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2007年6月 9日 (土)

政治と心のケア

 先ほど、NHK教育で、9.11日本人遺族の4年(2005年10月)が再放映された。突然奪われた幸せ。その後の4年、カメラは遺族を追った。亡くなった人を回想するどの場面も、涙があるれてきた。アフガニスタンで子どもたちのために診療所や学校を建てようと奔走する遺族。ピアノ教師になって遺された4人の子どもをアメリカで育てようと決意する女性。そして、その無念さを詩に綴る父親。息子を亡くしたその父親が言った。「あのとき国会である議員が、『日本人の犠牲者に政府はなにをするんですか』、それに対して、政府の答弁は一言、『なにも考えていません』と。」なんと冷たいのだろう、と。

#2007.6.10追加

 気になったので、国会議事録を検索してみました。このご遺族の発言は、犯罪被害者等給付金の支給が国内居住者に限定されていて、海外での被害に適用されないと答弁している箇所だと思われます。

 153 - 衆 - 予算委員会 - 2号 平成13年10月05日

○中井治委員 自由党の中井です。
 今回のアメリカで起こった悲惨で卑劣な
テロに対して、激しい憤りを抱き続けています。断固こういう行為をなくすために、私どもも、やれる範囲で、世界の仲間と一緒にやれることをやっていく、こういう思いは一緒であります。同時に、被害に遭われた方、亡くなられた方にも心からお見舞いとお悔やみを申し上げたい、この機会に思います。
 そういう観点で、少し、まだ御遺体の捜索が続いている最中でありますが、日本には犯罪
被害者等給付金支給法という法律があって、交通事故あるいは通り魔、いろいろな形で亡くなられたり、傷ついた方に対して救済措置をとっております。今回のこの事件に関して、日本人の被害に遭われた方々にこの制度を適用する、こういうお考え、総理おありでしょうか。

○村井国務大臣 犯罪被害者等給付金支給法は、私ども警察の方の所管と承知しておりますけれども、あくまで国内における犯罪被害者の救済に当てるという形になっている法律だと承知しております。
 今委員御指摘の点につきましては、ちょっと突然の話でございます。なお研究をさせていただきたいと存じます。


  犯罪被害者等給付金は、あの9.11テロの日本の被害者には適用されなかったのだろうか。被害者支援に携わるものは、法律がどうなっているのかを、知らなければならないと思った。

 あのとき、臨床心理士の小澤康司さんは、日本人学校の子どもたちのために、ニューヨークに飛んだ。小澤さんは、一昨年の日本心理臨床学会の災害・事件後のシンポジウムで、「国は心のケア基金をつくってほしい」と訴えた。

 国会議事録を検索していると、櫻井充議員の発言が目にとまった。

参議院 厚生労働委員会 22号 平成19年05月24日

児童虐待防止法の議論の中で、小宮山洋子議員の「児童福祉司の数なども本当に足りないんです。」という発言を受けて、

櫻井充君:本当に大変御苦労さまでございます。敬意を表したいと思います。
 そこで、もう一つは、どういう人が本当にカウンセリング等に当たった方がいいのかということでいうと、実際、今臨床心理士の方々が随分一杯いらっしゃるわけであって、僕はその中の人たちの一部の人たちがある部分で特化してしまってこの分野に関してやるようなシステムをつくっちゃった方がいいんじゃないかなと。
 僕は臨床心理士会の敵のように思われているところがありますが、それは何かというと、やっぱり医療の分野や、それからこういう虐待の分野であるとか、それから労働のところであるとか、様々なところでやっぱりその心理的な部分でかかわってくるかかわり方というのは違うと思うんですよ。それを一律にすべての人に同じような形で資格を与えてしまうものはなかなか無理があるんじゃないかなという気がしているんですね。
 仮に、もちろん一律に全部国家資格を与えたとしても、その後、専門分化して専門性を持ったところで、それなりのまた資格か研修か分かりませんが、やらないとなかなか難しいんじゃないのかなと、そういうふうに思うんですよ。
 そうすると、どういう人たちに対して今後やってもらうのかとか、その辺のビジョンを構築しておかないと、例えば今教育三法が議論されていますが、どういう人材を育成していくのかというところにつながっていくわけであって、社会の問題があるとすればこういう人たちが今後必要ですねと、それを、できれば、本来であればその検討事項の中に書き込んでくるというのがあると、私たちはここまで検討しているんだということが分かると思うんですね。前回の法律にはここは検討事項ですと書かれていると。
 法律を読ませていただく中で、今、小宮山委員長から話がありましたが、親のカウンセリングですよね。結局、暴力を振るった親がいて、その親が変わらない限り、子供を幾ら一回保護し、子供のところのその心の傷がいえたとしても、もう一つ、これ悲しいさがですが、見ていると、幾ら暴力を振るわれても、やっぱり子供は親が大好きなわけですよ。そこのところをやっぱり親は僕は理解してもらわないと困るなと思うんですが、親のカウンセリング体制等をつくっていかないと、これは問題の本質はやっぱり解決しないんじゃないかなと。


