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2016年11月26日 (土)

Surface Pro3の電源がおかしい

Surface Pro3の電源がおかしいのです。断線ぎみなのかなと思ってあれこれやってみたら、なんと不思議な現象が起こりました。

シャットダウンして、電源をつなぐと、電源ランプは点灯します。

ところが、左上のボタンをおしてSurfaceを立ち上げた瞬間、電源ランプが消えるのです。

ですから、Surfaceを使用中は、充電できないんです。

だから、電源の断線ではなく、本体が稼働すると、電源ランプが消えるのです。

あー、Surfaceお前もか、ながく愛したpanasonicのLETSNOTEが、簡単にハードディスクが壊れる災難に今年見舞われて、乗り換えたばかりなのに。

ちなみに、いまブログを書いているパソコンは、画像処理につよいといわれているToshiba QOSMIOです。でも、これは重いので、持ち運びには向きません。

公認心理師法について(15)各領域+災害に対応できる心理専門家の養成になっているか?

各団体からのカリキュラム案が提案されましたが、ここであらためて、各領域(医療保健、教育、福祉、産業、司法)+災害 の心理専門家を養成するカリキュラムになっているか、ということをもう一度考え直す必要があるのではないでしょうか。

たとえば、公認心理師資格を取得して、スクールカウンセラーとして勤務したとき、最低要件を満たしているかということです。児童生徒とのカウンセリングができる、教師研修・保護者研修ができる、教師と協働でストレスマネジメントなどの心の授業ができる、災害事件後に長期をみすえた支援プログラムを想定できる、教師とのコラボレーションやコンサルテーションができる・・。それらの活動の理論と実践はどの科目で保証されているのか、検証してみる必要があります。

それは、医療保健、福祉、産業、司法(警察や自衛隊・海上保安庁を含む)それぞれの領域から検証してみる必要があります。

また、災害後の心理支援は、どの科目で最低要件を満たしていますか?危機介入法特論ですか?災害後の心理支援に公認心理師として活動するとき、どの養成大学・大学院でも、役に立つ公認心理師養成ができていますか?

これはぜひ、厚労省案が提示されたのち、検証して、補てん修正していってほしいです。

それと、既成の民間資格(臨床心理士・学校心理士・臨床発達心理士)と公認心理師との関係性・関連性を検討しておく必要があります。そのとき、いま、すでに求められていて制度化されていないものを補てんする必要があります。たとえば、スクールカウンセラー・スーパーバイザーです。文部科学省のスクールカウンセラー事業では、実働していますが、その資格審査は現在ありません。学校心理士はスーパーバイザー資格を認定しているようですが、臨床心理士はスーパーバイザー資格を認定していません。日本臨床心理士資格認定協会は、公認心理師養成カリキュラム大学院案に、学内実習施設を5領域プラスワンにと提案しています。それもひとつの提案でしょうが、公認心理師取得後の上位資格としてのスーパーバイザー資格の構想を打ち出してほしいと思います。

ともかく、ユーザーの視点に立っている養成カリキュラム案になっているか、考えてほしい。

それと、公認心理師養成では、4つのアプローチ(精神分析・分析心理学などの力動論的心理療法、行動療法・認知行動療法・行動分析など行動論的心理療法、パーソンセンターなどの人間性心理療法、統合的・オリジナル心理療法(イメージ療法や動作療法やブリーフや家族療法など))のなかから最低3つのアプローチを学生が学べるように、カリキュラムに反映してほしいです。一学派しかいない教員の配置で、公認心理師資格が取得できるカリキュラムはやめてほしいです。

2016年11月22日 (火)

公認心理師法について(14)第2回ワーキング

公認心理師カリキュラム等委員会のワーキングの第2回の資料が掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000143121.html
3団体案がこれまでの総意です。
次回の厚労省案は3団体案を基準にしたものであってほしいと思います。
 
このなかで日ごろ心理職の専門家を養成している人なら、「どうして?」と首をかしげてしまう案がプレゼンテーションされています。
 
「大学院は知識は教えなくていい。技能を学ぶところだ。7条-2があるのだから、国家資格の試験に、大学院で学ぶ知識問題はだしてはいけない。」そう主張している日本心理学会ワーキンググループ案です。
学部+実務経験を第一に主張したいのでしょうか。だから、大学院では、知識を学んでも、それは国家資格の試験問題にはしないよ、という論理なんでしょうか。
付帯決議で、7条2は7条1(学部+大学院)と同等かそれ以上と明記されました。
大学院での学びの質を下げるために、このようなプレゼンテーションをされたのでしょうか。
もし、大学院での知識が必須となれば、学部+実務経験経験者には、週末、知識を学ぶ講義を受けなければなりません。そうなれば、実務経験は2年では到底不可能だからです。あくまで、実務経験2年を主張している医療団体を応援しているということなんでしょうか。
 
このプレゼンテーションをしている人はわが国の認知行動療法の第一人者ですよね。
理論は学部で学ぶ。確かに、学部で古典的条件づけとオペラント条件づけは学ぶでしょう。PTSDの心理療法の最も信頼性の高いPE(長時間エクスポージャー療法)は、恐怖の古典的条件づけと回避のオペラント条件づけで説明できるかもしれません。でも回避がトラウマ反応であり、自己を守る防衛機制であり、かつ長期の回避がストレス障害のリスク要因であることを、臨床事例とかかわらずして、説明できますか?トラウマ性記憶と海馬の機能を学部で学ばせるんですか?
 
