してね。お父さん(お母さん)が心配するから、話さないでいようって、思わないでね。お話すると気持ちが楽になることがあるのよ」

ハイテンションをやわらげるような体遊びやリラクセーションもいいでしょう。

「COPINGTOTRAUMA.doc」をダウンロード

「TIMEOFTRAUMAREACTION.ppt」をダウンロード

Timeoftraumareaction

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2007年12月15日 (土)

佐世保の銃乱射事件後の心のケア

なんとも痛ましい事件が起こりました。

尊い命が、一人の身勝手な凶行によって、奪われたことに、つよい憤りを感じます。

お二人のご冥福を心よりお祈りいたします。

また、子どもを含む多数の方が、負傷されています。

この事件は、PTSDなどのストレス障害を引き起こす可能性が高いと考えられます。おそらく、保健所や臨床心理士による支援チームが結成されて、活動がはじめられると思います。長崎には、CRT(Crisis Response Team;危機対応チーム)が公的に組織されています。

犯人は自殺したと報じられていますので、今後は、心のケアに重点がおかれていくと思います。

喪失とトラウマへの対応が求められます。

なくなられたお一人は、インストラクターとして、多くの子どもたちの水泳指導をされていたようですね。直接その場にいなかった子どもも、喪失に対する強い反応を示すでしょう。

また、直接その場にいた人達は、トラウマを体験しています。今後、過覚醒・回避マヒ・再体験、という反応がひき起こるでしょう。なかでも、回避の反応は、一時的には、よい対処でも、それが長期に続くと、生活を阻害します。少しずつ避けていることにチャレンジできるように、周りの人もかかわりましょう。

兵庫、長崎と、どうして、大規模事件・事故が集中するのでしょうか。

正しい心のケアのあり方が市民に浸透しますように。

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