この発言の中の

「仮に、もちろん一律に全部国家資格を与えたとしても、その後、専門分化して専門性を持ったところで、それなりのまた資格か研修か分かりませんが、やらないとなかなか難しいんじゃないのかなと、そういうふうに思うんですよ。」

は、「臨床心理師(ないしは心理師)」というひとつの国家資格の上で、学会レベルないしは学会連合レベルでの専門分化した、「福祉」(虐待問題に特化した訓練を受けたもの)、「医療」「教育」「被害」といった所定の研修プログラムの履修後に認定領域をさらに付与する制度の整備を意味していると思います。

櫻井議員の発言のなかで、「僕は臨床心理士会の敵のように思われているところがありますが、」という部分は、私たちの思いが伝わっていないのでしょうね。

ちなみに櫻井議員のブログを引用すれば、

このことから考えると、少年法のように、非行少年は加害者であるという立場に立ち、少年の厳罰化を進めるだけでは問題は解決しない。むしろ必要な事は、加害者である少年の多くも心に傷を抱えており、この点を重視すれば、実は、彼らは被害者でもあるという立場に立って、法律を構築するべきである。(ブログ;日本を治療します

まさに、私と同意見です。被害によるトラウマは、なにもPTSDだけを発症させるのではないのです。心身症やうつは、自分の身体に、そのトラウマを抱えようとする結果でしょうが、そうではなく、トラウマは人を傷つけることもあるのです。だからこそ、そこで適切に立ち会う人がいるのです。

ETV特集9.11日本人遺族たちに登場した人たちは、トラウマの悲しみを「前向き」にいかそうとしていました。

政治には、心のケアのシステムを整備する力があります。

 そして、櫻井議員のような心のケアに理解の深い議員の活躍を私たちは応援しなければなりません。兵庫の地元にも、辻泰弘議員が、心のケアのシステムに大変理解を示してくれています。もう一度政治による心のケアのシステムづくりを、そして大きなうねりを起こしてほしい。そして起こしたい。

 もう二度と同じ悲しみを事件や災害の遺族にさせないためにも。

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コメント

そんな番組があったのですね。

別の番組では、いまだに被害者の方々の遺留品や肉片などが誰のものであるのか、の分析は終わっていないとのことでしたし、
地下鉄であのグラウンドゼロのところを走るときに、匂いがする、ということも聞いたことがあります。

9.11だけが悲惨なテロではないですが、そうした理不尽な暴力に曝されたとき(もちろん災害もですが)に、回復までのケアの過程がはっきりとは保障されていないのなら、
それを確立してもらえるように、専門性を担う者として動かないといけない、ということですね。
つい、政治の世界とは無縁だ、自分たちの仕事を誠実にしておれば良いや、というようにしか
考えなくなってしまうのですが・・・。

投稿: takamura | 2007年6月14日 (木) 21時27分

takamuraさん;コメントありがとうございます。いま、参議院法務委員会で、被害者参加制度を盛り込んだ刑事訴訟法の改正案が審議されています。地下鉄サリン事件の被害者遺族の高橋シズエさんが昨日参考人としてお話しました。やはり、被害者の声を聴くということですね。私たちも、クライエントの声(魂の声)を聴き、お役に立てないといけませんね。法律という共通の約束の下で仕事をしているという認識を忘れがちですが、被害者支援に携わっていると、「どうしてこんな法律になっているの?」ということがたくさんあります。私たちが代弁して、法律を変えていかなければならないと思うんですね。

投稿: Tominaga,Y | 2007年6月14日 (木) 21時40分

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