[加筆(2016.11.23)]
いや学部で脳科学とトラウマを学ばせてもいいし、学ぶべきだと思っています。ただ知識は、体験とともにあって、身につくものではないでしょうか。ですから、学部では、学生同士のロールプレイ実習だけでなく、教育現場や福祉現場に身を置いた実習が必要だと私は考えています。ただし、カウンセリングや心理療法によるかかわりを学部ではしません。例えば、児童養護施設での実習では、学習支援や生活支援でしょう。そこで出会う虐待を受けてきた子どもとのかかわりと、本や論文に書かれている虐待トラウマの子どもの姿と何が同じで何が違うかを実習のふり返りで学び直すのです。
知識(理論)と技能は対で学ぶ必要があります。
 
 最近、私のゼミの学部4年生が中学校でいじめとストレスマネジメントの授業をしました。彼女は教育実習で、小学校、中学校と何回も研究授業をやってきていたのですが、10秒呼吸法などを取り入れたストレスマネジメント授業には、自信がなく不安で一杯だったようです。 1クラス目は、スクールカウンセラーとして活動している先輩の授業を補助しました。2クラス目から、彼女が中心で授業をしました。自分の小中時代のいじめの体験を盛り込みながら、4クラスの授業を担任の先生と協働で授業をしました。これは、公認心理師法第2条の公認心理師の業の4心の健康の知識の普及に合致します。彼女の教育実習の経験は、心理学を取り入れた「いじめ防止授業」の実施に役に立ったわけです。
 
 公認心理師カリキュラム等委員会の座長は医学教育の第一人者であり、公認心理師養成には、コミュニケーション力や患者への共感が第一に重要と発言されています。心理学の科目単位以外の実習科目でも、コミュニケーション力や共感を培う土台となる実習には、それ相当の評価をしてほしいと思います。
 

○北村座長 進め方のポイントが2つあって、1番は、役割、知識、技術について。技能、技術についてということで、公認心理師のカリキュラムのための根本的なところを考えようということだと思います。今御発言があった専門に分かれている学校心理士や産業心理士とかいろいろとあるけれども、その根底というか、基本になるのが公認心理師になると思うので、そこから議論をしていただきたいということ。

 小学校ではどうなのか、実は分からないですが、医療現場の教育ではアウトカム・ベースド・エデュケーション、アウトカム、出来上がりを見て教育、カリキュラムを作る。今までの大学教育では単位を集めていき、30単位集まれば卒業ですと。そうすると、ジクゾーパズルのピースは30個集まったけれども絵にはならないと。そうではなくて、例えば公認心理師はこういうことを知っている、こういうことができる、こういう心を持っているという出来上がりを考えて、それをカリキュラムに落とし込んでいく。医学で言うと内科、外科、小児科、産婦人科の単位を取って、医者になってみたら人の話を聞けない、人のことを思いやれないという、コミュニケーション能力がないとか。内科、外科、産婦人科、小児科の中には、それぞれコミュニケーション能力や患者を思いやる心というのは本来あったはずなのですが、その学問が中心になってしまったために、この間というか、一番大事なところが抜けてしまったのです。だからこの1番の意味というのはそういう抜けがないように、出来上がった公認心理師は、何はともあれ患者の話が聞けるとか、患者に対して共感できるとか、そのような根本的なところから考えていただいて、それをカリキュラムに落とし込もうという発想だと私は理解しています。 (第1回カリキュラム等委員会議事録より)

 
ぜひ、厚労省の公認心理師カリキュラム等検討会のホームページを読んでほしいと思います。
 
また、第2回ワーキングの資料をみなさん読んでください。日本の心理臨床のこれからが決まる大事な養成案です。
もし厚労省案が日本心理学会ワーキング案をベースにしたものであれば、みんな声をあげましょう!それはNo!だと。

2016年10月30日 (日)

災害・紛争後の子どもの心のケア(12)地震後の3段階心理支援モデル-急性期は日常ストレスと余震への対処

1995年阪神淡路大震災、2004年中越地震、2004年インド洋大津波、2008年四川大地震、2011年東日本大震災、2016年熊本地震、そして鳥取中部地震。この20年で、災害後の急性期での支援のあり方がデブリーフィングからPFAに、被災体験の表現から、安全・安心の育成に変わっていきました。アメリカPTSDセンター版PFAには、2安全安心 7対処に役立つ情報があります。2の安全安心の章に、トラウマを思いだすきっかけになるものから身を守る という節があり、そのことが ”地震”という言葉を使わない方がいい、”避難訓練は心が安定するまでは控える”といった見解につながっていったのだと思います。一方で、7対処に役立つ情報では、「苦しみを軽減し適応的な機能を高めるためにストレス反応と対処を知ってもらう」という節があります。しかし、PFAには、避難訓練をどうしたらいいか、具体的なことが記載されていません。
東日本大震災、熊本地震での活動を通して、災害後の急性には、日常ストレス(眠り、イライラ、体調)への対処と、余震への対処をクラス単位で行う心のサポート授業1を基軸にするべきだと考えるに至りました。そして、まさに余震が落ちついたこと、トラウマティックストレス(思いだしてつらい、安全な刺激を避ける、自責)にどう対処したらいいかを学ぶ心のサポート授業2を、そして、1年後、2年後と、体験を整理する表現活動を中心に行う心のサポート授業3をという3段階心理支援モデルを提案するにいたりました。
鳥取中部地震では、熊本地震のように、震度6以上が頻発するということがなければ、心のサポート授業2はかなり早い時期、1ヶ月後くらいが適切かもしれません。
そして、このことは、虐待を受けてきた、犯罪被害やひどいいじめを受けてきた子どもたちへの支援につながる大切な活動ということを実施者は心して取り組んでほしいと思います。
ストレスチェックリストは、大人がハイリスクの児童生徒を発見するためのものではなく、子ども自身が自分のストレスを知りどう対処したらいいか学ぶための自分教材なのです。
そのためにも、ストレスアンケート(特にトラウマ項目を含んだもの)を10分間でやってしまう、ということがないようにしてほしいものです。

2016年10月22日 (土)

災害・紛争後の子どもの心のケア(11)災害後の心のケアの資料 雑誌「学校教育相談」

昨日も鳥取で震度6弱の地震がありました。ちょうど、修士論文中間発表会中、みんなの携帯が一斉になりだし、数秒後に、揺れを経験しました。揺れは小さく震度3くらいでした。
ちょうど 鳥取で教育実習中のゼミ生がいて、すぐにメールでやりとりしました。
ほんの森出版の「月刊学校教育相談」雑誌に、災害後の心のケアの資料が掲載されています。だれでもダウンロードできるようになっています。私も、3段階心のサポートモデルを執筆しています。眠りのためのリラックスなどの資料もダウンロードできます。
小林正幸先生の論文資料もダウンロードできますよ。
 

2016年9月23日 (金)

公認心理師法について(13)カリキュラム等委員会スタート

公認心理師法について(13)カリキュラム等委員会スタート

 

20169201012

公認心理師カリキュラム等委員会が開催され、資料が掲載されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai.html?tid=380707

 

1,

今高校生、今大学生、今教員・・・将来、心理の仕事をしたい。スクールカウンセラーや医療での心理職で働きたい。そういう人たちにわかりやすい解説ページがあればいいですね。

たとえば、

. 今大学3年生です。教員養成の大学です。学校心理学コースで学んでいます。将来スクールカウンセラーになりたいので、臨床心理士養成大学院に進学し、臨床心理士の試験に合格すれば、なれるのでしょうか? 公認心理師の試験は受けられないのでしょうか?

といった疑問をもっている人はいますよね。

 

これには、資料2 公認心理師法の概要等 0000137275.pdfの2ページの経過措置をみれば、

 

施行前に4年生大学において省令で定める科目を履修(又は履修中)(附則第2条第1項第3号及び第4号)

施行後に大学院において省令で定める科目を履修

 

に該当していることがわかりますよね。

 

そうすると、「今心理学の講義や演習の授業の単位を取っているけど、それでは不足なのかな?進学を考えている大学院は公認心理師養成もするのかな?」と疑問がわきますよね。

 

10月はじめに検討委員会の下、ワーキンググループが作られ、具体に学部・大学院のカリキュラムが検討され、来年3月までに、カリキュラムが確定しますよね。そして、例えば、私が現在勤めている大学は8月に大学院の入試があるのですが、4月から5月か6月のわずか1-2ヶ月で、カリキュラム改革をしないと、8月入試の案内をだせないことになりますね。

 

2,

カリキュラムは、5領域(医療、教育、福祉、司法、産業)+災害支援をカバーでき、かつミニマムエッセンスの原理で構成してほしいですね。例えば、3団体案では、学部は46単位ですよね。そして、各大学は、その上に、特色をだしていけばどうでしょう。例えば、「スクールカウンセラー養成に力をいれていますよ」という大学では、学部で、小学校教員免許取得の単位をとり公認心理師受験資格の単位もとれる。学部で教育実習の経験があると心の健康授業への素地もできますよね。そして、心の健康授業を、大学院の臨床実践実習で、担任とTTで行う。そうすると、公認心理師の業である「第2条の4 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。」の育成になりますね。

もちろん、医療での公認心理師養成に力をいれる、産業での公認心理師養成に力をいれる、そういう特色有る大学が有ってもいいと思います。

学部の単位を60単位と提案している案もあるようですが、それだと、そういう特色がだせなくなりますよね。

 

http://3dantai-kaidan.jp/siryou/003_curriculum_UG20151106.pdf

 

3,

公認心理師資格取得後研修の体制づくりを急いでほしい

今井たよかさんtwitterより

公認心理師の場合、国はまずカリキュラムを作って入り口を整えることで手一杯でしょうから、心理側が学会や職能団体による資格取得後の研修システムをできるだけ早く整備することが必要だと思います。(2016.9.20)

 

私もそう思いますね。特に、日本臨床心理士資格認定協会はこの研修システムの構築に中心となって動いてほしいですね。例えば、スクールカウンセラーのスーパーバイザーがすでに制度化されていますが、その資格は制度化されていませんから。

2016年9月10日 (土)

公認心理師法について(12)チーム学校、チーム医療・・・

  日本心理臨床学会第35回大会が終わりました。昨年の大会は、神戸国際会議場・展示場で行われ、国家資格・公認心理師法が成立した直後の大会でした。要でご尽力された山下貴司衆議院議員の講演が印象的でした。
 今年の大会では、スクールカウンセリングのシンポジウムと公認心理師に関するシンポジウムの話題提供者として登壇させていただき、いくつか、思うところがありました。
 
 ひとつは、文部科学省は、本気で、スクールカウンセラーの常勤化を考えているということです。文部科学省・児童生徒課課長が、チーム学校とスクールカウンセラーの常勤化についてお話されましたので、私は「常勤化は,1部ですか?」と尋ねましたら、課長は「国民への公平性から考えると、一気に常勤化したいのですが、人材はありますか?」「結果として、段階的に常勤化となるでしょう?」といった主旨のことをおっしゃいました(録音をとってない私の記憶からの再生ですから不十分かもしれません)。これは、今からカリキュラムが検討される公認心理師に大変な影響を与えるだろうと思いました。
 
 私のゼミで学んだ中学校教師2名が、臨床心理士資格を取得して、教師を辞して、東日本大震災の被災地で巡回型スクールカウンセラーとして活動しています。週5日、週29時間勤務です。一日6時間勤務ですが、6時間で仕事が終わることはほとんどないようです。常勤と同じように働きながら、教員時代の年収より200~250万円もダウンしてしまいました。スクールカウンセラーの時給は高いと、よくいわれますが、非常勤の制限があるため、これが現実でした。彼らはとてもよい活動を展開してくれています。教育事務所に配置され、複数の学校を巡回して、子どもさん、保護者さんのカウンセリング、予防的な心のサポート授業を教員と協働で実施、教員へのコンサルテーションとフル回転です。
 今のスクールカウンセラーの給与体制なら、臨床心理士資格取得後1年目の方も10年も20年のベテランも同じ給与です。若いうちはいいかもしれませんが、ベテランになると今の年収では厳しいでしょう。
 
 医療ではチーム医療が標榜され、長年の悲願であった心理専門職の国家資格は、心理臨床の専門職が国家資格を取得し、チーム医療に参画できるようになったわけです。
 精神科七者懇の心理職の国家資格委員会委員長は、これまでの医療での心理の役割を丁寧にお話され、とても紳士でいらっしゃいました。やはり、直接お会いしてコミュニケーションを図ることがとても大事だと実感しました。
 
 公認心理師の養成は、学部4年+大学院2年が基本です。実習は、医療分野だけでなく、教育分野、福祉分野も必須だと思います。特に福祉分野は、虐待を経験した児童生徒が生活する児童養護施設での実習は必須だと思います。また、公認心理師の業の4に、「心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。」と掲げられましたので、大学院では、学校で教員と協働で行う心の健康やストレスマネジメントなどの研究授業を実習で行うことが義務づけられるといいなと思いました。
 
 日本もやっと中国や西欧諸国のように、心の健康に関する授業や活動が、法のなかに、位置づけられる日が来るのではないかと期待しています。
 

2016年9月 8日 (木)

災害・紛争後の子どもの心のケア(10)台風10号の傷跡

  2016年8月31日に山田町で公開心のサポート授業と教師研修が予定されていたため、30日の夜は宮古の旅館を予約していました。しかし、台風の進路情報から、30日の午後は新幹線が止まるのではと予想されたため、朝一番で自宅をでて、東海道新幹線・東北新幹線を乗り継いで、12時まえには盛岡につきました。新幹線は4分の遅れのみでした。
 
  そして、31日7時にレンタカーで山田に向かいました。すでに、106号が不通になっていたため、どうやって沿岸部に車で行くかについて、情報をとるのがとてもむつかしかったです。レンタカー店も、情報をもってないんですね。レンタカー店が仙人峠が通れるかどうかの情報をもってないんです。ツイッターで、どうやら大船渡まわりの107号線は大丈夫らしいとのことで、遠野に向けて走りました。仙人峠が通れればいいがと思いながら、NHKラジオの8時前の交通情報でも、仙人峠の情報は流れませんでした。仙人峠が近づくと、電子看板に、「全面通行止め・旧仙人峠」と点灯していました。あれ、ひょっとして、仙人峠はとおれるのか?と思いながら、走っていると、仙人峠は通行可でした。仙人峠を走っていた9時前のNHK道路交通情報では、仙人峠が通行可ということを流していました。
 釜石市内が渋滞がありましたが、山田には10時すぎに到着し、授業と研修を終えました。宮古の旅館は床上浸水で、泊まれず、大船渡のホテルをとって泊まりました。
 
 9月1日宮古市内にはいりびっくりしました。宮古小学校地域が床上浸水していたらしく、家具や畳を外にだしている家がたくさんありました。これは、津波を思いだしたり、やっと再建してきたのに、この水害でつらいだろうなと思いました。
 
 岩泉の小本小中は津波で校舎がこわれ、この3月に新校舎でスタートしましたが、小本川の近くで子どもたちの家は大丈夫だろうかと心配しています。度々宿泊してきた龍泉洞のホテルや旅館、岩泉の町が心配です。
 
 ただ、子どもたちのサポートは、津波経験を生かして、教師とスクールカウンセラーがスクラムを組んではじめています。

2016年8月19日 (金)

大泣きする子への母のかかわり

大泣きをする男の子への母親のかかわりがずごい とニュースになっています。
それはtwitterに投稿されたそうです。

「男の子が怪獣みたいに大泣きしてたんだけど、その男の子の母親が「いーよー!すごぉーく大きな声出ててるよー!えらいねー!おーヨチヨチ!赤ちゃんは泣くのが仕事だもんね!!」ってむちゃくちゃ煽ったら顔真っ赤にして「あがぢゃんじゃない!」って泣き止んで笑った。2016年7月28日 16:12         ドスを振り回すコメオ」

この母のかかわりは、怒りや悲しみを抱える子ども(ひと)への適切なかかわりです。

この子育てがみなできると、思春期青年期でのさまざまな苦しみを抱える子ども(不登校、非行・・・)がどれだけ少なくなることでしょう。

 

2016年8月17日 (水)

Disaster prevention education and psychological support for children after disaster.

Disaster prevention education and psychological support for children after disaster.

 Yoshiki TominagaHyogo University of Teacher Education, Professor, Clinical psychologist, Ph.D.

 

Within time to the tsunami arrival from the earthquake occurrence, the people who were able to evacuate to the higher places were saved, but the people who could not do so died. Therefore, the Great East Japan Earthquake was the disaster which made the importance of the disaster prevention education relevant in ordinary days. On the other hand, a disaster causes trauma reactions, such as hyperarousal, re-experience, avoidance, and numbness. Some people suffer from PTSD which obstructs everyday life.

Therefore, in Japan, the center of “KokoronoCare” has been founded in the stricken area. Japanese word “Kokoro” means mind and heart. The staff in that center consists of psychiatrists, clinical psychologists, and psychiatric social workers. To children, the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) has urgently dispatched the school counselors. It is a system in which teachers and a school counselor support children together.

However, there is an important issue which is not discussed theoretically or methodically in disaster prevention education and psychological support. The point is that disaster prevention education reminds people of their traumatic memory. The guideline of “Psychological support for children after disaster” published by MEXT, "Doesn’t provide reminders of traumatic memory as prevention of PTSD (6p)" (MEXT, 2010). However, in order to protect a person’s life, the disaster prevention education is needed. The disaster prevention manual (MEXT, 2012) published by MEXT has the paragraph of the psychological support. Teacher’s actions are written in each period, from the disaster to the school reopening and one week from the school starting. However, there is no mention of "implementation of the evacuation drill" in this chapter. Of course, there is the chapter of an evacuation drill in this manual. However, there is no description when you should conduct the evacuation drill in consideration of the psychological support after disaster in the stricken areas.

I would like to introduce the combination of disaster prevention education and psychological support.

 

Disaster prevention education for the acute period in the stricken areas.

 

In those days when many schools in the stricken area were reopened, the title of "Does the disaster prevention education give a damage to children’s heart? There is a story of tsunami in the textbook." was reported in the newspaper. (Yomiuri Shimbun, April 25, 2011). It is a story of the man who saved village people from tsunami caused by the Ansei Nankai earthquake which occurred in 1854, in the textbook of the language for five grade elementary school. The title is "Protecting the home country 100 years later." The teachers in the stricken areas worry about how they should use these teaching materials.

The child psychiatrist commented "While aftershock also continues, learning about an earthquake or tsunami may cause PTSD. In the stricken areas, you should not conduct the disaster prevention education without enough consideration for the time being. "  (Emeritus Professor Kansai University of International Studies, Masayuki Shimizu).

 

The writer of the teaching materials commented that ”I understand well that teachers are hesitating to make children read these teaching materials. I want you to judge and decide about delaying the period to have a lesson. However, also in order for a child to be able to protect own life from a disaster, disaster prevention education does not occur nationally. I want you to utilize it all means except the stricken areas.” (Professor of Kansai University, Yoshiaki Kawada).

On the other hand, there was an elementary school in which almost children did not show strong traumatic reactions in spite of having conducted the evacuation drill at this period (Saijo, 2013; Tominaga, 2012). The Ofunato Horei elementary school conducted the evacuation drill of tsunami on April 25, 2011, several days after school reopening.

The teachers told children the purpose of training intelligibly. “If you conduct the evacuation drill, you can protect your life even if big earthquake and tsunami happen again. Are you OK? “. The teachers performed activity of taking a walk the evacuation route for every classes on the day preceding the evacuation drill.

It is necessary to formulate the method and the theory for the combination of disaster prevention education and psychological support

 

Trend in Western countries about psychological support after disaster

There is the difference between twenty years ago and now about the expression of the disaster experience. American mental health teams recommended "Psychological Debriefing”(Mitchell & Everly,2001) after Kobe Earthquake in 1995. They insisted that if victims talked about disaster experiences as soon as possible, it could prevent PTSD. However, Tominaga (1995) thought this guideline was not appropriate for the situation where more than 6,400 people died, and did not practice it. Psychological First Aid became new guideline after 9.11 terrorist attacks in 2001. PFA is superior guideline in acute period that emphasizes security, relief and information.

On the other hand, there is not description about expression of disaster experiences and disaster prevention education in PFA.

Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy (Cohen, Mannarino, & Deblinger,2006) is the most reliable psychotherapy that is used for children who suffer from PTSD. It has been developing as a therapy for PTSD that is mainly caused by sexual crimes. There is the description about "Safety skills" in this book. However, it is desirable to use after the client finishes with the “trauma narrative”. According to this logic, only the child who talked about disaster experience may participate in evacuation drill.

However, it is not realistic to use it when it comes to situations in which children experienced disaster.

In disasters, children have to save themselves when a big aftershock comes.

 

What is the difference between recovery from trauma and stress disorder from trauma?

The trauma reactions can occur to anyone when they experience a trauma. They are normal reactions in the abnormal situation. In those situations the person has power to recover. Kessler et al.(1995) surveyed prevalence of PTSD, prevalence of PTSP for natural disaster was 4%, and sexual violence was 50%. The conclusion has not been given yet. However, the stress disorder is regarded as a result of the failure for the spontaneous recovery. And risk factors might be "strong avoidance" and “negative thought as self-blaming".

The exposure therapy (Foa,Hembree,& Rothbaum,2007) is composed of "image exposure" (A patient talks about traumatic experiences at a safe place) and "invivo" exposure (A patient tries to challenge progressively stimulus for example: places that he/she has avoided) ".  "The breathing method for feelings control" and "the psycho-education of stress and trauma" are added. It is the most reliable psychotherapy for PTSD. “Exposure” is translated to "Bakuro" in Japanese, “Bakuro” gives an impression as if "Therapist opened the lid of his/her trauma memory by force". However, “ex” means “to outside”, “pose" means put in his/her body". When a patient put his/her body in a safe place, his/her heart throbs at first, but the pulse of heart decreases because that place is safe already.

Disaster prevention education is composed of the action training that includes the evacuation drill and the learning about the history of the tsunami. They can respond to " in vivo " exposure and the" image exposure" in exposure therapy. The practice of the evacuation drill in an elementary school was with " in vivo" exposure. The children participated in the evacuation course beforehand, enjoying with classmates. They conducted evacuation drill on the next day. In addition, they were provided with the psycho-education about stress and the trauma and how to cope with memories of tsunami. On the other hand, evacuation training can become a trigger which causes children to re-experience reaction.

 

Conbination of disaster prevention education and psychological support after disaster

 

I will describe concretely about the combination of disaster prevention education and psychological support after disaster in the immediate period after disaster (3 months), the middle-term period (4 months -1 year) and long term period (1-10 years).

1.Please conduct the evacuation drill that includes psychological support for the immediate period!

The evacuation drill causes children to re-experience reaction strongly if the drill is conducted without previous announcement.  Therefore please conduct the evacuation drill considering the next points.

  Please explain a purpose of the training to children with plain words before conducting an evacuation drill. "You can save life even if an earthquake occurred, and a big tsunami came. The aim of the training is to learn how to save yourself. The warning siren informing about tsunami is an important signal. Nobody escapes if a siren's sound is comfortable enough. Therefore the siren's sound is an unpleasant sound.”(Cognition of siren)

 Please take a walk through the refugee course beforehand. It lets children feel relieved and helps them have a prospect if you conduct it within a class. (In vivo exposure)

 Please give children information even if they remember a hard things during an evacuation drill and they start to throb, it is very natural response for them. (Psycho-education).

 Please teach children how to control their traumatic stress responses.  " If your throb continues even after conducting the evacuation drill, please straight your back, and breathe in and out slowly or raise your shoulders up and hold a few seconds and then relax, so you might calm down.”(Stress management)

 

2.Psycho-education for traumatic stress and disaster prevention learning for the medium term period.

 

You should utilize the painful rating scale to check how child feels during the expression activity and the disaster prevention learning.

Teachers could know the pain of the child beforehand, and a counselor should counsel the child who has high results on the pain scale beforehand.

 

How painful are you about each items?

  Nothing 0.1.2.3.4.5.6.7.8.9.10 max painful

1, To do evacuation training

2, To see or hear word “Tsunami”

3,To watch video of tsunami

4,To learn the mechanism of tsunami

5,To check your stress and trauma responses

6,To write your experience after disaster

7,To talk to anyone about your experiences after disaster

8,To hear the siren warning of the tsunami

9,To feel strong tremors of the earthquake

 

From item 1 to 7, it is originally safe activity. Therefore a class teacher and a counselor should do the counseling to child who checked high score 7-10. As for item 8 and 9, feeling pain is appropriate. You should take care of the child who checked 0 in these items.

We conducted a special lesson for integration of disaster prevention education and psychological support after disaster at the junior high school within the stricken area. They checked the painful rating scale at first. I presented the data to students where I showed them that the child at low-grade elementary school had high score for traumatic stress . And then I asked students: ”How will you take care of child when he or she hears word tsunami?”

At that time, a school counselor who wore the stuffed Doraemon came to that classroom. He said :“I could not sleep. I am scared now.” I had exercise with Doraemon and students felt relaxed enough to sleep. And then, I asked students :”What does make him scared?” A student said :“ Mouse makes him scared!” Doraemon cried :”Do not say that word!” I asked them :”Does a word “mouse” bites his ears?” Students said: “No it doesn’t”. I told them :”When you are able to use the word “tsunami” calmly, you can learn about the structure of the tsunami.”

After this lesson, they watched a photography of the tsunami, and they learned the mechanism of the tsunami. There was nobody who felt worse during and after the disaster prevention learning.

# Doraemon is famous cartoon hero in Japan. He is a cat robot. Since his ear was bitten by a mouse, a mouse became a traumatic stressor for him.

 

3, Expression and sharing of disaster experience and disaster prevention learning in the midium-and-long term period.

 

Expression of their disaster experiences through writing or drawing which runs the risk of the activity becoming the trigger of PTSD and the expression of the traumatic experience can possibly prevent PTSD. PFA(Psychological First Aid: National Child Traumatic Stress Network and National Center for PTSD,2006) and SPR(Skills for Psychological Recovery: Berkowitz, etal.2010) don’t include those activity.

However, CBITSCognitive Behavior Intervention Trauma in School: Jaycox,Langley,& Dean,2009) and TF-CBT(Trauma forcused Cognitiv Behavior Psychotherapy: Cohen , Mannarino, & Deblinger,2006), which are psychotherapy for PTSD have component of “trauma narrative”.

The role of teacher is different between Asian countries and Western countries. Japanese teachers conduct not only teaching of subject but also educational counseling and career guidance. The teacher supports children's expressive activities in exchange diary.

I will describe some points for expression activity of disaster.

  Principal and class teacher told the meaning of the expression activity to the children and parents  one month ago.

 The teachers wrote their experience after disaster beforehand. And then a teacher told the students its advantage and disadvantage.

 The teacher requested students to pick up the keyword of the experience on the day before.

 The teacher set widely the theme of the composition: not only the experience after or at that time of an earthquake and the tsunami but also having done your best until today, and your dream for the future. The student who doesn't want to write about suffering experience himself doesn’t need to write it.

 This activity was conducted during the class unit in morning before lunch time.

The teacher and counselor helped students to relax and calm down before writing using a progressive relaxation or breathing or Dohsa-hou which is self-control technique developed in Japan.

A school counselor and a school counselor supervisor have supported those activities and had counseling with a student who showed strong stress responses.

The students chose someone who can read it.

 

    Their writings can be utilized as a teaching tool for disaster prevention program in the future. The risk factors of PTSD are self-blaming and strong avoidance. Tsunami has attacked Tohoku areas three time during the last 100 years.Tohoku people have a culture of overcoming traumatic stress.For example, Osawa, Yamada-machi, Iwate Elementary School has been conducting the tsunami drama "Shine the sea" every year. Ofunato, Iwate Elementary School has been learning disaster prevention using “The black sea” which was written by the students who suffered in Chile tsunami at 1960. An combination of disaster prevention education and psychological support may be a new approach in the world , not just in Japan.

 

教育と医学」20143月号掲載

 

子どもの心のケアと防災教育

   冨永良喜(兵庫教育大学)

 東日本大震災では、地震から数十分間の避難行動が生死を分けた。そのため平時の防災教育がいかに大切かを知らしめた災害であった。一方、災害は過覚醒・再体験・回避マヒといったトラウマ反応を惹き起こし、一部の者は日常生活を阻害するストレス障害に移行する。そのため被災地に心のケアセンターを設立し、災害後の心のケアの政策をすすめている。子どもに対しては、スクールカウンセラーを緊急派遣し教師と共同で子どもを支援するシステムを構築している。

 しかし、防災教育と心のケアには理論的にも方法論的にも整理されていない重要な課題がある。それは、防災教育が一部の者につらい記憶を蘇らせるという点である。文部科学省の心のケアのガイドラインでは、PTSDの予防や対応として「トラウマを思い出させるようなきっかけをつくらないようにする(6p)」(文部科学省、2010)とある。しかし、命を守るために防災教育はやらなければならない。文部科学省の防災マニュアル(文部科学省、2012)には、心のケアの節が設けられ、災害から学校再開まで、学校再開から1週間に分けて、行うべきことが列挙されている。しかし、その項に「避難訓練の実施」という記載はない。もちろんそのマニュアルに避難訓練の項はあるが、被災地で災害後いつからどのように心のケアに配慮して避難訓練を実施すればよいかという記述はない。本論では、心のケアの理論と方法を取り入れた防災教育の実際を紹介したい。

 

 被災地での急性期の防災教

 被災地の多くの学校が再開された時期に、「防災教育 心の傷が心配・・教科書に津波の恐怖」とのタイトルの記事(読売新聞、2011425日)が掲載された。小学5年の国語の教科書に1854年に起きた安政南海地震で村民を津波から救った男性の物語の「百年後のふるさとを守る」という教材がある。被災地の教師はどのようにこの教材を扱うかについて苦しんでいると記されていた。記事には児童精神科医のコメント「余震も続く中、地震や津波について学ぶことがPTSDを引き起こす可能性がある。被災地では当面、防災教育には十分な配慮が必要(清水将之・関西国際大名誉教授)」と、その教材の執筆者のコメント「現段階で教師がこの教材を読ませることをためらう気持ちはよく分かる。指導時期を遅らせるなど、 学校などで判断して対応してほしい。ただ、子どもが災害から自分の身を守れるようにするためにも、全国的に防災教育が後退するようなことがあってはならない。被災地以外ではぜひ活用してほしい(河田恵昭・関西大学教授)」が紹介された。

 一方、この時期に避難訓練を実施した小学校で、児童がほとんど強い心身反応を示さなかった取り組みがあった(西條、2013;冨永、2012)。大船渡市甫嶺小学校は、学校再開から数日後の2011425日に、津波の避難訓練を行なった。再び大きな地震・津波が来ても大丈夫なように避難訓練を実施すると訓練の目的を子どもたちにわかりやすく話した。避難訓練の前日には、クラスごとに避難経路を散策するという活動を行った。

災害後の心のケアの理論と方法が阪神大震災当時と現在では大きく変わったことを踏まえて、心のケアを取り入れた防災教育を構築する必要がある。

 

災害後の心のケアに関する西欧の動向

 被災体験の表現をめぐってこの10年に世界の動向が大きく変わった。1995年阪神大震災のあと、アメリカの精神保健チームは、当時最新の方法とされた「心理的ディブリーフィング(Psychological Debriefing)」(Mitchell & Everly,2001を推奨しに来日した。それは、なるべく早期に怖い感情を吐き出し被災体験を語らせることがPTSDを予防するとしたガイドラインであった。しかし冨永(1995)6400人以上が亡くなっている状況でこのガイドラインは適切でないと考え実践しなかった。そして2001年9.11同時多発テロ後に登場した新たなガイドラインである心理的応急法(PFA:Psychological First Aid; National Child Traumatic Stress Network and National Center for PTSD,2006)には、心理的ディブリーフィングは「やってはいけない」と明記された。PFAは安全・安心や情報の提供などが強調された急性期の優れたガイドラインであった。しかし、このガイドラインには被災体験の表現や防災教育についての記述はなく、中長期にこのガイドラインを適用すると、被災体験を封印してしまい、回避を強め、ストレス障害のリスクを高めることが危惧される。

 ところで、PTSDの子どもの治療法として最も信頼性の高いトラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT; Trauma-Focused Cognitive Behavioral TherapyCohen,Mannarino,& Deblinger,2006)には、安全スキル(Safety skills)の記載がある。TF-CBTは、主に性被害などによるストレス障害に対応した治療法であり、安全スキルは被害を防ぐスキル訓練である。しかしその実施の時期については「安全スキルを教えるタイミングは、慎重に考えられなければならず、一般的に、子どもが、トラウマ体験の語りを終えた後に教えられることが望ましい(158p)」と記されている。この論理では、避難訓練は被災体験を語れるようになったあと行うことになる。しかしそれは災害では現実的ではない。いつ大きな余震が来るかわからないからである。ただし、TFCBTはストレス障害化した子どもへの治療法であり、災害後学校生活を送っている子どもはストレス障害には至っていない。このため、余震が続く急性期に安全感を高めるための避難訓練のあり方を整理しておく必要がある。

 

回復する人とストレス障害になる人の違い

 トラウマ体験をすると誰しもトラウマ反応が生じる。異常事態の正常な反応である。しかし人は回復する力をもっている。PTSDの生涯有病率を調べたKessler et al.(1995)のデータでは、自然災害では数%、性被害では約半数の者がPTSDを罹患する。回復するものとストレス障害になるものの違いはなにか、まだ十分に結論はだされていないが、ストレス障害は自然回復の失敗の結果と考えられている。そして、そのリスク因は「強い回避」と「自責感」であろう。 

PTSDに最も信頼性の高いとされている長時間エクスポージャー療法(Foa,Hembree,& Rothbaum,2007)は、「イメージ・エクスポージャー(つらかった体験を安全な場で語りつくす)」と「実生活内エクスポージャー(すでに安全な場所や人や刺激を避けていることに段階的にチャレンジする)」の2つを柱に、「感情コントロールのための呼吸法」と、「ストレスやトラウマの心理教育」を学ぶことから構成されている。自然回復を損なう強い回避に集中してチャレンジする治療法である。エクスポージャーは「曝露」と訳されることがあるため、「封印したトラウマ記憶をあばく」といった印象を与える。しかし、exは「外へ」、poseは「身を置く」という意味であるから、exposureは、すでに安全になった場所や事柄に身を置き、心身反応が一時的に生じても、人は回復する力があるので、その心身反応が収まるのを待つということが本質であろう。そこで、防災教育を、避難訓練など行動を中心とした活動と「百年後のふるさとを守る」といった読み物教材による防災学習に大別すると、これらが、実生活内・エクスポージャーとイメージ・エクスポージャーに対応していることがわかる。甫嶺小での避難訓練の実践は実生活内エクスポージャーの段階的練習(gradual exposure)の理論に一致した取り組みだったのである。事前の避難経路のクラスごとの散策は、次の日の避難訓練にとっては、段階的な練習になっていたのである。また避難訓練はつらいことを思いださせることそしてドキドキしてもそれは自然なことであるとの知識を伝えることは「ストレスとトラウマの心理教育」であった。

 

防災教育を心のケアと一体で取り組みたい

 ドキドキなどの心身反応をコントロールできるほどの課題に少しずつチャレンジするという段階的練習が重要である。心理的ディブリーフィングの失敗は、被災直後は過覚醒状態にあり、感情のコントロールが難しい状況で、つらかったことを語らせることで、つよい感情反応を収められないことがあり、そういう体験が「二度と語りたくない」と回避を強めてしまうというリスクであろう。 

ここで、急性期と中長期における心のケアを取り入れた防災教育を整理しておく。

 1.急性期には心のケアを取り入れた避難訓練を!

 被災地で予告なしの避難訓練を行なえば、被災体験を強く想起させ強い心身反応を生じさせることが考えられる。そのため次の点を考慮する。

避難訓練を行う前に訓練の目的を子どもの発達に応じたわかりやすい言葉で説明する。「もし地震があり大きな津波が来たとしても、君たちは自分の命を守る力があります。そのための訓練です。津波警報を知らせるサイレンは、命を守ってくれる大切な合図です。」

②事前に避難経路の散策をする。クラス単位などの安心できる環境で、ゆとりと見通しをもたせる。

③つらいことを思いだしたときの対応についての情報提供(心理教育)を行う。「地震が発生したとの放送は辛いことを思いださせてしまうけど、それは自然なこと、自分の心とからだが大変なことを乗り越えようとがんばっていると思ってください。」

④心身反応への対処法を練習する。「一生懸命避難したあと、ドキドキしていたら、背筋を立てて肩の余分な力をぬいて、息をゆっくり吐いてみましょう。」呼吸法や肩の動作法などの体験を取り入れた活動を行う。

 2.中長期には少しずつの被災体験の表現と地域調べなどの防災学習を!

 子どもは被災状況も異なり、心身反応のあらわれ方も個人差がある。そこで、子どもに被災体験の表現活動や防災講演会をどれくらい苦痛と感じているかを事前に教師やカウンセラーが知ることは、個別にサポートをする契機となる。

 冨永(印刷中)は、防災学習と心のサポートアンケートを考案した。防災学習や防災講演会や語り継ぐ表現活動を実施する前に、児童生徒にクラス単位で、朝の会や帰りの会で5分程度の時間で実施できる。

項目1から7までは、本来は安全な活動である。そのため、苦痛度が7-10と高いスコアを申告している者には、担任やカウンセラーが事前に、どんなことが心配なのか、不安になったときどうすればいいかを話しあっておくといい。項目8と9は、苦痛を感じる方が適切である。この項目の0に○をしている子どもは設問をよく読んでいないか、回避しているかのいずれかで配慮を要する。

筆者は、被災地のある中学校で津波の仕組みを学ぶ特別授業の前に、こころのサポート授業を行った。津波の仕組みを学ぶ特別授業では、津波の写真や映像をみる。そのため、生徒が不安にならないか心配なので、事前に「こころのサポート授業」をやってほしいと依頼を受けた。「こころのサポート授業」では、眠りのためのリラックス法を体験したのち、阪神淡路大震災から10年後にPTSDになりその後回復した人のメッセージ(植松,2013)を視聴してもらい、避け続けるのではなく、安全な刺激には少しずつチャレンジしていくことが大切なことを伝えた。

「津波という言葉はつらいことを思いださせるかもしれません。でも、”津波”という言葉が人の命を奪うことはありません。津波ということばを落ち着いて使えるようになると、津波の仕組みについて学べるようになります。今日の4時間目に津波の仕組みを学ぶ特別授業がありますね。その時ドキドキして不安になる人もいるかもしれません。それはとても自然なことです。安全な場所でドキドキしても段々ドキドキが小さくなっていくことを観察しましょう。あまりに苦しすぎるときは、保健室を利用してもいいでしょう。でも次の防災学習の機会のとき、今度はドキドキがどうなっているかな、とチャレンジしてください」と伝えた。津波防災の学習で気分が悪くなる生徒はいなかった。

 岩手県山田町大沢小学校は「海よ光れ」という津波劇を毎年行ってきた。岩手県大船渡小学校は1960年のチリ地震津波後に子どもたちが書いた作文集「黒い海」を毎年学び防災学習を行ってきた。津波の歴史を抱える地域では津波トラウマを乗り越え、命を守る教育が展開されてきている。防災教育と心のケアの一体的取り組みを世界に発信する時が来ている。

文献

Cohen JA, Mannarino AP, Deblinger E2006Treating Trauma and Traumatic Grief in Children and Adolescents. Treatment Manual. New York: Guilford Press.

Foa E,Hembree E,Rothbaum B2007Prolonged Exposure Therapy for PTSD.Emotional Processing of Traumatic Experiences Therapist Guide.Oxford University Press.

Kessler R, Sonnega A, Bromet E, Hughes M, Nelson C1995 Posttraumatic stress disorder in the National Comorbidity Survey. Archives of General Psychiatry 52,1048- 1060.

Mitchell JT & Everly GS2001Critical Incident Stress Debriefing.Chevron Publishing Corporation. 高橋祥友2002 緊急事態ストレス・PTSD対応マニュアル・金剛出版

文部科学省(2010) 子どもの心のケアのために-災害や事件・事故発生時の対応を中心に www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1297484.htm (2014.1.5取得)

文部科学省(2012) 学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き

www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1323513.htm2014.1.5取得)

National Child Traumatic Stress Network and National Center for PTSD2006: Psychological First Aid. Filed Operations Guide 2nd edition. 兵庫県 こころのケアセンター(訳)2011 災害時のこころのケア: サイコロジカル・ファーストエイド 実施の手引き 原書第2版 医学書院 

西條剛志(2013) 避難訓練のあり方 DVD「こころのサポート映像集・教職員スクールカウンセラー編」日本ストレスマネジメント学会監修、一般社団法人社会応援ネットワーク企画制作

冨永良喜(1995)被災者の心のケアとしての臨床動作法.リハビリテイション心理学研究,21,59-82.

冨永良喜(2012) 大災害と子どもの心-どう向き合い支えるか 岩波書店

冨永良喜(印刷中)災害・事件後の子どもの心理支援.創元社

植松秋(2013):震災を経験して先輩からのメッセージ.DVD「こころのサポート映像集」日本ストレスマネジメント学会監修、一般社団法人社会応援ネットワーク企画制作.

«A new guideline for psychological support after disaster is needed during the long-term period, not only the acute period after disaster